無意識のうちに人は、思いがけない行動をとってしまうこともあるものだと、誰が言っていたんだっけ…?

 フロイトだったろうか?

 

 梨花は、まさかそこまで行かないだろうと思っていたお風呂場も念のため探してみることにした。

 が、結局そこにもいなかった。

 

 もしかしたら、家の外へ出たのかもしれない…

 ふと、そんな思いが頭をよぎった。

 

 梨花の家は当時、引き戸の玄関に鍵をかけていなかった。

 鍵をかけなくとも、これまで一度足りとも盗人に入られたことなどなかったし、そう言った話を聞いたこともなかった。

 ここまで探してあの子が家の中にいないとなると、なんとなく長屋門の外まで行っているような、そんな気がしたのだ。

 

 敷地内には、馬屋、木小屋や味噌蔵、蔵、北東の位置にさらにもう一つの厠もあった。

 そのどこでもなく、多分長屋門の外だという思いがだんだん強くなってきた。

 

 あの子と最後に話した場所…

 薄らぼんやりとであったが、次第に思い出してきていた。

 

「もう、おうちに入らなきゃ。そろそろ戻ろうよ」

 あの子に向かって、そう言ったことまで徐々に浮かんできた。

 そこは、長屋門に隣接していた車庫の前でのことだった。

 

 重い鉄扉が閉められた車庫の暗がりには、軽トラックや乗用車が物言わず収まっているはずだ。

 あの子はその鉄扉の前で家に戻るのを渋った。

 

 その時不意に、なんで今こんなところにいるんだろう?との疑念が湧いた。

 そう思った途端、急にゾッとしたのだ。

 

 月明かりさえ、星一つ見えないこんな真夜中に、自分はどうしてこんな場所にあの子といて、一体何をしていたんだろうか?と…

 遊んでいた?本当に?

 

 それに…

 てっきり二人きりのはずだとばかり思っていたのが、気づけば二人の周りにはいろんな者たちの気配があった。

 

 風もないのに、そこかしこからカサカサと葉擦(はず)れの音がして、あたかも植物たちが意志を持って揺れているかのような…

 かと思えば、夜に彷徨う野生動物たちの息遣いであったり…

 

 自然に宿る精霊たちの気は、昼と夜とで全く様子が違っていて…

 陰陽の二つの異なる気が差し示すように、出くわす者たちの性質もまるで違っていた。

 深い夜の気を纏(まと)った者たちの気配を感じると、足のつま先から頭の天辺に向かって何やらゾゾゾッと一気に悪寒が走るのだった。

 

 梨花は、幼いながらもこうしちゃいられないとの思いに駆られた。

 はやくおうちにもどらなくっちゃ!

 それこそ夜の深いところに引っ張られでもしたら取り返しのつかないことにもなりかねない、そんな恐怖がそこにはあった。

 

 ただ、そこからの記憶は…

 未だ思い出せないままだった。

 

 

 梨花はズック靴を履くと、車庫の前に行ってしばらく辺りを見回してみた。

 夏の盛りの眩しい光りがそこら中に燦々(さんさん)と降り注いでいて、この時は怖いだなんてちっとも思わなかった。 

 そう考えたら、街灯もないあんな漆黒の闇の中を例えあの子と一緒とはいえ、よくぞ車庫の前まで行けたものだと改めて思ったもりした。

 

 そのうちにやっと…!

 そう、梨花はやっとあの子を見つけることが出来た。

 

 あの子は、車庫の前に広がる色とりどりの百日草が咲き誇る畑の隅っこで、ひっそりと眠っていた。

 

 

 あの日以来、そんなことが幾度か繰り返された後…

 そのことにどうにも耐えられなくなっていた梨花は、ある行動を起こした。

 

 それと言うのは…

 ある朝梨花は、長屋門の前、道路を挟んだ向こう側にある溜池に、あの子を放ったのだ!

 それは考えて考えて、考え抜いた末のことだった…

 

 あの子は何も悪くはなかったのかもしれない。

 ただただ寂しかった梨花の妄想が引き起こした、悪夢だったのかもしれない。

 

 けれど、この時の梨花にはもう限界が来ていた。

 

 あの子を溜池に放ってしまったことへの罪悪感というのもあるにはあったけれど、それ以上に、度々繰り返される不可解過ぎる真夜中の行動に、梨花自身すっかり怯えるようになっていた。

 あの子の存在自体が、愛しいものから恐ろしいものへと変わっていくのが、それはとても哀しいことではあったけれど…

 

 大人たちに言ったとて、子どもの言うことなど、ぴーちゃん以外誰もまともに取り合ってなどくれなかった。

 そのぴーちゃんにすら、あの子を溜池にこっそり放ったことは言えずにいた。

 決してやってはいけないことだと、頭の片隅では分かっていたから…

 

 

 あの子を手放してから、真夜中の不思議な現象は起こらなくなっていた。

 悪いことをしたというのに、屋根裏の虎も現れることはなかった。

 それでも時々、あの子がまた舞い戻ってくるのではという思いがずっと残っていて、梨花は時々不安に駆られた。

 

 そんなある日、ぴーちゃんに名前を呼ばれた。

 けれど、それは梨花本来の名前ではない…

 ぴーちゃんは時々、梨花の名前を呼び間違えることがあって、その度に「私は梨花だよ」と言い直すと、「んだが…」と少し怪訝そうな顔をして梨花の顔をじっと見つめるのだった。

 

「溜(ため)いげさあの人ぎょっこ捨てだの、梨花だが…?」

 聞かれて梨花はドキッとした。

「…うん…」

 ドキッとしながらも梨花は正直に頷いてみせた。

 ぴーちゃんはそれ以上何も聞かなかった。

 だから梨花も何も言わなかった。

 

 ぴーちゃんは、これまでずーっと梨花が悩んできたことを、分かってくれていたのかもしれない。

 その後、急いであの溜池に行ってみたけれど、あの子はどこにもいなかった。

 

 家の敷地内にひっそりと鎮座するお明神様と雷神様のお社の前で、ぴーちゃんがお焚き上げをしてくれたのかもしれないと、後になって梨花は思った。

 

 あれ以来、梨花があの子の姿を見ることはなかった…

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

こんばんわ〜☆

ご無沙汰しております。

 

 

今回もかなり暗めな回となりました…^^;

次回はも少し明るくしたいなと思っています。←ほんまかいな…?(⌒-⌒; )

 

 

 

昨夜、一昨日娘に送った荷物がまだ届かない〜と言うので送り状をLINEに送って見てもらったら、なんと番地を書いていませんでした…😵

それもクール便(実家から送ってもらった野菜たち)だったからめっちゃ焦りました…💦

大体うち経由で娘のところへ送っていて。

今朝には無事配達されたとのこと、ひとまずホッと☕️

 

それにしても、いつも送っているはずなのに…

ほんとアホや〜💦って昨夜はちと落ち込んじゃったです。

こんな時もあるよね〜(^◇^;)

 

で一昨日は、帰ってきたら、台所の窓が開けっぱなしだったと言うことに気がついて慄きました…😱

防犯対策ゼロ…

 

 

 

先日訪れた諏訪神社と可愛い狛犬さんたち♡

 

この子はしっかりもので、前向きな感じの明るいイメージ♫

キリッと素敵な笑顔です♡

 

 

で、こっちの子はなんだかとっても恥ずかしがり屋さんみたい!

なんとなくトンズラーに少し似てるなぁ。そこがまた可愛い♡

母方のおじいちゃんにもどこか似てるような…そんな懐かしさが。

 

 

 

今日はだいぶ秋の気配がしています。

虫たちも賑やかに鳴いていて、窓から吹き込む風も涼しくて…

湿度がないってこんなにも過ごしやすいんだーと改めて実感してました😊

 

 

今日も読んでくださいまして、本当にありがとうございます✨

いいね、フォローにも感謝しております☆

 

連日巡れないかと思いますので、どうぞスルーで構いませんね🙏

思い出した時にでも立ち寄っていただけたら😆嬉しいです♡

 

ではではまた、どうかhappyな毎日でありますように🕊️🌈🕊️