面白いから診るというのでは体が持たない | kyupinの日記 気が向けば更新

面白いから診るというのでは体が持たない

先々週くらいから退院が相次ぎ、全体のベッドの使用率が93%まで低下していた。その後、入院が立て続けにあり、あっという間に99%まで回復した。ただ、1名を除いて新規入院患者をすべて僕が担当にしてしまったので大変な忙しさになったのである。担当にしてしまったと言うのは変だけど、なんとなく僕に診てほしいという感じが紹介状に出ていたのと、難しい患者さんは自分がやってみたいという気持ちが強いのが災いした。これでは体が持たない。

最近、痛感しているのは、「面白いから診るというのでは体が持たない」ということ。

このブログを見て、ぜひ僕に診てほしいと思う人もいるかもしれない。しかし最初から言っておくが、そういう希望は受けられない。理由はいくつかある。1つは、うちの病院では「kyupin=僕」であることは誰も知らないのである。もしわかると非常に困ることも生じる。理由はいちいち書かないから想像してほしい。

すごく遠方から患者さんが来院したとしよう。職員はあの患者はなぜうちに来たんだという話になる。ブログと関連付けられるのは時間の問題である。あと、そういう患者さんはこのブログを見ているような人なので、僕にも非常にプレッシャーがかかる。普通の患者さんではなく、いうならば「お客さん」なのである。僕にとっても、職員にとっても。

僕のところに偶然に来た従来の患者さんと比べて、そういう風に来た人を特別扱いで治療したくない。僕はどの患者さんも平等に治療したい。僕の感覚ではそんな風に来た患者に限ってうまくいかないような気もしている(伸び伸びと治療できない分)。

僕は状況にもよるが、全く家族に説明もせずに薬物の適応も無視して処方していることもある。遠来から来た患者さんであるからには、いちいち、その説明も必要になると思われる。その患者さんの家族も、そのくらいの覚悟で来ているだろうから。

遠来から来るような患者さんの場合、自分の子供はいったい統合失調症なのかどうかの診断を聞きたいと思う家族もきっといると思う。僕は告知しないタイプなのに、「どう答えればいいんだ」と言いたい。

数ヶ月前、僕の友人の家族を治療する機会があった。初診時は簡単そうに見えたのだが、いざ治療するととてつもなく難しかった。なんとか薬物療法の範囲で寛解させて、かろうじて満足できる病状で退院させた。入院中いろいろなことがあり、普通の患者さんの5人分の労力を使った。あれなら自分の親戚の方が断然楽だと思った。退院後の経過はまあまあ良いようなので、面目は保てた。(この治療の際に、生まれて初めての体験をした。これはいつか紹介したい)

この友人の家族を治療した時のストレスを考えるに、もし僕の匿名性が保たれなくなり、なにがしかの患者がうちの病院に来るようになったら、たぶん過労死するだろうと思う。

このブログは、僕の匿名性が保たれなくなった時点で、中止しようと思っている。そのくらいの気持ちなのである。今のこのブログで、僕のメッセージをみんなに伝えていくということで満足してほしいし、僕の気持ちも理解してほしいと思っている。