「…何しに来たんだよ…」
お前の顔なんか見たくない…
からかいに来たのか?
惨めな男を 笑いに来たのか…?
「…随分だよなぁ…見舞いに来てやったのに…
昨日 駅前でバッタリ おふくろさんに会ってさ
お前どうしてるのかって聞いたら 実は…って…
おふくろさん 弱ってたぞ
いい歳して 親に心配かけてんじゃねえよ」
説教ならやめてくれ…
「…俺がどうなろうと お前には関係ない
放っといてくれ…」
俺は ゴロンと背を向けた
「…何グズグズ悩んでんだよ…ソンミナか…?」
その名を聞いて 胸の奥が ギューッと締め付けられた
今の俺には 辛すぎる…
なのに その名を聞けば 矢も楯もたまらず
会いたくて…会いたくて…
「…ソンミナ…どうしてる… 元気なのか…」
ただ 知りたかった…
キボムの口からでもいい… 知りたかったんだ
「…そんな事 自分で調べりゃいいだろ?
電話しろよ…俺に聞いてどうする?」
キボムの返事に カチンときた
「…俺に教える気はないって言うのか…?
自分だけのものだと…?」
俺には 知る権利もないのか…
キボムは 怪訝そうな顔をした
「…お前…ソンミナはお前になんて言ったんだ?
俺とのこと どう聞いてるんだ…?」
それを言わせるのか…
「…もう 苦しい恋はしたくないって…
自分には 自分に合った人がいるって…
それがお前だって…」
言葉にしながら 改めて打ちのめされる思いだった…
「ほーっ、それがホントなら 今すぐ迎えに行かないとっ!
俺には そんな事 一度だって言ってくれないけどな…」
「…えっ…?」
… どういう事なんだ …?
キボムは ニヤっと笑って 椅子に座ったまま
クルクルと回った
「お前たち ホントめんどくさい奴らだよ…」
そう言って 意味ありげに笑った
「…どういうことだ…?」
イラっとした…
「確かに 俺 初めてソンミナに会った時から
ビビっときてたよ
一目ぼれってやつ?
同じ人種だっていうのも すぐわかったし…」
そうだったのか…キボムは あの時からもう…
「でさ、それから猛アタックだよ
ところが あの子 結構ガード固くて…
食事の約束取り付けるのに どれだけかかったか
それもランチだぜ?
一回のランチに あんなに粘ったの初めてだよ!」
そう言って キボムは笑った
「会ってみてさ ホントにいい子で
俺 、絶対付き合いたいって思ったんだ…
でも 初めて会った時のお前の姿見て
こいつら何かあるって思ってて…聞いてみたんだよ
キュヒョナと 付き合ってるのか…って」
「…ソンミナ…何て…?」
聞くだけ無駄か…
「真っ赤な顔して
僕の片思いだから…ってさ
キュヒョナは 普通に女の子が好きなんだ…って
あれ お前を守ろうとしたんだろうな…
健気だよな…」
ソンミナ… 君は…
「俺さ、彼氏いないんなら付き合おうって言ったんだ
そしたら いるって言うじゃん
えっ? 可愛い顔して まさかの二股かよって
びっくりしたよ!」
「そういう言い方は やめろっ…!」
ソンミンが侮辱されてるようで 堪らなかった
「まあ、まあ…そう興奮するなよ
で、ドンへだっけ?
奥さんいるんだよな?
もう 踏ん切りが付いてるのに 言い出せないらしくて
なんて言えばいいのか…って悩んでてさ
お前は 何て言ってるのか…って聞いたよ
そしたら 寂しそうな顔してさ
電話もないんだ…って…」
あの頃だ… ソンミンから求めて欲しくて
意地を張ってた…
「電話なんか こっちからすればいいじゃんって言ったよ
そしたら 僕はキュヒョナを好きになっちゃいけない
だから 僕からは電話もメールもしないって決めてる…って
お前からメールが来ると うれしくて泣きたくなるって…
なんで 俺がそんなの聞かされるわけ?
でもさ、そん時のソンミナの横顔が キレイでさ…」
冷たく凍りついた心臓が
ドクン、ドクンと 音を立てて動き出す…
ソンミナ…俺は なんて馬鹿だったんだろう…
君は そんなに 俺を求めてくれてたのに
何も気づかずに…
「ソンミナ ドンへとの恋が苦しかったんだろうな
もう 恋はしないって言ってた…」
その言葉に 俺は ギュッと胸が締め付けられた
ソンミンの寂しさが 染み渡ってくるようで…
キボムは 腕組みをして
遠くを見て 言った
「でも あれは嘘だな…
もう恋はしないなんて言ってたけど
恋してる目だったよ
だから 正確に言えば
もう恋はしない この恋以外は…ってことだ
お前を愛して 一生愛し続けて
そうやって 人生を終えていく気だよ
お前 わかってんの?
どれだけ愛されてんだよ…!」
キボムの言葉を 繰り返し 繰り返し
頭の中に巡らしながら
俺は 自分の想いで 心がいっぱいだったことに
今頃やっと気づいていた
ソンミナ…君は ずっとそうやって
俺を求めながら 愛を与えてくれてたのに
こんな俺で 本当にごめん…
熱い涙が 頬を伝った
カッコ悪くても みっともなくても
誰が見ててもいい
ドロドロに澱んでいた 心の中の澱を
洗い流してしまえるのなら…