電話の声に 胸が高鳴る




「…ソンミナ…俺…」



言葉が出てこない…



「…うん…」



彼も 同じなんだろう…




「あの…昨日は…ごめん…」


謝って済む話じゃないのは わかってる



「…うん…」


君の心が 見えない




ミナが 心配そうな顔をして じっと見つめている




「ソンミナ… 今… 」


つい 口ごもった



「…独りだよ…」


接待は 本当だったのか…



「…あの… ミナが… ソンミナに 会いたいらしくて…


 これから 会えないかって…」



「・・・・・・・」



ソンミンは 黙っていた



「…時間無いかな…?」


気まずい思いで 問いかけた




「…それが言いたくて かけてきたの…?」


ソンミンの声が 俺を責めるように響く



「・・・・・・・・」


今度は 俺が何も言えなくなった




「…ミナさんのためだったんだね…


 勘違いするとこだった…」



責められても 仕方ない…


俺は 何も答えられなかった




「いいよ… こっちまで来てくれる?


 駅前のコーヒーショップでいい?」


彼は 色のない声で そう言った




「ごめん…ありがとう…」


俺は それだけ言うと 電話を切った




伝えられないもどかしさに


心はギュッと絞られるように…


それでも 彼に会える


それだけで 胸が熱くなる


馬鹿だな… なら何故あんなこと言ったんだ…




「…ソンミンさん 何て…?」


ミナが 俺を覗き込む



「会うってさ… 行こう…」


俺は 立ち上がると ミナを待たずに外へ出た


心は 彼のもとへ… 


今すぐにでも会いたくて ただその姿が見たくて




地下鉄に乗って ミナと二人揺られて


彼に出会う前なら 心震える時間だったはず


でも今は…


ソンミナ… なぜ君が こんなに好きなんだろう


振り向いてもくれない


苦しい恋


それでも 君が好きだ…




駅に 降り立つと すぐ目の前のコーヒーショップ


窓際の隅に 彼はいた


急に 息が苦しくなる




「ごめんなさい、ソンミンさん…


 せっかくのお休みなのに…」


ミナが 先に声をかけた



「ううん、どうせ一人で退屈してたから…」


ソンミンは 柔らかく微笑んだ



ソンミンの向かい側にミナ その隣に俺


それぞれが 自分のカップを見つめて


話しあぐねていた





「…あの…ソンミンさん…


 この間は ホントにごめんなさい…


 私 失礼なことを…


 酔ってたから…なんて 言い訳にならないけど…


 本当に ごめんなさい…」


ミナが 深々と頭を下げた





「…ううん、僕なら 何も気にしてないから…


 謝る必要なんてないよ…」


ソンミンは 優しい声で言った




「でも、ソンミンさんが あんな風に言ってくれて


 私 やっとで前を向けたの…


 自信がなくて、見えないものに嫉妬して…


 そんな私に ソンミンさんが力をくれた…」


ミナの言葉を聴きながら


ソンミンの表情を そっと盗み見ると


うっすらと微笑む いつもの顔があった





「私 もしドンヘが浮気してたとしても


 それは ドンヘだけの責任じゃないと思う


 もちろん 相手の人のせいだけでもない


 私だって 少しは責任あると思うの…」


ミナは そう言って コーヒーを一口飲んだ



「ドンヘが 早く帰ってミナに会いたい…って


 そう思ってくれるような そんな女性になる


 もっと綺麗になって 優しくなって


 お料理も勉強する…


 そう思ったの…」




「…ミナ…」


ミナの言葉に 胸が痛んだ


ソンミンは 俺の比じゃないだろう





「私 ドンヘが好き…


 今は 愛されなくてもいい…


 でも ドンヘの帰る場所になりたいから


 あきらめない…」


そう言って笑うミナの顔は 綺麗だった





強がりじゃない…  本気なんだな…


こんなに愛されるドンヘって男は


只者じゃないんだろう…


俺は やっぱり勝てないのか…





いや、ミナの言葉は 


俺の進むべき道でもあるんじゃないか…?



ソンミンの 帰る場所になりたい


今は 愛されなくてもいい…



彼の顔を そっと見つめた






「…ミナさん…


 ドンヘは 必ずミナさんの所へ帰ってくるよ…」



ソンミンが ポツリとつぶやいた


ソンミナ… 君は…





「今は 仕事のことしか見えないんだ…


 ミナさんの大切さに 気付けてないんだと思う


 でも 本当の幸せをくれるのは 仕事じゃない


 きっと ドンへも…気付く時が来るから…」





ソンミンは そう言った 


仕事… 自分を仕事に置き換えてる


そうだね…?





「ソンミンさん、ありがとう…


 ホントに ソンミンさんって 優しい人ね…」


ミナが 無邪気に微笑む





「ミナさん…ドンヘ ずっと仕事しか見てなかった


 仕事の方も ドンヘを必要としてて


 放してくれなかったんだ


 でも そろそろ 仕事が落ち着いてきてる


 きっと ドンへを 解放してくれるはずだから…」




ソンミナ… それって…



ゆっくりとコーヒーを飲む 彼の唇を


じっと見つめながら


言葉の裏側にある 彼の心の動きを 


俺は 測ろうとしていた…