広汎性発達障害、ADHDの精神症状の顕在化 | kyupinの日記 気が向けば更新

広汎性発達障害、ADHDの精神症状の顕在化

広汎性発達障害、ADHDの人たちに不安障害、うつ状態、精神病状態が発症する直前に起こることはまだよくわかっていないと思う。

 

広汎性発達障害やADHDの障害が小さいケースでは、幼少時に検診で指摘されず、学齢期ないし思春期に精神症状が顕在化することがある。人によれば、大学を卒業し就職後に顕在化するケースもあると思われる。

 

この場合、広汎性発達障害やADHDは問題にならないくらい軽い場合、状態像で診断されるのが一般的である。たとえば、うつ病、双極性障害、統合失調症などである。精神科的にはこれらは誤診とは言わない。

 

ただしここ10年くらいでは、精神科の主治医はそのような背景を考慮していることが多いのではないかと思われる。実際、紹介状ではそのような広汎性発達障害の記載も付記されていることがある。それなら、なおさら誤診とは言えないであろう。

 

ある青年は大学卒業までは特に問題なく過ごしたが、就職後にうつ状態が顕在化した。元々ADHD的な背景があったが、日常生活にはさほど問題がなかったようである。顕在化の直前、本人が自覚したことは、文字の書き間違えの増加である。本人は、普段、間違わない字を書き間違えてしまうことが理解できずにいた。

 

当初は、書き間違え以外の自覚症状はなかったらしい。彼の場合、元々強迫傾向があるようで、幼少時、一度だけ原因不明の頻尿で病院にかかったことがあるという。実にあいまいな事件だと思う。

 

これなどは単純に考えれば、「元々几帳面だった人が更に厳密さを要求される職場に放り込まれたため、最初はなんとかバランスが取れていたがそのうち破綻してしまった」くらいの理解はできる。

 

ADHDの人が几帳面なんて矛盾するのではないか?と思う人もいるかもしれない。しかし、ADHDの規模が大きくない場合、そういうこともありうる。臨床的にそういう人を診るからである。

 

おそらく徹底は難しいかもしれないが、軽いのでほどほど几帳面にすることは可能なのであろう。だからこそ、その主治医はADHDを問題にしなかった。

 

また軽いADHDの人の場合、長時間の集中は難しいが、短時間の驚異的な集中力を発揮する人がいる。このような人たちは、周囲からは勉強時間が少ないのに成績が良いといった風に見える。

 

同時に自閉性スペクトラム的な限定的興味から、天才的なADHDあるいは天才的なアスペルガーと評価されることもある。

 

しかし現代の特に日本社会では、このようなタイプは、精神科医視点で生物学的背景は危ういのである。

 

あらためて広汎性発達障害やADHDはスペクトラムになっていることを理解すべきだと思う。

 

付記;ここで紹介された青年は約3年間の服薬を要したが(レキソタン、バッチフラワー)、その後、服薬を終え完治している。