精神科医とタバコ | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科医とタバコ

大学入学時、新入生がタバコを吸っている光景はちょっと違和感があった。「高校時代、普通吸わないだろう」ではなく、現役や1浪くらいだとまだ未成年だから。現在は選挙権が18歳に引き下げられたことに合わせ成人の区切りが18歳になったので状況が違う。

 

高校3年の最後大学に合格すると担任に挨拶に行く。その時、教務員室で担任と一緒にタバコを吸いながら談笑する卒業生もいたので、彼らはきっと高校時代から吸っていたのである。高校生でタバコを吸うと停学になるが、卒業後はたとえ未成年だったとしても大目に見られたのだろう。

 

高校時代、担任の先生はタバコを吸うと記憶力が落ちるので受験には不利だと言っていたが、大学時代の友人は逆のことを言っていた。レポートや試験が続くと、タバコを吸わないと集中できず、憶えられないと言うのである。

 

現役で入学した友人も結構な数、喫煙者になったが、若い頃は「健康に悪い」ということはあまり考えなかった。知り合いのMRさんによると、「医師は普通にタバコを吸うイメージです」というので、当時の医学生や医師の喫煙率の高さがわかる。僕は試しに吸ったところ体に合わないのがすぐわかったので喫煙しなかったが、友人は脳外科の1人を除き、全て喫煙者になった(精神科医を含まず)。

 

卒業後、精神科に入局したが、精神科医は実に喫煙する人が多かった。だから夕方になると医局は曇っていているほどである。それは精神科に限らず、内科でも同じようなものだった。禁煙運動ということでタバコを吸うたびに100円入れる貯金箱があったらしいが、すぐにいっぱいになり、医局旅行に協賛されたと言う。大学病院でこれである。友人によれば、12000円なら皆ちょっとは考えたかもしれないと笑っていた。5本吸うとペナルティが1万円になるからである。なお、その話をしていた彼は当時、内科医なのに140本は吸っていた。最近、会ったところ、やっと禁煙を始めたと言う。(あんた、まだ吸っていたんかい)

 

なお、女医さんは男性医師よりは低いがそれでも高い喫煙率だったように見えるが、いかなる集団と比べるかで違うとは思う。

 

当時、精神科医は禁煙のモチベーションを生じる環境がなかった。その理由は職場である精神病院の患者さんたちの喫煙率が非常に高かったからである。また患者さんに禁煙を勧める状況もあまりなかった。昔は精神科患者さんが入院してきた後、喫煙を覚えるといったこともあったのである。

 

当時の精神科病院は分煙も十分にされておらず、畳の上のタバコの火の焦げも結構あった。夜間に吸えないなど時間的に制限があるので、それでも火事になることは滅多になかった。

 

研修医時代、陪席していると、指導医が診察中に禁断症状が起こるらしく、たまらず喫煙休憩を取る。その際、喫煙所なるスペースが存在しないため別室でタバコを吸い、そこに自分もいたのである。当時は副流煙の害などの概念がなかった。なお、自分のオーベンはタバコを吸わない精神科医だったが、それでラッキーという感覚もなかった。今の自分であればもちろん良かったと思う。

 

近年、精神科医も年齢が上がるとさすがに禁煙する人もいるため、年配の「今は吸わない人」増えてきてはいる。医師全般に言えるが、若い精神科医の非喫煙率はけっこう高いように思う。むしろ、新入医局員でタバコを吸う人は新鮮に見える。

 

タバコは最近、更に値上げされたが、今後も値上げは続くと思われる。タバコの値上げの善し悪しの複雑な点は、精神科患者さんや低所得者などの社会的弱者から税金を徴収する逆累進課税になっていることだと思う。

 

140本吸っている障害年金2級の患者さんは、給付金の3分の1くらいは国に還付している感じになる。11箱タバコを吸う人は生涯で1000万円タバコ代がかかるらしい。