✭不思議森とのびのび山✭
「うさぎのトッキとへび」
それは、少し風の強い日、寒い日でした。
うさぎのトッキは、寒くなり震えながら首にあるマフラーを巻き直して、
ずっとさっきから、のびのびの山を目指して歩いていました。
「まだ、着かないよ。なんて遠いんだろう、のびのび山の先っぽって・・・」
のびのび山。長く時間がかかるから、誰ともなくそんな名前がついて今では、うさぎの仲間うちでは、
その名で通っていました。
でも、のびのび山の名前の由来は、もう一つありました。
それが、長く長くのびた、白いへびが出るという話でした。
その白い蛇を見たものは、幸運にめぐまれるという伝説の話をありましたが
うさぎのトッキは笑い話だと信じてはいませんでした。
「ああ、今頃ほんとは、ぬくぬくの木の中で、眠っているはずだったのに・・・」
そう、トッキがぶつくさと独り言を言っている時でした。
道の横から、白いへびがスーッとトッキの横を横切っていきました。
「な、なにあれ?」
一瞬でしたが、長く光っていました。もしかしてあのへび?
「まさかね。気のせい、気のせい。さあ、急いで行かないとね」
トッキは気にせずに、また歩き始めました。
すると今度は、数ある木の間から、長くて白い紐が急に垂れ下がってきました。
「わぁ!!なに???」
ふらふらと垂れ下がってきたのは、まさにへびのような紐でした。
「な、なんだ。驚かせないでよ!!」
その時、声が聞こえてきました。
「お前、どこへ行く?」
「え!?だ、だれ?」
「私だよ。へびだよ」
さっき、紐だと思っていた紐が、クニャリと動いて紐のさきがパクリと割れて、
ヘビの舌がチロチロと揺れて、まるで火が燃えているような赤い舌を出していました。
「へ、へビ?さっきのへび?それともあのヘビなの?」
「さっきのヘビ?どのへび?どこぞにまだ、私のようなヘビがいるのか?まあいい。それよりも、お前、どこへ行く?」
「え?え、ええ。のびのび山の先っぽまでお使いにいくのよ」
「誰に頼まれた?」
「誰って、鷲のシッダよ。あなた知ってる?今、病気で動けないのよ。だから、私が母親のもとにプレゼントを持っていってあげてるの」
「ほう。鷲といえば、おまえには天敵ではないのか?」
「でも、シッダは動けないしね。食べられることもないわ」
「シッダの母は、元気なんだろう?」
「いえいえ、年を取って動けないらしいの。今日誕生日でシッダがプレゼントを買って届けたかったんだけど、自分は動けないからって、どうしてもってお願いされたの」
「お前はそれを信じているんだね」
「そうよ。信じているわ」
「正直者には、必ずいいことが起こるときまっているわけではないよ」
「どういうこと?」
「目に見えないものがあるってことさ」
へびは長く白い体をくねくねと動かして、トッキの足の近くまでやってきました。
トッキは途端に怖くなりました。
「やだ。噛まないで」
「噛む?私が噛むと思ったのか?」
「だって、へびは噛むものでしょ?」
「噛むときまっているわけではない」
「でも・・・」
「では、鷹はどうなのだ?お前を食べると、決まってはいないのか?」
「とても、シッダは弱っていたもの。食べないわよ」
「そうか。では、シッダの母親は?」
「だから、年を取って動けないって・・・」
「本当にそれを信じているのか?」
「だって、シッダが言ったもの」
「私の忠告よりも、天敵のシッダの言葉を信じるのか。」
「だって、私はあなたを知らないもの」
「知らない私と、天敵のシッダ。信用できるのは、天敵のシッダなのか?シッダはお前を食べるが、私は噛むだけだ。こんな大きなうさぎなど食べられない」
ヘビは自分の小さな口を見せつけます。
うさぎのトッキは、白い耳を垂れ下げて少し考えてみました。
確かに、シッダはいつも私をじっと見て、隙あらば飛びかかってきそうだ。でも、ヘビは噛むだけだ・・・。あの小さな口でこの私を食べられるわけない・・・。
「私には毒だってないんだ」
「でも、・・・」
トッキはそれでも、まだ決めかねていました。
しびれを切らしたへびが、提案をしてきました。
「それじゃあ、私も一緒についていこうじゃないか。シッダの言うことが本当のことなのか、嘘なのか行ってみればわかる。シッダの言う通りなら、何事もなく帰れるし、シッダが嘘をついていたならば、私が助けてやるよ」
「ええええ!?助けてくれるの?」
「そうだ。いい考えだろう?」
たしかに・・・。トッキは何一つ損などしないのだから。
でも、へびがどうやって私を助けてくれるのだろう?
いや、もしかして、これはあの伝説のへびなんだろうか?信じてはいないつもりでしたが、やはり、心の底では気になっていたのです。
「そうね、確かにいい考えかも・・・」
「よし、そうと決まったら、私は紐に化けるからマフラーの下に巻いて、一緒に連れて行ってくれ。シッダの母親にみつからないようにな」
「わかった」
うさぎのトッキは、紐になったへびを首に巻き付けました。すると、巻き付けた辺りがひんやりしてますます寒くなりました。
「おまえって、冷たい!!」
「がまん。がまん。そのうちに体がなれてくる」
「えー!さむい~!」
寒い、寒いと文句を言いながらも、うさぎのトッキはへびを首に巻き付けたまま、また、風の中、山をずんずんと歩いていきました。
かれこれ、ずいぶんと歩いた頃でしょうか?のびのび山の先っぽの近くへとやっとたどり着きました。
鷹のトッキの母親がいる場所は、ここから右へ行ったところです。
大きな樹の株元にある大きな割れ目の中に母親がいるはずでした。
「ふう。やっとついた!」
「おい。大きい声を出すな。ゆっくりと穴の中へはいるんだぞ。いきなりいって即座に捕らわれないようにな」
「う、うん」
へびからの忠告に、うさぎのトッキはゴクリと喉を鳴らしました。
急になんだか、怖くなりました。シッダの母親が病気じゃないとしたら、シッダが私を母親のプレゼントにする為だったのかもしれない。
だとしたら、入った途端にいきなりガバっと!ああ、恐ろしい!!
急に動かなくなったトッキに、へびはトッキの首を少しキュウと巻いて急かしました。
「早く行って!」
「ちょっと、首を絞めるなんて!」
へんなの・・・。トッキは思いました。さっきはゆっくり入るんだぞって言って、今度は早く行けだって。
でも、へびは首をしめましたが、途中でやめてくれました。
やっぱり、私を食べるつもりはないんだと分かり安心しました。
「いくよ・・・」
うさぎのトッキはゆっくりと息をのみながら、穴の中へ入りました。
木の間にできた穴は大きく、その中にはわらがいっぱいに敷きつめてありました。その真ん中あたりに、鷹の姿をした鳥がいました。ずいぶんと年を取っているようです。
鷹の自慢の羽根がところどころはげて、まわりに散らばり痛々しいようすでした。
やっぱりシッダの話しは本当だったのだ。トッキは安心しました。
トッキは、ゆっくりといたわるように話しかけました。
「おばさん。シッダのおばさん・・・」
「だれだい?」
ゆっくりと顔を動かして、シッダの母親はこちらの方を見ました。
「ああ、あんたがトッキだね。それはシッダからかい。ありがたいね。このところ、御飯もとれなくってね。身体が弱っていたんだ」
話しは聞いていたようで、母親はトッキのことも知っていました。
私のことも知っているんだ。会ったことなんてあったかな?でも、良かった。知らないだろうと思っていたので、色々面倒なことを話さなくてもよさそうです。
「これ、ここに置いておきますね。元気を出してくださいね」
シッダの母親からは、少し距離をおいたところに荷物を置きました。
「ありがとうね・・・。うさぎさん・・・」
シッダの母親が嬉しそうに、笑顔で答えます。心なしかとても元気になったような気がしました。
「じゃあ」
トッキが後ろを向こうとしたその時です。首に巻き付いていたへびが、するりと首元からいなくなりました。
「え!?」
後ろを向かずにトッキはそのままで、またシッダの母親を見てしまいました。
「ど、どうしたのかい?」
トッキは、この母親にへびのことを言うことはできませんでした。ですから、首を振って「なんでもない」と、答えました。でも、トッキはその場からまだ、動けずにいました。
どこにいったのだろう?あのへび?
キョロキョロとみましたが見つけられませんでした。
もう、へびのことなんて、どうでもいいと思いました。
早く帰ってぬくぬくの木の中で眠りたかったのです。なので、やっと後ろを向きました。
ですが、その後ろでは、シッダの母親の目が獲物を狙う本来の鷹の目をしていました。
本当の翼を隠して今か今かと、手ぐすねを引いています。
偽物の羽根を押しのけて、今にも、うさぎのトッキにとびかかろうとしました。
その直後、シッダの母親が急に苦しみ始めたました。
「う、うううう~!!」
苦しみ始めたシッダの母親に、トッキはびっくりして後ろを振り返りました。
「どうしたんですか?お母さん、具合が悪くなったの?」
「あの、へ、へ・・・」
「?へ???」
母親は「へ・・・」っと言ったきり、動かなくなりました。
「お、お母さん?死んじゃった?たいへん、シッダに知らせてあげないと!!」
うさぎのトッキは急いで、大きな樹の大きな割れ目から出てきました。
その後を、鷹の体噛みついたあの白いへびが、のがしてなるものかと追いかけようとしました。
ところが、白いへびがにょろにょろと動いた途端、ヘビの背中に鋭い鷹のかぎづめが襲いました。
「ぐわ~!!」
へびの毒で、弱ってはいましたがシッダの母親は、なぜかわずかに動くことができたのです。
鷹はへびの背中に食い込んだそのかぎづめをぐいぐいと口元へと運んでいきます。
ヘビは鷹の足にぐるぐると体をまきはじめて鎌首を上げると、小さかったへびの口がゴムのように何倍も大きくなり鷹の体をかぶりつきました。
鷹が鋭い口でへびの体を引きちぎるのと同時に、へびの毒が鷹の身体の全身に回り、鷹もへびもお互いを口でくわえたまま、そこで死んでしまいました。
何も知らないのはうさぎのトッキだけです。
「たいへん。早くシッダに知らせないと・・・。シッダの母親さん大丈夫かな?」
そんなことは、つゆほどにも知らないうさぎのトッキは、来た道を跳ねながら帰っていきました。
トッキがいなくなってから、あの鷹がいた木の根元から、光る白いへびのような長いものが出てきました。トッキが一番最初に出会ったヘビです。
姿はヘビのようでしたが、よく見ると、それはへびではなく、小さな竜の形をしていました。
そのものは、ここの山全体を守る、竜でした。
竜は白ヘビが自分を真似ていたことに腹をたて、鷹がもう少し生きているようにしてウサギを助けました。
白ヘビは初めから、鷹もうさぎも食べるつもりでいたのです。
そう、ヘビは鷹も食べたいがために、トッキと一緒について来たのです。
しかも、鷹は鷹で、ヘビにそそのかされてトッキをだまして食べようとしました。
そして、どちらも命を縮めてしまいました。
竜は跳んで帰るウサギを見送ってから、また、のびのびの森の中へと姿を消していきました。
そのあと、のんびりと過ごしていた鷹のシッダは、まさかあのトッキが帰ってきてびっくりしました。
平静をよそおったシッダでしたが、トッキから母親が死にそうだと聞き、さらに、びっくりしました。
慌てたシッダは、動けない病気だと嘘をついていたにもかかわらず、トッキの目の前で飛び起きて母親のもとへ飛んで向かったのでした。
トッキはあのへびの言った通りに、シッダが仮病を使っていたのに驚いて、もう二度とシッダを信用することはなくなりました。
そして、一緒に行ってくれたあのへびは、もしかしたら幸運のへびだったのかもと思うようにもなりました。
トッキはその時のことを皆に話したので、皆は伝説は本当だったとのうわさがのびのび山に広がっていきました。
ですが、もとから、白竜は他人を助けるような竜ではなかったのです。
いつからか、こうやって皆からありがたがられ始めると、まんざら悪い気もしない。なので、つい弱いものを助けてしまい、いつも間にか、のびのび山の守り神となってしまっていたのです。
幸運の白へびの伝説はまた、生き物の手によって作られていきました。
おしまい
不思議森とのびのび山より〜
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こんにちは😊
不思議森とのびのび山の世界が最初に出来た物語です✨
よかったら、暇つぶしに・・・読んでみてくださいね。
福岡はとってもいいお天気になりました。風が強いですよ!
そして、まだなんだか寒いときがあります。
そうそう、うちのアマリリスがやっと咲きました😀♥14日に〜💞
去年より10日も遅かったです。
寒いからかな?
キレイダナ〜💞
ではでは、今日が素敵な一日ととなりますように・・・。
ありがとうございました☆
kyuri🌼