何で そんなこと言ってしまったんだろう…


俺といると 癒されるって そう言ってくれたのに


それだけが 君にできることなのに…





「…キュヒョナ…僕のこと軽蔑してるんだ…」


ソンミンは 立ち止まって 真っ直ぐ俺を見た



「…そんなんじゃない…違うんだ…ごめん…」


俺は 彼の顔を見れなくて うつむいた



「僕こそごめん…


 キュヒョナの好意に甘えて 調子に乗ってた…


 僕のことを そのまま ありのまま


 受け入れてもらえてるって


 勝手に思い込んでた…


 ごめん…嫌な思いさせて… 


 君の友達に色目をつかったつもりじゃないんだけど


 不快だったんだね…」


ソンミンは 淋しそうな顔をして ため息をついた





「違うっ…本当に違うんだ…」


俺は ソンミンの手を取った


その手は すぐに離された



「…大丈夫 こういうの慣れてるし…」


うっすらとした微笑みは 心を隠すためのもの



「…ソンミナ…誤解だよ…傷つけたなら謝る


 でも 本当に違うんだ…」



「…うん、わかったよ…もうここでいいから


 あとは自分で帰れるし…」


ソンミナ… 行かないで…


心の中の叫びは 声には出来なくて


ただ君を見つめて 立ち尽くすだけだった





「…じゃあね、キュヒョナ… 今日はありがとう…」


小さく手を振って 柔らかく微笑んで…


背中を向けた君が 遠ざかって行った






何であんなこと言ってしまったんだろう…


後悔しても しきれない


俺は どうしようもない奴だ…




どんな気持ちで 電車に乗ってくんだろうか


どんな気持ちで 真っ暗な部屋に帰るんだろうか…


ソンミンを想うと 堪らなかった


それでも あと一歩が どうしても踏み出せずにいた








新しい一週間が始まる 月曜の朝


ソンミンに メールを送った




『おはよう 昨日はごめん また会える?』



返事はなかった…




一気に気持ちが塞がった


まるで もう人生が終わったかのように…


それでも 行かなきゃいけない


重い身体を引きずるように 大学へと向かった






何をしても 何を見ても 何を聞いても…


ソンミンのことが思い出されて


何も手につかない


いつの間に こんなに好きになってしまったんだろう…






昼休み 学食でぼんやりしていると メールが届いた




…ソンミンからだ…!



ドキっと鼓動が跳ねる




『昨日はありがとう お母様によろしくね また会いたいね』





俺は スマホを握り締め グッとガッツポーズをした


ソンミンが 会いたいって言ってくれた…


こんな俺に 会いたいって…


あんなこと言った俺に 会いたいって…


泣きたいくらいだった






今夜会いに行こうか…ちょっと早すぎるか…


あからさまに ウキウキと浮き足立つ自分が 


何だか滑稽で


ホントに好きなんだなあって 


他人事のように笑えてきた




ジェットコースターのように 上がったり下がったり…


これが恋なんだろうな


今すぐにでも会いに行きたい


そんな想いで 胸がギュッと締め付けられるようだった






そんな時に限って こうなんだろうか…


その日は 教授のオペに急遽呼ばれて 


見学することになった



あくる日も そのあくる日も…


資料の作成や レポート提出とか…


この週は 何故かいろんな事で 


身動きが取れなくて


もう週末まで 時間が取れそうもなかった



その間 ソンミンには 電話やメールで連絡を取ったが


彼も忙しかったのか


電話には 出ることはなかった


メールの返事は 必ずくれたが 


いつも日付が変わる頃だった


他愛のない 俺のメール





『今日は 疲れた…』


『今度 カラオケに行かない?』


『母さんが 会いたがってる』





ソンミンから来ることがないのが 


唯一気になるところだけど


欲を言ったらバチが当たる


必ず返してくれてるじゃないか…


贅沢言うな…





週末 ソンミンを誘ってみた



『土日 時間ある?』



返事が来た



『わからない…無理かもしれない…ごめんね』





もう 一週間の疲れがどっと押し寄せてきて


俺は ベッドに倒れこんだ


会いたいのに 会えない… 一目顔が見たい…


一目… 


そうだ そうしよう…


一目見るだけで 帰ればいいじゃないか





俺は コートを羽織ると 家を飛び出した


分別のない子供のように


ただ 自分の欲望のままそのままに


したいからする


後先考えず…




こんな自分がいたことに 今更ながら驚いていた