カッコーの巣の上で | kyupinの日記 気が向けば更新

カッコーの巣の上で

かなり古いが、「カッコーの巣の上で」という精神科病院を描いた映画がある。僕は最初は映画館で観た。ジャック・ニコルソンが主役だ。映画の内容はもうおぼろげしか覚えていないのだが、鬼のような婦長さんが出てきて、この人がいわゆる精神科病院の権力の象徴のように描かれていた。基本的に、このようなパターンはアメリカ映画にはよくみられると思う。(例えば「エイリアン」。グレートマザー風味)

 

この映画の中で、なかば懲罰的に電撃療法が行われる場面が出てくる。何回も繰り返し電撃療法を行われたために、ある患者は魂の抜けたような痴呆状態になってしまう。(今で言う「認知症」だけど、この言葉の方がリアリティがあるので) この場面をジャック・ニコルソンは見ていたのだが、後に、彼も同じような処置をされるのである。

 

この場面を検証すると、連続で毎日のようにダブルで電撃療法を行うと、あのように魂が抜けたようになってしまうのは事実だ。しかし、痴呆のままであることはない。数週間ないし数ヶ月はあんな風だが、やがて回復し復活する。だから古典的な痴呆の意味とは異なっていると思う。むしろ痴呆よりも心配しなければならないのは、「症候性てんかん」などの後遺症の方である。あんな風に乱暴に電撃療法を行うと、脳に器質的なものが刻み込まれるからだ。

 

しかし僕が今まで診た範囲では、ずっと昔、雨、アラレを通り過ぎて台風並みに電撃療法を行われた患者が、けいれんを起こして困ったようなことはほとんどない。精神科病棟では、水中毒なる副作用というか病態があり、けいれんが起こりうるが、電解質異常が由来なので電撃療法が原因とは言い難い。むしろ器質的な色彩の精神症状が残遺していて、この方が過去の電撃療法の既往を感じさせる。

 

一方、数回、電撃療法を特にうつ病圏の患者に行った場合、ほとんど有害作用がないように見える。僕がうつ状態で、もう死にたいと思うようになったら、誰かに電撃療法をしてもらいたいと思う。なぜそんな風に思うかと言えば、SSRIとか3環系抗うつ剤は、薬に弱い自分に継続は難しいと思うから。うっかり、よくわからないうちに死にたくはないからである。

 

ところで、ジャック・ニコルソンだけど、この「カッコーの巣の上で」とか、「シャイニング」とか、ああいう役柄はうってつけというか、はまり過ぎていると思う。実際、彼の妹さんは、アルコール依存症か何かで自殺されているらしい。アルコール依存症は、あんがい自殺が多い。他、事故死や突然死など、よくわからない亡くなり方もわりと見られると思うのである。