中高年の統合失調症の人たちの薬物治療(後半) | kyupinの日記 気が向けば更新

中高年の統合失調症の人たちの薬物治療(後半)

中高年の統合失調症の人たちの処方で、たまに驚くようなものがある。例えば以下のような処方。

 

インプロメン 36

クレミン  150

アキネトン  6

(他、便秘薬、胃腸薬、眠剤など)

 

これはインプロメンが最高量入っているので、これだけ見ても凄い処方である。また、この処方で普通に生活されていることに更に驚いた。このようなことから、薬は体質や体調との相対的なものなのがわかる。

 

この処方は可能な限り非定型精神病薬に変更する方が良いが、この人のように普通に家庭で生活している(料理もするし主婦として普通に役割を果たしている)人の薬剤変更は相当に決断が鈍るものである。また、変更を提案すると拒絶する人が多い。「今は調子が良いのでこのままにしてください」などと言われる。

 

本来、外来患者で精神症状が安定していて社会生活ができている人たちの薬物療法は任意のものなので、この言葉に精神科医も甘えてしまうのである。結局、変更されることなくこのような奇妙な処方が継続されるのである。

 

上のような処方は若い精神科医(概ね35歳以下)の人たちがすることはまずない。それはインプロメンやクレミンを使ったことがないか処方経験がほとんどないからである。このような処方の患者さんたちは、どこの病院の誰が処方しているか調べたら、あるクリニックに行きついた。

 

しかし、クリニックの患者さんたちは相対的に軽い人が多いので、クリニックで外来治療を継続しているうちに、この処方になることはない。これは患者さんが若い頃、精神科病院で入院治療中にこの処方になり、その後、精神科ないし心療内科クリニックに転院、外来治療を続けたが、安定していたことと、下手に減薬すると再燃して入院になるリスクがあるため、このような処方のまま20年以上処方されてきたのであろう。

 

一般にクリニックでは、悪化すると入院治療が必要なことがわかっている統合失調症の患者さんは減量するリスクがとりにくく、ヘビーな処方がそのままになりやすいことは重要だと思う。

 

このようなことから、最初に挙げたような処方は、60歳以上の年配の精神科医、しかももう25年以上続いているクリニックにみられることが多い。精神病院であったとしたら、真に重い人たちである。

 

たまたま転院してきたとか、リエゾンでこのような強烈な処方を発見した際には(珍しいが)、家族に伝えてできるだけ減薬している。自分にもラインがあり、この程度だと旧来の抗精神病薬でも仕方がないといった許容量のようなものがある。それは、それぞれ単剤処方として、

 

セレネース9

クレミン100

クロフェクトン150

PZC 16

インプロメン 18

プロピタン  450

 

くらいである。これは感覚的なもので、コントミン換算などによるものではない。また単剤かどうか、アキネトンやアーテンの使われ方により印象が変わるためデジタルには対応はしていない。

 

このような旧来の処方を非定型抗精神病薬に変更した際、たいていの人は大幅に体重減少するのは驚きである。それはジプレキサに変更した際にすら、体重減少する人が稀ではない。

 

変更例

セレネース  9

レボトミン 150

アキネトン 6

 

から現在

シクレスト 10

 

上のセレネース9㎎、レボトミン150㎎は極端に酷いとまでは言えない(自分の印象)。しかし、アキネトン6㎎というのが決定的にダメである。現代社会では、極力アキネトン、アーテンは使わない薬物療法になっている。

 

逆に旧来の薬物療法は、これら抗パーキンソ薬が処方内に残らざるを得ないのが良くないのである。

 

結論的なものを言えば、旧来の処方はリスク・ベネフィットの視点で完全に否定されるものではない。しかしそれにも許容量があり、酷い処方は、本人あるいは家族に説明しトライすべきである。

 

(後半おわり。いつか古い処方を変更し何が大きく変わったかをアップしたい。これからが本題に入る)