コールズ・スーパーマーケットのクワイエット・アワー | kyupinの日記 気が向けば更新

コールズ・スーパーマーケットのクワイエット・アワー

 

オーストラリアに行くと主に2つのスーパーマーケットチェーン店があることに気づく。1つは赤のロゴのColes(コールズ)、もう1つがグリーンのロゴのWoolworths(ウールワース)である。上はちょうどコールズの写真が見つかったのでアップしてみた。この2つのスーパーマーケットチェーンは営業利益で1位と2位を争っているという。

 

 

平成2911月の日豪プレスの記事で、コールズが自閉症スペクトラムの人たちがショッピングしやすいように店内の照明を50%落とし、音響も止め、レジやスキャナーの音量も下げ、さらに場内アナウンスやトロリーを集めて移動する騒音も避ける試みを行ったという。

 

一般の人たちはこのようなスーパーマーケットの喧騒はそこまで負担にならない。ところが自閉症スペクトラムの人たちは、これらが精神面に負担になる上、何度か経験しても慣れにくい特性を持つ。コールズは、自閉症スペクトラム・オーストラリア(Aspect)との協力でチェーン店68店で「クワイエット・アワー」と呼ばれる彼らに優しい環境を提供したのである。

 

なお、このクワイエットアワーは毎週火曜日午前10時30分から11時30分まで実施されており、終日行われるものではない。もちろんクワイエットアワーは一般客もショッピングできる。

 

自閉性スペクトラムの人たちは、知覚情報処理の難しさがあり、音、光、臭い、触感、味覚刺激に圧倒されて混乱することがある。

 

これらの症状に対しいろいろな薬物治療が試みられているが、まずSSRIが挙げられる。例えばレクサプロ(エスシタロプラム)はこれらの感覚過敏を緩和する薬効を持つ。しばしば、海外で自閉性スペクトラムにセレクサ(シタロプラム)が用いられているのは、このような効果も期待されているからだと思う。ただし他のSSRIもそうだが、自閉性スペクトラム自体を大きく改善するわけではなく、2次障害を起こりにくくさせているだけなのでこれだけで完結するわけではない。そのようなこともあり、セレクサはたいして効かないという評価もされている。

 

セレクサに代表されるSSRI以外のこのような感覚過敏に効果があると思われるものを考えてみた。1つはデパケンがあると思われる。過去ログで広汎性発達障害にデパケンを投与すると何らかの良い効果が見られることが多いと記載している。デパケンはこれら感覚過敏を緩和しているように見える。また、平均的にはレクサプロよりデパケンの方が服薬しやすい。注意してほしいのは、レクサプロもデパケンも自閉性スペクトラムの適応はなく、適応外処方で使われていることである。

 

他、カタプレスやエビリファイもこれらの感覚過敏の緩和に、直接あるいは二次的に関与しているように見える。エビリファイは癇癪に効くとされているが、臨床的には感覚過敏を緩和し結果的に癇癪を起こしにくくしているように思われる。

 

昔からあるオーラップ、リスパダールなど抗精神病薬もドパミン神経遮断を通じて感覚過敏を緩和している。ただし、オーラップ、リスパダールは単に感覚過敏を緩和するだけに使うには忍容性の低い人たちには重すぎるという難点がある。

 

あと、ADHDの治療薬ストラテラも患者さんから感覚の鋭敏さがかなり解消したという話を聴く。ストラテラとコンサータは薬理作用的にオーラップ、リスパダールと逆の作用だが、少し異なるメカニズムで感覚の鋭敏さを緩和することで日常生活の困難さをやわらげているのだろう。(カタプレスを参照)

 

それ以外では、ラミクタールも不思議な薬理作用で自閉性スペクトラムの人たちの感覚過敏を緩和することがある。デパケンと同様抗てんかん薬に可能性がある傾向がある。イーケプラも自閉性スペクトラムに有効という臨床医がいるらしい。自分はイーケプラを自閉性スペクトラムをターゲットに使ったことはない(イーケプラは適応外で使うにはあまりに高すぎます)。

 

参考

カタプレス