高齢者とサインバルタ | kyupinの日記 気が向けば更新

高齢者とサインバルタ

現在、日本で最も処方されている抗うつ剤は、おそらく「パキシル連合軍」だと思われる。「パキシル連合軍」とは、

パキシル
パキシルCR
パキシルのジェネリック


である。2位はたぶんジェイゾロフトであろう。単品では、パキシルはジェネリックも売られている上、パキシルCRに変更された人も多いため、ジェイゾロフトが上回っていると思われる。

この2つのSSRIに次いで処方されているのは、サインバルタである。

サインバルタがリフレックスより使われるのは、サインバルタの方が臨床医の実感として強力なことと、不安にも効果が高いこともあると思う。リフレックスは不安に効果があるとされているが、サインバルタの方が効果が強い。(しかし、不安への効果はSSRIのレクサプロには及ばない)

副作用の面でも、リフレックスは過食、体重増加が出ることがあるのと、眠さがサインバルタよりは出やすいこともある。その点で、ややサインバルタの方が現代人向けである。

過去ログでは高齢者は食欲が増すことがプラスになることなどから、リフレックスの方が使いやすいことに触れている。リエゾンでは、高齢者へのうつにリフレックスはかなり便利である。

リフレックスで持ち上がらない高齢者のうつ状態では、サインバルタを使うことで軽快に向かうことが診られる。人によると、併用をする人もいるが、僕の患者さんに限れば、高齢者ではどちらか一方で十分な人が大半である。

高齢者はメランコリータイプで深刻なうつ状態を呈する人がおり、このような人はリフレックスでは十分な効果が得られない。高齢者に自殺が多い理由は、この重いメランコリータイプがしばしば診られることも関係している。

サインバルタを20mg程度処方し良好な経過になる高齢者では、その家族から、

以前より元気になったが、少し以前より短気になった。

とか、

元気だけど、いつもカリカリしている。

などの訴えがみられることがある。これはたぶん、サインバルタが少し重過ぎるためである。このような際、病状が安定していると、単純に減らしても問題がない人の方が多い。

20mgカプセルを飲んでいる人は、脱カプセルして10mgだけ処方する。そうすると、あら不思議、それまでのイライラ感が軽快するのであった。

そのようなことがあり、サインバルタは高齢者では10mg処方が続出する。(←言いすぎ)

それでも、かなり多いことは確かである。

認知症も合併しているうつ状態の高齢者では、メマリーを併用することで「性格の尖鋭化」のような所見が改善することも多い。

「性格の尖鋭化」とは、精神科ではよく高齢者に使われる精神所見で、例を挙げると、生来短気な人がいっそう短気になるとか、「くどい」人が更にくどくなるような状態を指している。

認知症が混入するうつ病の人は、サインバルタで性格面に悪影響が出たら、

①単純に減量する。

②減量しつつメマリーなどの抗認知症薬を追加する。

③デパケンRやセロクエルを併用した方が良いケースもある。


サインバルタでカリカリするのは、最も大きい原因はセロトニンを上げることだと思われるが、ノルアドレナリンも良くない要素になりうる。

リフレックスは、なぜかサインバルタより高齢者には自然な効き方をする。リフレックスがセロクエルのように鎮静的なのも関係があると思う。