漢方薬の製薬会社による微妙な相違について | kyupinの日記 気が向けば更新

漢方薬の製薬会社による微妙な相違について

患者さんの中に漢方薬を非常に嫌う人がいる。そのような人は、きっと漢方薬の服用感が悪いからであろう。

漢方薬の大手製薬会社はツムラとクラシエである。他にオースギなどもあるが、品目がかなり少ない。ツムラとクラシエだけでも断然、ツムラが多い。

ツムラはかつて漢方薬だけでなく、他の西洋薬も販売していたが業績が悪化し、一時、株価も著しく低迷していた。その後、経営的に漢方に特化することにより苦境を乗り切っている。

一時、漢方薬が保険適応から外されるような話が出て大騒ぎになった。署名活動なども行われ、今も保険適応薬とされている。今後、同じような話が出ても、当時のような危機にはなりにくいという話だ。

その理由だが、安倍首相や麻生太郎氏が漢方薬にかなり好意的だからと言うのには笑った。

精神科の漢方薬嫌いな人は散剤が全て嫌いな人と、漢方薬の臭いや舌触りが耐えられないという人にわかれる。僕はそのように言う人に漢方薬を強く勧めたりしない。その理由は、漢方薬はそういうものだからである。

定石的には、漢方はその人に合う場合、無味かやや甘い好ましい印象を持たれることが多い。飲む前から、嫌われているのでは話にならないと思う。

ツムラとクラシエ(旧カネボウ)の漢方薬は、必ずしも全く同じ成分ではないし、用量や用法、剤型も異なる。(一部、正露丸のように小さな粒状のものがある)。

今回、精神科では比較的出番が多い「補中益気湯」について、ツムラとクラシエの相違についてアップしてみた。



ツムラ41補中益気湯を開封している。このように錠剤を砕いたような粗い粒状である。



拡大するとこんな感じ。



これはクラシエ41補中益気湯である。ツムラに比べかなり小さな粒状である。味も若干異なる。



拡大画像。

実はツムラとクラシエでは個々の薬草?の種類がやや異なっている。ツムラ41では、

本品2包(3.75g)中、下記の割合の補中益気湯エキス(1/2量)2.5g を含有します。

日局オウギ 2.0g
日局ソウジュツ 2.0g
日局ニンジン 2.0g
日局トウキ 1.5g
日局サイコ 1.0g
日局タイソウ 1.0g
日局チンピ 1.0g
日局カンゾウ 0.75g
日局ショウマ 0.5g
日局ショウキョウ 0.25g
添加物として日局ステアリン酸マグネシウム、日局乳糖水和物を含有します。

と記載されているが、クラシエ41では、

本薬1日量(7.5g)中
日局ニンジン4.0g
日局ビャクジュツ4.0g
日局オウギ4.0g
日局トウキ3.0g
日局タイソウ2.0g
日局サイコ2.0g
日局カンゾウ1.5g
日局ショウキョウ0.5g
日局ショウマ1.0g
日局チンピ2.0g
上記の混合生薬より抽出した補中益気湯エキス粉末6,400mgを含有する。添加物として日局ステアリン酸マグネシウム、日局結晶セルロース、日局軽質無水ケイ酸、日局乳糖、含水二酸化ケイ素を含有する。

と記載されている。実は、ツムラでは蒼朮が使われているのに対し、クラシエでは白朮が使われている。これはどうでも良いように見えるかもしれないが、重大な相違だと思う。

より補剤的な薬草は僕は白朮と思うので、クラシエが正統派のような印象。

虚証に対する補剤は蒼朮より白朮の方が明らかに優れている。なぜ2つの大きなメーカーでこのような差が生じているのか謎である。

参考
漢方薬は生薬の数が少ないほど西洋薬のように効く話