単に、気づけなかっただけかもしれない。
梨花は、なんとかそう思うように努めてみた。
連日、貴重な昼休みを削っての、クラス対抗合唱コンクールの練習が続いていたのも、少なからず影響しているのだろう。
すっかり疲れ果ててもいた…
(今日はそれすらサボったけれど…)
うーん……にしたって、例えそう思ってみたところで、やっぱり、簡単に割り切れるものでもなかった。
いくら周りが見えなくなるくらい没頭していたとして、こんな近くまで来ていたのを、気づけないことってあるんだろうか?
足音だったり、あるいは視界の端っこに映る光だとか影だとか……
何かしらの気配を、五感で捉(とら)えられそうなものなのに。
ここを訪れた時にも、しばらく森の自然音は聞こえてこなかったっけ…
その時はまだ、創作ノートを開いて妄想に耽(ふけ)っている時ではなかった。
気づいた時には、既に音は戻っていて…
「はじめまして、川井さん」
そう言った女子生徒の第一声から来る印象は、なんとなくではあったが、どこか威圧的に感じられた。
口元に微笑こそ湛(たた)えていたものの、梨花の目にはその微笑さえも、なんだか作り物めいて見えた。
どうしてかは分からない、ただ、そう感じるのだった。
そもそもなぜ、梨花の名前を知っているのだろう…?
「私、森里美と言います。一昨日、仙台から越して来たばかりなの」
どうりで、見慣れないはずだと思った。
それならなおさら、梨花のことを知っているだなんて驚きだ。
一学年の女子生徒の中でも、とりわけ目立つ方でもなく、ごくごく平凡な一人(自称、ビバ☆ラブリーちんちくりん)でまかり通っていると言うのに…
(いや、まかり通ってはいないと思います、はい…)
梨花が押し黙ったままでいると、森里美は声を立てて笑った。
それは決して、感じの良い笑い方ではなかった。
梨花も梨花で、かかしのように突っ立ったまま、警戒心からくるポーカーフェイスで、挨拶すら返さないでいた。
おそらく梨花に対する向こうの印象も、(めっちゃ態度悪っ!)って思われているに違いない。
森里美の声は、大人びたハスキーボイスをしていた。
どちらかと言うとハスキーボイスは好きな方だし、ちょっぴり憧れもあった。
それなのに…
何でなのかな…?
森里美から発せられるその声音は、梨花にはどうしても、心地良いとは思えなかった。
むしろ、耳障りにすら感じるほど…
いや、その発する声ばかりからではなく、身に纏っている雰囲気そのものから来るのもあるだろう。
それは、単なる好きとか嫌いの好みの問題とは違ったところからの感覚で、違和感というのか苦手意識みたいなものに近かった。
そもそも、人の印象って不思議なものだと思う。
何か一つでも不審な点を見つけると、次から次へとその点にばかりフォーカスしてしまって…
その人が本来持っているだろう良い面を、本当はそれにこそフォーカスすれば良いのに、そこをわざわざ傍へと押し退けてまで欠点を探るって、何なん⁈(←梨花よ、おぬしもなっ!)
もしかしたら、思い過ごしなだけで、ほんとは良い人なのかもしれないのに…
てか、良い人って、一体どんな人のことを言うんだー⁉︎
みな多かれ少なかれ、善きも悪きも併せ持つのが人というもの。
その比重が、どちらに多く傾いているかどうかの違いなだけで…
(ほんとそれっ!)
そもそもの違和感のはじまりは、この「手紙」からではあったけれど。
あの、「人形」にまつわる幼き日の体験へと、やっぱり巻き戻されてしまうんだろうか?
だからこそ、この、はじめは何のこっちゃ⁈みたいな違和感バリバリの手紙を書いた張本人、今、こうして目の前に立つ森里美と言う女子生徒に、不信感を抱かない訳がなかった。
「川井さんがびっくりするのも無理ないわ。私、本当言うとね、十年前まで川井さんの隣の家に住んでいたの。まだ、その時あなたは三つぐらいだったから、あんまりよく覚えていないかもしれないけど……あ、それとね、私、三年一組に転入したんだ」
言われて梨花は、あっ…!と思い当たる節があった。
かろうじて形になりかけの、そんな朧(おぼろ)げな記憶の片隅で、確かに小さかった頃、一緒に遊んでくれた女の子がいたことを…
「あの頃は、私の両親の仲がガタガタで……それで結局、それから間もなくして両親が離婚して……私は母について、仙台へ引っ越したの」
そう言えば、そんなことがあったかもしれない…
いつものように遊びに行ったら、
「あの子は遠くへ行ってしまった…」
玄関口でそう語っていた、すっかりやつれ果てて寂しそうなおじさんの顔を、なぜだか、それだけははっきりと思い出せた。
幼かった梨花には、その意味するところがよく分からなくて、その後なんど隣の家を訪れても結局いつも留守だったから、いつしかあきらめてしまっていた。
さすがにもう、あの子には会えないんだと分かった。
今まですっかり忘れていた、その時の哀しさ、寂しかった気持ちが、ふと、胸に込み上げてきそうになる…
そうか、森里美は、あの頃よく遊んでくれた隣のお姉ちゃんだったのか。
今の苗字は、おじさんの苗字と異なってはいるけれど…
そうと分かると、人って案外単純なもの。
先刻まで、目の前をぼんやり覆っていた疑惑のフィルターみたいなものが、スーッと薄まっていくのが分かる。
そりゃ、違和感の全てが完全に拭いきれる訳ではなかったけれど…
ただ、過去に知り合いだったってことが分かっただけで、こうも安心めいたものが生まれるものなのかと、梨花は少し驚きもした。
梨花の表情が和らいだのを見て、森里美もホッと胸を撫で下ろした。
「良かった、思い出してもらえて」
そう言って笑いかけると、森里美は一旦言葉じりを切った。
それからまた、一つ呼吸を整えると、
「…手紙にも書いたんだけど、あの人形のこと、覚えてる?私があなたに預けた、あの古いセルロイドの人形のこと…」
だよね…
やっぱり…
話はそれがメインだよね……
つづく
こんばんわ〜☆
こちら山形も、連日暑い日が続いています。
昨日、富士山でご一緒した仙台の先輩と、久しぶりに天童でランチを楽しんだんですが、トロけるような暑さにクラクラしました。
「そば処 一庵」さんに、開店前20分ほど並んだだけで、ちょっとヤバい感じの暑さよのぉと…🥵
店外だったからね(^◇^;)
で、並んだ甲斐あって、お蕎麦はめっちゃ美味しかったです♪♪
こちらの板そばは¥900とリーズナブルで女性ならお腹いっぱいになると思う😊
その後コメダ珈琲に移動して会話を楽しんだ後、天童温泉道の駅に行ったら、気温が37℃とありましたーーー☀️
でですね、昨日先輩とまったりカフェをしていた時、たまたまスマホを見ることになり、そしたら娘から珍しく急ぎのLINEが…
娘が小学生の時にとてもお世話になった担任のJ先生から、私にメールが届いているから確認してみてと‼︎
私から返信がないから、娘の方にも連絡がいったらしく…🙏💦
慌てて確認してみたら、前日の夕方にメールが来ていました…!(◎_◎;)
出先だったので、帰ってから担任のJ先生とメールを交わしました。
私が不精すぎて全然連絡をしないせいで、もうかなりの年数が経っていたんですが、あの頃を思い出して、とても懐かしかったです♡
J先生のお陰で、今の娘があるっていうくらい、本当にたくさんたくさんお世話になったんです😊
中学へあがる時も、進路でいっぱい悩んでいた娘と私を、ずっと励まして、応援し続けてくれた大切な方❣️
それなのに私って……😓
J先生が、当時娘が通っていたSSTの先生とのご縁ができ、そこでSSTの先生が、娘のことを元気にしてるかなぁと語っておられたことを知って…(12年もお世話になったと言うのに、SSTの先生にもずっと連絡しておりませんでした…)
J先生がメールで、ご縁の不思議さを語っておられて、私も、年月がいくら経ったとしても、繋がる縁とはこうして繋がってゆくものなのかなぁって、しみじみと感じた嬉しい再会でした✨✨
そして、いろいろもっとちゃんとしたいです…(確認もだけど、自分から連絡するのがあまりに苦手過ぎて…💦)
そう言えば、先日エレカシ仲間の友人と会った時も、同じような話になったなぁと、不思議なシンクロを感じました‼︎
そうそう、先月の富士登山の時に見かけた、黄金色の虫(写真で見たらそうでもなかった…)、すっかりサブアカの方に載せるのを忘れていたんで、こっちにあげようと思います🌱
これって、カメムシのお仲間か何かかな⁈
今日もここまで読んでくださいまして、本当にありがとうございます✨
いいね、フォローにも感謝しております⭐️
相変わらずの低浮上ですが、訪問してくださって本当に嬉しいです😊
巡るのも、またしばらく遅くなるかと思います🙇♀️
なので、どうぞスルーで構いません🙏
今週もhappyに楽しもうね〜💕💕
ではではまた〜☆彡☆彡
thanksでした♡