炭酸リチウムの血中濃度の基準値について | kyupinの日記 気が向けば更新

炭酸リチウムの血中濃度の基準値について

リーマスは血中濃度を測定することで、適正な用量が処方されているかどうかがわかる。ところが、この適正な基準値が、検査施設やマニュアルなどで異なっていることがある。

 

普通、治療域上限は1.01.2mq/Lと記載されていることが多く、下限は0.40.6mEq/Lのことが多い。すなわち上下に0.2 mEq/L程の差がみられる。

 

治療域における有効血中濃度の明確な基準はなく検査会社でばらつきがあってもおかしくないと言う話だが、製薬会社は、

 

炭酸リチウムを処方した際にきちんと血中濃度を測定すること。(初期の増量中は1週間に1度を目途。維持期は23か月に1度)

 

1.5 mEq/Lを超えた場合、必要に応じ減量または休薬。

2.0 mEq/Lを超えた場合、減量または休薬。

 

と注意喚起している。臨床的には2.0 mEq/Lを超えている場合、「減量または休薬」ではなく、休薬が良い。また、1.5 mEq/Lの際も、しばらく休薬するくらいの対応が良いと思われる。

 

感覚的には1.3 mEq/L程度でもかなり重い印象を受ける。この重い印象とは、何らかの体調不良とか、見た目、患者さんが薬負けしているような印象である。自分の場合、1.3 mEq/L程度のオーバーの場合、副作用の程度にもよるが、200/日減薬して対処することが多い。(たとえば800㎎から600㎎に減薬)

 

リーマスの効果の出現は個人差があるが、0.31.2 mEq/Lの間で、一般には、0.41.0 mEq/Lの間で最も効果が現れることが多いとされている。つまり、上限の0.2 mEq/Lの差は個人差を考慮するかどうかだと思う。

 

逆に、0.3 mEq/Lといった低値でも十分に効果が出ている人がいてもおかしくないとも言える。

 

問題なのは、双極性障害の場合、1.0 mEq/Lギリギリで初めて効果が他覚的に実感できる人もいること。リーマスは副作用はあまりないものの全然効かないと思う人は1度は1.0 mEq/L程度で様子をみることを推奨したい。

 

このようなことから、リーマスという薬は治療域と中毒域が非常に接近していることがわかる。個人的に1.0 mEq/Lを推奨し、なお1.3 mEq/Lだと良くないと思うので、かなり微妙な差である。

 

リーマスの血中濃度は入院中は定期的に測定されるが、外来患者だと、そのあたりが疎かになりやすい。その理由は血液検査を嫌がる患者さんもいることや、検査代を支払いたくないために測定を拒否する人もいるからである。一応、血液検査は患者さんの任意のもなので(それどころか、外来は精神科治療自体が任意。医療観察法を除く)医師側から強制はできない。

 

ここで注意点として、定期的にリチウム血中濃度を測らずにリーマス中毒による重い副作用が残遺または死亡した場合、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない。(参考>医薬品副作用被害救済制度、NEW!

 

リーマスは必要な血中濃度測定がされずに処方されている薬の1つだと思う。