2023年度に「コンクリート構造診断士」試験をはじめて受験し、合格(選択問題40問中33問正解、小論文の採点は不明)しました。今回はその際の学習方法や使用書籍等について、紹介したいと思います。「コンクリート構造診断士」試験は、学習方法を誤らなければ、独学でも十分に合格できますので、参考にしていただければ幸いです。

 

・学習方法

学習期間は3ヶ月間、学習時間は平日1時間程度です。試験までの3ヶ月間、平日だけではありますが、毎日1時間程度を目標に過去問「コンクリート構造診断技術」の選択問題5年分を繰り返し、解きました。過去問の解答解説で理解に苦しむ部分については、「コンクリート構造診断技術」や「コンクリート技術の要点」、「コンクリート診断技術(基礎編)(応用編)」を読み、最新のJISについては、「日本産業標準調査会」のHPで確認し、理解を深めました。試験1ヶ月前には、過去問5年分を3周ほど反復学習していたため、それなりの自信がついていました。

 小論文については、試験1ヶ月前から「コンクリート構造物の変状と対策の歴史」や「コンクリート構造物の変状の特徴」、「コンクリート構造物のライフサイクルコスト」、「コンクリート構造物の補修・補強の手順および補修・補強工法の選定」、「コンクリート構造物の補修・補強工法」にテーマを絞り、自分の考えを踏まえた小論文となるように試験直前まで推敲を重ねました。「コンクリート構造診断士」試験における小論文は、過去問5年分を分析した限りでは、傾向らしきものがなく、非常に対策が立てづらかった印象です。ただ、上記の5つのテーマに対して、しっかり小論文を仕上げていましたので、多少、テーマと外れた題材であっても、何とか対応はできるだろうと考えていました。

 試験当日、選択問題については、過去問と同等あるいはやや応用くらいの問題がほとんどで、56問だけがやや難解で判断に迷う問題でした。小論文については、原因推定がやや難解ではありましたが、写真をよく確認した上で、字数制限の7割程度まで記述しました。

 

・使用書籍

『コンクリート構造診断技術』(プレストレストコンクリート工学会)

コンクリート構造診断技術講習(eラーニング)〈受講料16,500円〉を受講すると、eラーニングサイトからダウンロードできます。また、コンクリート構造診断技術講習(eラーニング)を受講すると、前年の問題と解説、願書が送られてきます。

 

『コンクリート技術の要点』(日本コンクリート工学会)

〈定価8,800円+送料460円+振込手数料〉

日本コンクリート工学会のHPから購入が可能です。

 

『コンクリート診断技術(基礎編)(応用編)』(日本コンクリート工学会)

〈定価16,500円+送料790円+振込手数料〉

日本コンクリート工学会のHPから購入が可能です。ただし、コンクリート診断士受験のためには、コンクリート診断士講習eーニングの受講が必須であり、受講料にテキスト(コンクリート診断技術(基礎編)(応用編))代が含まれているため、受験される方は別途、購入する必要はありません。

 

『コンクリート構造診断士 試験問題と解説』(技報堂出版)

〈定価3,520円〉※2011年版

書店あるいはネット通販等から購入が可能です。

 

『コンクリートの劣化と補修がわかる本update』(コンクリート新聞社)

〈定価3,080円〉

書店あるいはネット通販等から購入が可能です。

 

『日本産業規格(JIS)』(日本産業標準調査会のHP

日本産業標準調査会のHP にて利用者登録をすれば、無料でJISの閲覧が可能になります。ただし、印刷・購入はできません。JISハンドブック各種については、書店あるいはネット通販等から購入が可能です。

 

 『コンクリート構造診断技術』は「コンクリート構造診断士」試験のテキストです。過去問を見てもそのほとんどがこちらから出題されています。したがって、『コンクリート構造診断技術』に記載されていることを理解しておけば、試験対策として間違いが無いと思います。

『コンクリート構造診断技術』の内容としては、プレストレストコンクリート構造物のみならず、コンクリート構造物全般についての点検のポイントや評価および判定、補修・補強工法等について、図表や写真を用いてわかりやすく記載されています。

 『コンクリート構造診断技術』の使い方としては、一通り読破した後、過去問に挑み、その解答解説で理解に苦しむ箇所等があれば、その都度、改めて確認するといった流れが理想だと思います。ただ、それらを読破しても、私の場合は、ほんの少ししか記憶に残らないであろうことがわかっていたので、一通りの読破を省略して、いきなり過去問に挑み、その解答解説で理解に苦しむ箇所等を、その都度、確認するといった流れで学習しました。『コンクリート構造診断技術』を繰り返し読み込むことも重要だとは思いますが、資格取得を目標にしているのであれば、時間も限られていますので、過去問を繰り返し解くことの方がより重要であり、自信にもつながります。ただ、試験前のテーマを絞った小論文推敲の際には、自身の記載していることに不備や誤りが無いかをこちらで何度も確認しました。

 

『コンクリート技術の要点』と『コンクリート診断技術(基礎編)(応用編)』は「コンクリート診断士」試験のテキストではありますが、『コンクリート構造診断技術』よりも説明がわかりやすく、非常に参考になります。

 『コンクリート技術の要点』の内容としては、タイトルの通り、コンクリート技術の要点について、図表や写真を用いてわかりやすく記載されています。『コンクリート診断技術(基礎編)』の内容としては、こちらもタイトルの通り、コンクリート構造物の調査手法や劣化予測、評価方法、判定基準、補修・補強工法等について、図表や写真を用いてわかりやすく記載されています。『コンクリート診断技術(応用編)』の内容としては、コンクリート構造物の診断の目的やコンクリート構造物における調査項目、例題、技術・基準類の変遷等について、図表や写真を用いてわかりやすく記載されています。

 「コンクリート構造診断士」試験の場合は、「コンクリート主任技士(コンクリート技士を含む)」試験とは異なり、『コンクリート技術の要点』はあまり使用せず、『コンクリート構造診断技術』の方を多用します。過去問の解答解説で理解に苦しむ箇所等があれば、そちらで確認するといいと思います。

 

 『コンクリート構造診断士 試験問題と解説』(技報堂出版)は、2011年版しかないため、掲載されている試験問題(過去問)が今と問題の傾向が異なっているため、あまり参考になりませんが、解説は一読の価値がありました。

 

 『コンクリートの劣化と補修がわかる本update』は、たまたま書店で見つけ、手に取って内容を確認したところ、非常にわかりやすい書籍だと感じ、即購入しました。コンクリート構造物の耐久性に影響を及ぼす劣化要因10種類(中性化、塩害、アルカリシリカ反応、乾燥収縮、化学的侵食、火災、溶脱等)を取り上げ、劣化のメカニズムと現象、補修、予防といった対策について、図表や写真を用いて詳述されています。とても読みやすく、なおかつ、内容が深いため、かなりのスピードで理解が進みます。また、試験を受験されない方々にもぜひ一読していただきたい内容となっていますので、すべてのコンクリート関係者に読んでいただきたいです。なお、資格取得には『コンクリート構造診断技術』があれば、試験対策としては対応が可能だと思いますが、『コンクリートの劣化と補修がわかる本updateを理解しておくことでさらなる自信がつくので、余力のある方はぜひ読んでいただきたいです。

 

 最後に、コンクリート技士(2006年度合格)およびコンクリート主任技士(2021年度合格)、コンクリート診断士(2022年度合格)、コンクリート構造診断士(2023年度合格)を取得し、コンクリート全般に対する自信がつきました。取得して終わりではなく、これからが肝心であることも重々承知しています。これからも引き続き、建設業界で生きていく上で必要な知見の吸収に取り組み、精進したく思っています。また、今回の投稿が、誰かのお役に立てることを切に願います。

 

 余談となりますが、コンクリート系の資格の中では、諸々の観点から、「コンクリート構造診断士」試験がもっとも難関であったと感じています。次に、「コンクリート主任技士」試験が難関でした。「コンクリート診断士」試験も難関ではありましたが、「コンクリート主任技士」試験の方がより難関でした。