その人の精神症状のレンジ | kyupinの日記 気が向けば更新

その人の精神症状のレンジ

今回の記事はさほどまとまっていない。精神科医から見る感覚的なことをアップしている。

 

いかなる理由かわからないが、受け持ち患者さんの一部が相対的に悪化する時期がある。

 

このような時、この患者さんがどのような精神症状が出現する傾向があり、いかなるレンジにいるかわかるので非常に参考になる。

 

例えば、ある時期になると「非常に眠くなる人」。この精神症状は双極性障害的であるが、広汎性発達障害的でもある。また非定型精神病など周期性の精神疾患もそうである。その視点では同じ症状でも原因疾患がオーバーラップしているが、ひょっとしたら単に精神疾患の表現型が異なっているだけかもしれない。

 

眠くなる人も仕事にそこまで支障がなくうまくこなせているのであれば外来レベルであるし、その人の精神症状のレンジ内である。それ以上の悪化がないなら、その患者さんはおそらくそこが下限なのだろう。

 

また、眠いのとは異なり「動けなくなる」というのもある。この場合、仕事に行けなくなる人もいるので、単に「眠い」より精神症状の質的には重い。この症状の延長上に亜昏迷~昏迷がある人がいる。

 

昏迷まで至る人は、学業も仕事もできなくなるため退学や退職という経過になりやすい。悪化時にこのレンジまでありうる人は服薬して昏迷が改善するならその方が遥かに良い。精神疾患による経済的、あるいは社会的損失が大きすぎるからである。

 

同じ動けないのでも「全てが面倒」などというのもある。これは広汎性発達障害的な精神症状だと思うが、臨床的にうつ病や双極性障害あるいは統合失調症と診断される人もいると思われる。

 

「全てが面倒」と「亜昏迷」の相違だが、精神科医から診ると全然違うのだが、家族から診るとさほど区別がつかないのかもしれない。亜昏迷は本人の頑張りようがないが、「全てが面倒」は昭和的視点では、本人の気力でなんとかなりそうに見えるのが相違の1つだと思う。実際に、本人を診察した時の重篤感がまるで違う。(一応記載しておくが、亜昏迷が重篤)

 

「全てが面倒」状態の人は苦悩がそこまでない人もおり、ひきこもり状態が続くまま長期間治療を受けずにいるケースも多くなる。このタイプのアパシー系の精神症状はSSRIでたいして上がらないことも良くあるので治療に工夫が必要だと思う。そう思う理由は、このタイプの人はSSRIでかえってテンションが下がり、「どうでも良さ」にかえって磨きがかかることがあるからである。

 

「全てが面倒」タイプの人はレンジの下限がそこではあるが、なかなか上がってこないケースだと超長期に低空飛行になる。

 

また悪化時に「疼痛が酷くなる」というものある。これはうつ病的な精神症状だし、実際に抗うつ剤が非常に有効なことがあるが、平成的視点では広汎性発達障害的でもあると思われる。疼痛に関しては有効な向精神薬が多く発売されるようになり、改善する人がほとんど全てとなった。

 

最近、「なぜ疼痛性障害は最終的に治癒するのか?(仮題)」という記事を脳内でまとめつつある。そう思う理由は未だかつて治癒していない人を1名も診たことがないからである(最近治療し始めた数名を除く)。疼痛性障害は治癒過程に意外性がある。

 

もう少し重い精神病では、レンジ的には他の人が悪化している時期にかえって良くなっているように見える人たちがいる。

 

例を挙げると、「大人しくなる」、「口数が減る」「かんしゃくのような興奮が減少」などである。これは脳内でドパミン過剰が相対的に解消しているとみれば、上記の「眠くなる」とか「アパシー傾向になる」「疼痛が悪化する」などの精神症状変化と整合性がある。

 

その理由は、レンジが上方にずれているだけだからである、