次の診察日は少し風邪気味だったけど、ちょうどいいやって出かけて行きました。今日ばかりは診察の時に笑顔ではいけません。

その病院は、いつ呼ばれるのかわからないから、待合室で待っていないといけません。
私は冷房の吹き出し口の近くの、すごく寒いところに居ました。寒かったけど、横に寄りかかれるのはそこだけだったから。

待ち時間、いつもならせいぜい1時間くらいなのに、その日に限っていつまでも呼ばれません。

1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、私はだるくてだるくて、耐えきれなくなりました。
これ以上はもうダメ。少し寝かせてもらおうと思いました。

看護師さんのところに行って
「具合悪っ」
と言ったきり、緊張の糸が切れたのか、その場に座り込んでしまいました。
息は荒く、涙がボロボロと止まらなくなり。

看護師さんたち数人集まって騒ぎになりました。
「大丈夫!」
「吐きそう?」
「血圧計って!」
「名前は言える?」

ちょうどその時です。診察の順番で名前呼ばれました。

・・・ウソも誇張もありませんてば。
まだ名前言う前、倒れてほんとに2、3分後でした。

「あ・・・あ、呼んでる・・・診察・・・」
顔を見合わせた看護師さん達。

車椅子に乗せられ、診察室までコロコロと連れて行かれました。
驚いたでしょうね、先生。これ以上のシチュエーションは考えられません。
私はボロボロ泣きながら、息をゼイゼイとしながら、震えながら、手紙を渡すのがやっとでした。

先生、一読して聞きました。
「そんなにダルイのかい?」
「はい(ゼイゼイ)」
「どのへんが?」
「どこというわけではなく全身が。あ、普段は足腰が特に」

何も言わず先生、どこかに行ってしまいました。どこぞに遅れると電話している声が聞こえてきます。

かなりたってから戻ってきて言いました。
「あの薬をあげるから」
「あぁ、はい。ただ骨密度が・・・」
「うん、1月それで様子見て、効くようだったら反対の作用をする薬で副作用を抑えるから」

あのね、先生の言ってること、かなり無茶なんです。
ほんとはそれでもいいかとも思ったのですけど、あぁいけるかもしれない、ともう一押ししてみました。

「はい。ただあれで治ったという感じではなかったので・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・手術はだめですか」
「再癒着がねぇ・・」
「覚悟はしてます。それに前回の手術ほどひどい癒着が起こるとは思えません」

先生、またどっかに行っちゃいました。ちょっとのぞいてみたら、別の机の資料を見るふりして考え込んでいます。
しばらくして戻ってきて言いました。

「そこまで言うなら、やってみるかい?」
「はい」
「そうだね、すっきりしてみようか」
「はい(^_^)」


少し休ませてもらって帰りました。帰って熱を測ったら8度5分ありました。風邪が悪化してたようで。
どうりで、ああいう発作的な状態になるのは、1人で寝ている時にはたまにあったけど、人前でなったのは大学生の時以来でした。

あと5分呼ばれるのが早かったら、どんな手紙をみせようと、やっぱり先生はダメと言ったかもしれません。

それだけじゃなくて。

「天の時、地の利、人の和」いうんですか。
私がその時その場にいた偶然の全部がその瞬間にかさなってました。
一生の間にそう何度もない瞬間。
鳥肌が立つ思いでした。

もともとはこれで治るとは、ほんとうは思ってませんでした。とにかく確かめたかっただけで。
でもこの時に、幸運の女神の前髪をつかんだのかもしれないと思いました。
もしかしたら私は治るのかもしれない、と思い始めました。