ナイトマーケットでの撮影は終わり
全員で ホテルへ帰った
帰りの車は ドンへとソンミンが隣同士
いいんだ 今はそれでも…
この後 俺たちは…
急に 緊張してきた
あぁ ダメだ…苦しい…
何だか もう 胃のあたりが おかしくなってきてる
閉じ込められた生き物が のたうつ感じで…
部屋に着いて ソンミンが先に入り 俺が後ろ手にドアを閉めると
カチャリ…と ロックがかかる
これから 起きようとしていることへの期待が 俺を押しつぶそうとする
ソンミンは すぐにバスルームに入って行った
えっ… もしかしてシャワー…?
あ、やっぱりそこまでイク…?
…だよねぇ…中学生じゃないんだし…って 俺 中学生と変わんないかも…
やばい 大丈夫か 俺…?
あ、胃が痛くなってきた…緊張してきたよーっ!
いや、いや その前にキスだよ…
あ、肉食っちゃったし… 歯磨かないと…
あん? もしかして ソンミン歯磨いてるのかも…
なぁんだぁ~ びっくりしたぁ~ だよねぇ いきなりねぇ…
…いや待てよ、 『欲しかった』 って言ってたしなぁ…
あぁ、どうしよう…緊張しすぎて 気持ち悪い…
カチャリと バスルームの扉が開いた
「あ、ごめん お先…」
ソンミンは 何事も無かったかのように 椅子に腰かけた
俺は 慌てて歯を磨きに行った
シャワーは 浴びてなかったな…
ホッとしたような がっかりしたような…
やっぱ歯磨きか… まあ、エチケットだもんな
別に そのままでもソンミンならOKなんだけどなぁ…
鏡の中の俺は 若干青白く見えた
やっぱ極度の緊張のせいか…
でも 何か余計にクールな感じに見えないか?
ニヤっと 得意の顔を作ってみた… いいじゃん、いいじゃん!
大きく一つ深呼吸をして 前髪を整えると
バスルームのドアを開けた
ソンミンは コーヒーを飲んでいた
俺たちのファーストキスは コーヒーの味か…
「…ヒョン…」
俺は ソンミンの手を取った
ソンミンは 一瞬俺を見上げたが すぐに立ち上がった
俺は ベッドの方へ誘おうと その手をクイッと引っ張った
「…あっ…!」
その拍子に よろけたソンミンが 俺の腕の中に倒れ込む
柔らかい身体を 抱きとめて 支えると
ソンミンは 俺の胸にすがり
戸惑いながらも 俺を見上げた
そのまなざしに 堪え切れず
俺は ソンミンの美しい頬に そっと掌を添えた
ソンミンは ゆっくりそのまぶたを閉じた…
ついに その時が来たんだ…俺の 大切な宝物
胸が苦しいくらい ドキドキと鼓動が高鳴る
形のいい その薔薇色の唇に 俺の唇を 重ねようと
近づいた時…
「…うっ…!…んんっ…ちょっ…ごめっ…!」
突然 胃がねじれるように痛くなり 何かがこみ上げてきた
俺は 咄嗟に トイレに駆け込むと
胃の中のものを すべて放出した…
マーライオンか…? っていうくらいに…
はぁ…はぁ…はぁ…
「キュヒョナ、どうしたの? 大丈夫? マネージャー呼ぼうか?」
ドアの外で ソンミンが心配してくれてる
「…大…丈夫です…たぶん…」
あ、やっぱだめ…
もう これ以上出すものがないってくらい 胃を絞るように
俺は 嘔吐した
ぁ…はぁ…はぁ…
「大丈夫じゃないよ、悪い病気だったらどうするの?
今 マネージャー呼んでくるから 待ってて…!」
ソンミンは そう言ってどうやら出て行ったみたいだ
ごめん… こんなはずじゃなかったのに…
あうっ…! 今度は… お腹が… はぅっ…!
…神様…俺 何か悪いことしましたか…?
こんな肝心な時に 大好きな人の目の前で とんだ醜態を…
もう 泣きたい…
ほんとなら 今頃 上手くすれば ベッドの中だったかもしれないのに
何で 便器の上なんだよ!?
俺の 大バカ野郎っ! もう、 嫌われたらどうするんだよ…
あああああああっ… おなか…いたい…
猛烈な痛みと格闘して 俺はもう 全身の力が抜けていた
キス… 俺のキス… 俺とソンミンのキス…
また 幻になってしまったのか…
してはいけないっていう事なのか…?
イケナイところがあるのなら きっと直します
だから 俺の たった一つの願いを 叶えて下さい… 神様…!
「軽い食あたりだそうだ…点滴して あとは薬飲んどくようにって…」
マネージャーの言葉を聞きながら
病院のベッドの上で 俺は朦朧としながら 頷いた
食あたりって…何食べたっけ…
…あっ、 肉っ!
シウォンが 食べさせてきた あの串刺しの肉の塊!
おのれーっ! よくも 俺のキスを邪魔しやがったな! 許せないっ!
…あ、いたい…おなかいたい…
気が付くと 俺はそのまま 眠っていた
今夜は ここで泊まるのか…?
せっかく ロマンチックなホテルの部屋で
ソンミンと 一夜を過ごせるはずだったのに…
ついてない…
俺は 点滴の針が刺さったままの腕を 恨めしげに見つめた
ソンミン どうしてるかなあ
心配してくれてるかなあ
一人で 淋しくないかなあ
淋しいって思ってるのは この俺か…
会いたい…
もう一度 この腕の中に 抱きしめたい
そして…
ソンミンの柔らかな身体を想い出しながら
俺は そっと目を閉じた…