一つの傘に 寄り添いながら 二人は 玄関のドアを開けた



「キュヒョンさん います?」


ソンミンに呼ばれて 俺は急いだ


「いらっしゃい…あいにくの雨ですね」


「うん…雨男だから…」


彼は ククっと笑った



「あの…そちらは…?」


さっきから気になっていた 痩せた男は


近くで見ると 結構筋肉質で いい身体をしていた


「あ、ごめんなさい…こちらは イ ヒョクチェ 僕の大切な人」


大切な人…


心臓が キリっと痛んだ



「…バカっ…! ヘンな言い方するなよ…!」


痩せた男は 顔を真っ赤にして ソンミンを小突いた


「えっ…? ヘンな言い方だった…?


 だって ヒョクは 僕の一番大切な親友だもの…」


ソンミナ…君って 天然系なのか?


とにかく 何だか ホッとした…


この気持ちは どう考えても… いや、そんなはずない…


俺は 頭の中の考えを 追い払うように 首を振った




「キュヒョンさん 荷物運んでいいですか?」


ソンミンが 言うのを 不思議な思いで聞いた


「…でも トラックまだ来てませんよ…」


「…あの、 この車で運んできたんだけど…」


ソンミンが 指差した先には


あの痩せ男が運転してきたバンが 停まっていた


「えっ…? あれに全部乗ったの?」


「悪いかよ…?」


急に 痩せ男が突っかかってきた


「悪くないけど…ごめん…失礼だったとしたら謝ります…」


俺は 正直悪気があったわけじゃない


ただ単純に 疑問に思っただけだ…


リョウクの引っ越しを見たばっかりだったから


同じ引っ越しなのに…って



「僕 あまり荷物ないから…」


ソンミンは ちょこっと首をすくめて見せた


「じゃあ 俺運ぶから…」


痩せ男…じゃなくて ヒョクチェが 車に戻った


「俺も 手伝います…」


雨の中 俺も外へ飛び出した




車の中には 大きめのスーツケースと


段ボールが二つ


そして 布団がひと組


あと ギターケースがひとつ…


たったそれだけだった



「これで 全部なの…?」 俺の問いかけに


「そう…これで全部…簡単でしょ?」


ソンミンは クスッと笑った



荷物は 空いた部屋に運び込んだ


俺の部屋の 斜め向かい…


ドンへの向かいで リョウクの隣だ


ヒョクチェが 布団を運び


ソンミンは スーツケースを運んだ


俺は 遅れてダンボールを運び込もうとした


部屋に入ろうとした時



「…ヒョク、大好き…」



そう囁く声がして 俺の目には


ソンミンが ヒョクチェの身体に抱きついている姿が


飛び込んできた


慌てて 後ずさりした俺は その場に立ち尽くした



心臓が ドキドキ音を立てている


親友と呼ぶには その姿はまるで 恋人のそれで


ヒョクチェの背中に回された ソンミンの白い腕


ソンミンの腰に回された ヒョクチェの男らしい腕


どちらもが 愛しい人を抱くように


俺には 見えたんだ…



見てはいけないものを見てしまったようで


一歩踏み出すことすら 出来ないまま


俺は 胃の奥から 苦いものが上がって来るような


耐えがたい気持ちで 立ち尽くしていた…