リア王女と魔法のジュエル 

 

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その1   http://ameblo.jp/kyuria2015/entry-12127617480.html

 

 

前回よりあらすじを・・・。

 

自力で魔法を解き、人間になったローレンスとリアと竜の姿のビオに驚いたディーンが、ライラたち共々魔法にかけようとしたとき、そこに妖精王が現れる。

ディーンは今まで、妖精界と人間界を繋げたいと思っていたことを妖精王に告白。そして、その時をずっと狙っていたと。

愛する人と妖精界の掟で離ればなれになって、ずっと先代の妖精王を憎んでいた。

すべてはこの掟のせい。だから妖精界と人間界を一つにすれば、僕らのような悲しい別れがなくなるとディーンはこの計画を立ててきた。だが、その悲しい別れをしたことのあるのは、ディーンだけではなかった。妖精王もその一人だった。

 

その38より

 

 

「そうだ。人間界と妖精界の間に穴をあけるには、大いなる風と力が必要だった。力はあのクプルの実を使えば強められる。後は風。シャーロットの力を見た時からこれは使えるとずっと思っていた」

 

「ディーン。お前はシャーロットが母親に会いたいと思っていたことも利用したのか!?」

 

「あなたには、わからないでしょうね。そう、あなたには二人の可愛い子供がいるから。でも、私には、何も残らなかった!先代の妖精王は容赦なく私たちを引き裂いた!!その償いを子孫の子供にさせて何が悪い!!」

 

妖精王は、先代の妖精王からディーンのことについて、人間界のことをよく知っているとは教えられてはいたが、詳しいことまでは聞いていなかった。

 

まして、自分と同じように、人間界の女と恋に落ち、その間を引き裂かれたとは・・・。

 

「お前に子供たちの教育係として付けたのは、俺の落ち度だな・・・」

 

ディーンの貫いてくる憎しみにも似た視線の中に、哀しみが浮かんでは消える。
ずっと前に、自分も同じような想いを持っていたのだ。わからないわけがない。

 

妖精王はずっと隠してきた胸の痛みが、またざわざわと騒ぎだすのを感じました。

 

 

宝石赤その39「黒い風と闇」

 

 

 「ディーン。それ程までに、この人間界と妖精界を一つにしたいのか?愚かな奴。利用された事にも気づかない程に、お前には現実が見えなくなっているようだな」

 

「利用?俺は誰にも利用などされてはいない!」

 

「では、己であれを見よ!!」

 

妖精王はさっき、ビオ達が抜けてきた穴があった場所を示しました。そこには、さっきなくなっていたはずの穴がまた広がっていました。その穴からは黒い靄みたいなものが、またこちらの世界へと入り込んでいます。

 

「ディーン。あの穴は塞いだはずなのだが、塞ぎ切れなかった。どういうことかわかるか?違う力が押し広げているのだ。お前、妖精界のブラックエンドから何を連れてきた?」

 

「連れてきた?な、なにも・・・」

 

おもってもないことを言われ、ディーンは首を振りながら動揺しています。

 

「では、お前の身体に付いているのか?」

 

「違う!」

 

妖精王が近づくと、ディーンは逃げるように後ろへと身体を後ずさりしました。

 

穴からはますます黒い靄が入り込んできて、天井へと薄く広がっていきます。

それを妖精王のずっと後ろで見ていたローレンスが、何か嫌な気持ちになりました。

 

「やばくないか?ビオ!あの穴、また広がってきている!」

 

「ああ。なんか、これからえらいことが起こりそうだぜ!」

 

「ん?おい!あれ?あのキラキラした糸のようなもの」

 

ローレンスが指さした所をみると、なるほどディーンの頭のてっぺんから、銀の糸のようなものがずっと上に繋がっているのが分かりました。

 

「なんだろう?」

 

二人がその奇妙なものを発見したとき、後ろから突然声がしました。

 

「あれは、チュランタという蜘蛛の糸です!」

 

その声にギョッとして二人が振り向くと、妖精界で会ったあのフクロウ男爵が立っていました。いつの間に人間界に来たのでしょう?

フクロウ男爵は全身の羽根をパサパサといわせて、目玉をグルリと回しました。

 

「皆様の所へと、お逃げさない。それが賢い選択でしょう」

 

そして、さらにフクロウ男爵は表情を変えずにこう言いました。

 

「なにしろ、あのチュランタは人間が大好物ですからね・・・」

 

最後にフクロウ男爵がふと笑ったような気がして、ビオは寒気がしました。

まだ会ってもいないチュランタよりも、こっちのフクロウ男爵の方がよほど怖いぜ!と、ビオは思いました。

 

「人間を食べるだって?嘘だろう・・・」

 

ローレンスは笑いながら、そうつぶやきましたが、どうやら嘘のようでもないみたいです。

二人があの穴を注意深く見ていると、中から黒くて細い棒のようなものが二本に出てきました。

 

細かい毛のようなもので覆われたその棒は、左右に折れ曲がると、さらにまたべつの新たな棒が出てきて折れ曲がり、穴を広げていきます。

 

ビオはあの棒に繋がっているそのさらに奥の姿を想像しました。

 

「あははは、黒い脚をみて想像しちまったぜ!チュランタって名前からしていやだな」

 

ローレンスも全体像を想像して嫌な気分になりました。

チュランタ。タランチュラの名をもじって付けた名前のようです。

 

「あいつ、毒を持っているのか?」

 

ローレンスがフクロウ男爵にそう聞くと「いいえ」と、首をぐるりと回しながら答えました。そしてさらに付け加えました。

 

「チュランタは毒を持っていません。ですが、一番厄介なのはチュランタには魔法が効かないことです」

 

「魔法が効かない!?ってことは、物理的な攻撃しか効果がないってことか?」

 

「そうです。ですが、あのチュランタを殺してはなりません」

 

ビオが怪訝そうな顔をして、首をフクロウ男爵の顔に近づけました。

 

「どうしてだよ!」

 

「あのチュランタの体には様々なモノが宿っているからです。チュランタが死ねば、それらが出てきます。人間界にそれらを離すことを、妖精王様は許可しないでしょう」

 

「じゃあ、追い返すしかないのかよ!」

 

「そうです。ですが、さっきも言ったように、チュランタは人間が大好物なのです。ちょっとやそっとでは、帰ってはくれないと思いますね」

 

ビオはふと考えて、フクロウ男爵に質問しました。

 

「なあ、じゃあ人間以外は食べたりはしないのか?」

 

「他のモノは食べないと思いますよ。たぶんね・・・」

 

「たぶんね!じゃ、困るんだよ!!」

 

フクロウ男爵はビオの躰をジーっと眺めまわして、「まあ、あなたを食べることはないです。誰でも好みっていうものがありますからね」と、ニヤリと笑いました。

以前も美味しくないとか、いろいろ言われたことをビオは思い出しました。

 

 

 

その40「魔法の使い道」へと続く

 

 

こんにちは。

「リア王女と魔法のジュエル」 その39をお届けできてうれしく思います。

楽しみにしていてくださった方々、読んでくださった方、寄ってくださった方、ありがとうございます。

 

ずっと、御無沙汰していました。2017年から更新してなかったんだと、今回あらためて思いました。

三年の間に色々あって、体力的にも、精神的にも疲れてしまった時期もあり、

ブログをやめようかとも、思ったり・・・。

けど、やはり中途半端なので、あきらめずに、最後まで書いていこうと思っています。

来年、心に余裕ができたら、また続きを書き始めたいと思います。

ありがとうございます~*

 

今回の更新は、今日を入れて全部で四回です。

毎日更新予定です。

 

更新、お楽しみくださいね。最後まで、読んでくださったら嬉しいです♡

ではでは、また、次回でお会いしましょう。