広汎性発達障害+うつ状態の亜昏迷 | kyupinの日記 気が向けば更新

広汎性発達障害+うつ状態の亜昏迷

過去ログに亜昏迷にはさほど疾患性がないという話が出てくる。今回は広汎性発達障害に伴ううつ状態の経過中、亜昏迷に至った女性の話。

 

亜昏迷になると、その程度にもよるが不注意、些細なことの失敗、物忘れ、不活発(思うように動けない)などが出てくるので、周囲の人もいつもとは異なることに気付く。人にもよるが、食事もあまり摂れなくなる。

 

入院が必要なレベルだと、とりあえず入院治療を行うほかはない。特に希死念慮が強い場合、どんなことでも起こりうる。

 

真の昏迷では動けない上に決断まで至らないので、一見、かえって安全のように見えるが、そうではない。

 

その理由は過去ログにもあるが、「昏迷」と「緊張病性興奮」はコインの表裏のようであり病態的に近接しているからである。位相が変わった瞬間、自殺既遂もありうる。

 

ある時、亜昏迷に入りかけた広汎性発達障害+うつ状態の女性患者が再診した。前回と著しく病態が変化しており、本人によると、希死念慮も強いらしい。また、ここのところほとんど食事を摂れていないという。周囲の人の話も全然頭に入って来ないし、テレビを観ても理解できないと言う。

 

また、身体的には振戦がみられていたが、これは昏迷ないし亜昏迷が、いわゆる「悪性症候群」の近縁の病態なので振戦が生じてもおかしくない。

 

そこで、まだ会話もなんとかできる程度だったため、外来でアナフラニールを行うことにした。過去にアナフラニールを実施したことがある患者さんだったので、副作用の程度も予測できるし、効果も十分に見込めると思った。

 

初日、アナフラニールの半アンプルと250mlのブドウ糖を1時間10分くらいで点滴し帰宅させた。

 

翌日再診したところ、驚くほど改善しており、本人も久しぶりに十分に食事が摂れたことや家事ができたことを喜んでいた。今後、2日に1度くらいのペースで点滴を続けるように勧めた。

 

なんと、亜昏迷だったのに、2週間後には職場に戻れたのである。

 

過去ログにはこのような病態では、単にブドウ糖の点滴だけでも有効と記載している。なお、このブログ的には一般的な悪性症候群の概念は存在しない。

 

(おわり)

 

参考

短期決戦に構える

悪性症候群の謎

悪性症候群の謎(補足)
アトピーによる精神病状態
リーマス中止による奇跡的病状安定についての考察
精神症状身体化の謎