異国の夜は 心を浮き立たせる


ナイトマーケットは 何だか嗅いだ事のない匂いがあちこちからして


興味をそそるものばかりだったが


今夜ばかりは そんなものはどうでもよかった



『…帰ったらね…♡』



あぁ…耳の奥に 甘い声がこだまする…


起きてはいけないものが 起きてきそうで なるべく考えないようにした




しっかりメイクされたから おかしいと思ったら


ただの観光じゃなくて カメラが回っていた


韓国以外 どこも知らない俺たちが 


初めての土地で 初めての人と会い 初めてのものを食べる


カルチャーショックを楽しみながら 俺たちの素顔を知ってもらう


まあ、そんなとこか…?



人ごみの中を歩きながら


ソンミンの手を ドンへがしっかり握ってる


はぐれないように 守ってるみたいだ


イェウクは 安定のべったり…


手を肩に回したり 腰に回したり


リョウクが 後ろから抱きついたり…


で、 俺とは… はぁ、やっぱりそうですか…


いろんな屋台を回って 何だかわからないけど美味しそうなものを食べる


シウォンは 串に刺した肉の塊を 俺に差し出した



「キュヒョナ…はい、あーん…」


いいよ~、そんなのやめて~! 


…いや 仕事、仕事…シウォンだってホントは…


そう思うと ふっきる事が出来た



「…あーん…」



やってみれば なんてことはない… 


今となっては ソンミンと組まなくてよかったと思う


普通の顔が できる気がしない…


そんな顔 人に見せたくない…



ちらっと のぞき見るように ソンミンを見ると


今まさに ドンへの口に お菓子のようなものを入れようとしていた


二人は まるで新婚旅行に来たカップルのよう



目を丸くして 小首を傾げドンへをのぞき込む


『美味しい?』 って 訊いてるんだろうな…


ああ、 やっぱり見たくない…




あっ、 誰か 今の俺の顔 撮ってないよね…?


ヤバい… 油断してた…


またきっと ストーカー扱いだよ…ファンが減るし…




最後に全員で 大道芸を見物した


マジックとダンスが 一体になったような…


一瞬引き込まれてふと気付くと いつの間にか 隣にソンミンがいた


一心に 見入っている


俺も 目線は大道芸人に向いてるものの 


心は すっかりソンミンに奪われてしまっていた



腕と腕が 触れ合う…


柔らかい感触に ドキドキする


思い切って指を伸ばすと ソンミンの指に触れた


ちらっと ソンミンが俺の顔を見たかと思うと


その小指が 俺の小指に そっと絡まった


二人の身体の陰に隠して 見えないように そっと…


ドキドキ 心臓が音を立てるのが 聞こえてやしないか


そんなはず無いのに 気になって


思わず 深呼吸した




カップルってなんなんだろう… 最近じゃ へミンが一番人気だそうだ


確かに 見た目の美しさはあるだろう…


ドンへの男らしさが際立つ…って言う人もいる


ソンミンが ドンへを見つめる目が 恋する目だって言う


違うのに… 俺が これから本気のキスするんだから…



『キュヒョナが 欲しかった…』



『欲しかった』 …って言われたんだから!


『欲しかった』 …だよ!?


はぁ~ん…♡  俺 どうしよう…!?




全世界に キュミンこそがリアルだって 叫ぼうか…?



…いや、違うんだよ…俺 そんなことしたいわけじゃない


こうして 誰にも見えないところで 固く繋がっていたい


俺と ソンミン  二人だけが分かっていればそれでいい


誰に知られなくてもいい


大切にしたいんだ… 


心ない言葉に傷ついたり 無遠慮な視線にさらされたくない



それが 俺のリアル…



柔らかくて 愛しくて … まるでソンミンそのもの…


そんな小指を 全身全霊で愛するように 


自分の指に 力を込めた