夜になり 心のざわつくのを抑えて
俺は ソンミンの部屋をノックした
「じゃあ 行こうか…」
ソンミンは 桜色のシャツが顔色に映えて
良く似合っていた
「…キュヒョナ…ごめんね…」
ソンミンが 今にも泣きそうな顔をして 言った
「…何が? 俺が言いだしたんだろ?」
無理やり 笑顔をつくってみた… 俺 上手くなった気がする…
フッ…おかしいよな…
二人車に乗り込む
これが 夜のドライブなら
君を どこへ連れて行こうか…
「…キュヒョナ…何で 僕をハンギョンのところへ…?」
ソンミンが ぽつりと言った
「…ソンミナを喜ばせたくて…ゆっくり話したかったろ?」
それは 嘘じゃない…
「キュヒョナ…」
ソンミンは 俺を見つめていた
その視線を 痛いほど感じながら ただ国道を走った
「俺のことは 気にしなくていい…不幸だとは思ってないから」
それも 嘘じゃない…
今日ここへ来るのは何度めだろう…
ハンギョンの部屋が見えた
「ソンミナ…行っておいで…」
俺は 心に蓋をして そう言った
「キュヒョナ…行っていいの…?」
ソンミンは じっと俺を見た
「何で 俺に聞くの? まさか 俺を恋人だと思ってる?
思ってないでしょ?
責めてるんじゃないよ…分かってた事だし…」
ソンミンは 睫毛を伏せて しばらくじっと考えていたが
心を決めたように ドアを開け 車を降りた
桜色の背中が だんだん遠ざかる
…行くな…
声にならない声を抱きしめて
その背中を見つめていた
階段を上る君… 何を考えてるの?
その胸は 震えているのか…
カッコ悪いな 俺…
強がって 紳士ぶっても
心の奥の俺は ただの無力な道化師
ドアを開け 君の姿が 消えた…
放心したように
運転席のシートに 身を沈めると
身体の奥から ひたひたと 何かが押し寄せてくるように
熱いものがこみ上げ
景色が 見る見る滲んでいく
…泣くなんて…
いいよな… 今夜ぐらい…
俺はその場を動く事も出来ず
ただ明かりのついた部屋を いつまでも見つめていた
「・・・・・・」
漆黒の夜に 吸いこまれるように
部屋の明かりが 突然 消えた…
俺は きつく瞼を閉じ そっと開けると
ひとつ 溜息をついた…
エンジンを掛け 静かに車を出し…
後のことは よく覚えていない
ただ 眠りたかった…
何もかも 彼方へ消し去って 俺を暗闇に沈めてしまいたい
何も見えない 何も聞こえない そんなところへ
俺を連れ去って欲しい…
そう思ったんだ