麻酔から覚めたのは夕方です。

痛いのなんの。

腹腔内を埋め尽くしていた腫瘍の癒着を、ベリベリはがされた後の痛みです。膝小僧すりむいただけでも痛いのに、それがお腹の中全部です。

でも何度頼んでも痛み止め注射をしてくれません。
「まだ若いから治りが早いように、我慢しましょう」だって。
どういう意味よ。
若くったって我慢出来るもんじゃありません。

5分置きにナースコールしてたらしまいに怒られました。
「出産の人はもっと痛いのよ! それくらい我慢しなさい」

ウソだと思うぞ。
あれは尋常じゃなかったぞ。
それに私には出産のカタルシスが待っているわけじゃないのに。

9時頃やっと一回注射してくれました。
でも20分で切れました。


あの夜、身動きできないまま、一晩中シクシク泣きながら、うめきながら、いろいろなことを考えていました。
「痛みで気絶するなんてドラマで見るけどありゃウソだね、こんなに痛いのに気絶しないもん」

決めました。

「これより痛いなんて信じられない。だったら子供なんて産まない」
「もう絶対に、2度と手術はしない。今度手術しなきゃ死ぬと言われてもそのまま死んでやるっ!」

一睡もできないまま悪夢のような夜が明けて、朝にはすこしは痛みも治まってきました。


手術後のお腹はべっこりえぐれてて、太ってるどころか脂肪なんて1ミリもありません。
包帯替わりに巻いてあるサラシなんて、なんの意味もありません。

えぐれてるんだもん。

いまでもTVでミイラが写ってたりすると感慨深いものがあります。
あれって内臓抜いてるから、骨盤からがっつりえぐれてるのよね。
あー、あの時の私のお腹だ~。


「まだ若いからかわいそうだから傷跡が目立たないように」細い糸で縫っていただいたそうです。
お陰様で起きあがろうとすると傷口がプチッと開いちゃってまた安静、というのを繰り返し、半身起きあがるだけでも10日ほどかかりました。

褥瘡いうんですか、お尻がグズグズになっちゃって痛いったら。
ガーゼを止めてるテープもかぶれて痒痛いし血が出てるし。表も裏も痛いしかゆいし、グズグズ、グチャグチャでもうさんざん。

しかも結局、傷跡はきれいにくっつかずケロイド状になり、幅1.5センチあるし。
目立たないどころの話じゃないです。
そうそう人にみせるところじゃないけどさー。


気を使ったことがぜーんぶ裏目。
これをヤブと呼ばずして何と呼ぼう。
あのヤブ医者どもめ。一生恨んでやる。