「お先…いいお湯だったよ ソンミナも 入っておいでよ」



キュヒョンの声に 現実に引き戻される


「…あ、うん そうする…」


僕は 動揺を悟られまいとして 顔を背けた



湯船につかって ぼんやりと考える


彼が このソウルに来るってことなんだ


会いに行きさえすれば 必ず会えるんだ…


あんなに 会いたくて 会いたくて 苦しくなって


忘れようとして 忘れられなくて…




僕は 彼に会いたいんだろうか…


ヒョクチェは きっと会わせたくなくて 隠したんだろうな


会ってどうする…?


何を言う…?



『久しぶり…元気だった…?』 そんな軽いものじゃない


『僕を置いて行くなんて…!』 今更怒ったって…


『僕の事 どう思ってるの?』 そんなこと聞いてどうする…?


わからない…会いたいのか…会いたくないのか…


それでも 確かめたい


何故 何も言わずに行ってしまったのか?


僕の事を愛してるって言ったのは 全部ウソだったのか?


…僕に会えて うれしいのか…?


だけど それは 何のため?



自分で 自分が分からなかった…


恨みごとなのか…未練なのか…期待なのか…





のぼせそうになりながら お風呂を出ると


キュヒョンが 待ちかねた様子だった


「ずいぶん遅かったね、心配で 見に行こうかと思ったよ…」


「ごめん…疲れて寝ちゃってた…」


僕は 嘘をついた


「そんな事じゃないかと思ったよ… 危ないから 気をつけないと…


 今度から 一緒に入らないとダメだな…へへ♡」


キュヒョンが笑った… その顔が可愛くて 胸が痛かった


キュヒョンがいるのに 何をグラグラしてるのか…?


もう 過ぎた事じゃない… 会う必要なんてない…


そう自分に言い聞かせた




「ねえ…キュヒョナ…ギュってして…」


僕は キュヒョンの胸に 頬を当てた


「…どうしたの…ソンミナからなんて…うれしいけど…」


キュヒョンが 戸惑っていた


「今夜は 満月だから オオカミになる…」


「…誰が?…」


「…僕が…」


「…うっ、カワイイっ…! ダメっ、 無理っ!待てないっ!」


キュヒョンが 突然覆いかぶさってきた…




これでいいんだよね… もう これで…


キュヒョンの 熱いキスを 全身で受け止め


赤い花びらが 散るような 痕が


愛しさとともに 増えて行く…


二つの身体が 互いを求め合い 絡み合い


溶け合った


今この時がすべて…


抱き合った腕の中で 互いの名を呼び合い


この世界に たった二人きりしかいない


そんな 快感の頂をめざして 昇り詰めて行った…







甘い痛みと 切ない悦びに満たされて


二人 指をからませながら息を整えていた


「ソンミナ…俺の事 好き…?」


「うん、好きだよ…」


「俺も ソンミナが好きだよ…離さない…ずっとそばにいる」


キュヒョンは 僕のおでこにキスをした



彼だって 同じ言葉を僕にくれた


でも 黙って 自分から離れて行った


何を信じたらいいの…?


心の中は すきま風が吹くようだった


やっぱり 確かめたい…


何故 あんなに愛してくれてた僕を


簡単に捨てる事が出来たのか…



気が付けば 安らかな寝息を立てて


キュヒョンが眠ってる…


キュヒョナ…好きだよ…愛してる


でも このままじゃ 僕は 先に進めない


どうしたらいい?


嵐が過ぎるのを やり過ごすようにじっとしてるべきかもしれない


キュヒョンの為には そのほうが…



まだ少年のようにも見える 可愛い寝顔をみながら


自分がしようとしてる事の 罪深さを思った




キュヒョナ…君の寝顔はシロツメクサの花のよう


飾らない純粋さが 懐かしくて 愛しくて


裏切ることはできないと 


胸が キュッと痛むんだ…