精神科外来の院内Wi-Fiの話 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科外来の院内Wi-Fiの話

随分前の話だが、措置入院の鑑定のために市内のある病院まで出かけた。時間はもう夕方5時を過ぎた頃だった。

 

措置入院の鑑定は2名の精神保健指定医が呼ばれるが、しばしばそれに応じる医師とそうでない医師に分かれる。措置鑑定は措置入院の必要性が2名で一致していれば問題なく、臨床診断が異なっても良い。

 

僕は「これは誰が見ても統合失調症と診断するでしょう」と思える患者さんを、当時、今のASDと診断したことがある。もう1人の精神保健指定医は大学病院の若い医師で、「こりゃ変な診断する医師だなぁ」と思われたと推測する。

 

年間に1度も応じない場合、診療報酬でペナルティがあるので、全く行かないのはほぼありえない。

 

ほぼあり得ないと書いたのは、僕は年間に1度も行かない年の方が多いからである。医療観察法の業務をしている場合、既に公務員的な業務をしているとみなされて、行かなくても良いらしい。(確認済み)

 

それと院内の他の医師が行きたがるので僕は遠慮しているのもある。

 

面白いのは措置鑑定の報酬。これには選択肢があり、なんと無料で応じるという項目があるのである。従って無料で応じない選択をすればもちろん報酬が出る。あまり高くはないが。

 

昔は精神保健指定医の召集に苦労していたため、このルールができたのだと思う。また、クリニックの医師があまり応じないこともあった。

 

昔は精神保健指定医だったのだが、更新しなかったため、今は精神保健指定医でない年配のクリニックの医師がいる。精神保健指定医は非任意の入院の際に必要な国家資格で、いつもクリニックで診療している医師にはあまり必要性を感じない資格である。

 

以下は日本以外のどの国でも非任意の入院形態が、法的に位置付けられているという記事である。参考にしてほしい。

 

 

一方、民間の単科精神科病院にとって非常に重要な資格で、入職する際の契約年俸に反映する。実際、精神保健指定医がない精神科医は一人前とはみなされない。

 

結局だが、昔からクリニックを開業していた医師には、精神保健指定医は必要性をあまり感じない資格だったので、更新せず放棄したのだと思う。

 

その後、放棄した医師にとって、国が精神保健指定医の資格を診療報酬に反映させたことは青天の霹靂だったと思われる。具体的には通院精神療法の報酬が、精神保健指定医とそれ以外では差がつくようにしたのである。しかし計算してみると、経営ができなくなるような大きな差ではなかった。きっとそういうことも勘案し、国は差を設定したのであろう。

 

精神保健指定医は、クリニック経営の医師であれば外来に、それがわかるように記載しておきたい資格であるが、長年クリニックを経営していて外来患者さんも定着し、新患もあまり診ないような状況だと今でもそこまで必要がない。

 

長期的にはクリニックを誰かに譲るか閉院し、民間の単科精神科病院にアルバイトをするような際、報酬に差があるため精神保健指定医を持っていた方が良いと言うことはある。あっても邪魔にはならないからである。また、健康上の理由で閉院し、再び勤務医になると言う話はそう珍しくはない。

 

最初に戻るが、ある病院に鑑定のために出かけたところ、もう夕方5時なのに、大学生くらいの年代の患者さんがまだ外来に多くいて、皆、スマホを見ているのに驚いた。なんと、外来に院内Wi-Fiが無料で開放されていたのである。

 

2つ驚いたことがあり、1つはこの時間の外来患者の多さであった。クリニックの診療時間は遅い時間までやっていることが多く普通かもしれないが、単科精神科病院ではこの外来数はかなり多いと言えた。実際、調べてみると市内で月間のべ外来人数がトップだったのである。

 

もう1つは院内Wi-Fiが無料で使えることであった、当時、まだ無料の院内Wi-Fiはない病院が多かった。おそらく大学が近いため、若い人のニーズに応じているのだと思った。

 

セキュリティ的には、僕は詳しくはないが、外来無料Wi-Fiが病院と同じ回線だと少し不安がある。うちの病院でもそれから何年かして院内Wi-Fiを導入したので、セキュリティの問題はそこまでなかったのかもしれない。

 

電子カルテは万一ハッキングされた場合(ランサムウェア・身代金要求型ウイルスなど)、大事故になる。いわゆるハッカーによる脅迫である。

 

 

このような事態になると、電子カルテの閲覧ができなくなるので診療そのものができない。院内Wi-Fiでそのリスクがどのくらいあるのかは詳しくないが、慎重なら院内Wi-Fiまで無料で開放しないということもあると思う。

 

僕がたまに行く精神科以外の大学時代の友人のクリニックはどこも院内Wi-Fiがない。これは来院患者の年代も関係しているのではないかと思った。内科や整形外科などやはり年配の人が多いからである。

 

なお余談だが、電子カルテを導入する場合、病院内に発電機が必要と聞いたことがある。それもキャンプで使うレベルではなく、本格的な発電施設である。それがないと災害の際、停電が長く続くと診療ができなくなる。

 

そう言う風に聴いていたが、クリニックは電子カルテが多いが、発電施設まで持っているようには見えない。どのようになっているかは知らないが、ガソリンも満足に手に入らなくなる事態が続けば、診療できなくなるのでは?と思う。

 

電子カルテだが、国は2030年度にほぼ全ての医療機関へ導入を目指している。実際、厚生局の監査では、2030年という具体的な年を聴いた。

 

 

現在、精神科病院に限らず、新型コロナ後の環境変化やインフレの影響で、赤字の病院が増えており、診療報酬が少しばかり上がったとしても焼石に水である。それくらい深刻な話になりつつある。

 

赤字の病院が、電子カルテのように膨大な導入費用やランニングコスト上昇に耐えられるのか、かなり疑問だと思う。