皆さん、こんにちは。けんでぃーどです。
秋めいてまいりましたね。ここ南仏モンペリエでも朝晩は少し肌寒くなってきました。秋と聞いて皆さん思い浮かべるものはさまざまでしょうが、Pierre Véronという19世紀後半のフランスに活躍した作家のLe Carnaval du dictionnaire (1874) という本をひもとくと、次のように定義されています(第2版36頁)。
秋 ― おひさまの追伸
Automne ― Le post-scriptum du soleil
なかなか気の利いたことを言うものですね。手紙を書いてみたことのある方ならお分かりかもしれませんが、追伸は本文から解放された書き手が最後にちらっと書き添えるものですから、飾り気のない素朴な心境が一番にじむ部分でもあって、味わい深い箇所なんですよね。そこを読むだけでその人の顔が浮かんだり、書き手のらしさが出たり…。それと同じように、夏のぎらぎらした太陽もいいですが、やわらかな秋の陽の光に見る素朴で繊細なニュアンスもなんとも趣深いですよね。
さて、そんな秋晴れの今日はイタリア語日和ということで、先日のイタリア旅行の際にポンペイで見つけた以下の本の序文を読みたいと思います。
Luciana Jacobelli (dir.), Pompei : la costruzione di un mito. Arte, letteratura, aneddotica di un’icona turistica, Napoli : Scienze e lettere, 2008.
と言いつつも、著作権の関係で本文を載せることができないので、要約と語彙表現のご紹介にとどめます。
なお、以下のリンク先に書籍関連の情報があります(日本版アマゾンでは取り扱いがないようで、米国版の情報になってしまいますがご容赦ください)。
https://www.amazon.com/Pompei-Costruzione-Letteratura-Aneddotica-Turistica/dp/8888620451
要約
ポンペイはその知名度の高さからして世界でもあまり例を見ない土地である。また、近年このポンペイ現象が再燃し、さまざまなプラットフォームを通してポンペイの豊かさを改めて分析しようという試みがなされている。学会や講義の成果物を土台とした一連の論文からなる本書も、こうしたポンペイの名声の要因を分析することを目指している。紹介する論文はいずれもポンペイが歴史的に文化人や芸術家の関心を惹起し、今日でも多くの観光客を魅了している要因を扱っている。
エルコラーノなど近隣にも同様の遺跡があるなかで、なぜポンペイなのか。第一に、ポンペイの街を覆った物質(軽石、火山灰、火山礫)がエルコラーノのそれ(火砕流由来の凝灰岩)と比べて除去しやすく、発掘がしやすかったためである。加えて、エルコラーノは「近代」都市が重なり合っており、それも発掘に不利に働いた。さらに、エルコラーノの「博物館的」側面に対し、ポンペイは実際に古代都市を歩いているかのような感覚を与え、住民の遺体が初期段階から発掘されたことで訪れる者の感情的要素も刺激した。また、商業的性格の強いポンペイからは建築、碑文、遺物などが多く発見され旅行者の関心をひいた。官能的な性格の出土品も決定的要因となった。
最後に、観光資源という観点からは遺跡へのアクセスも関係している。ポンペイが高速を降りてすぐのところにあるのに対し、エルコラーノは見栄えのしない市街地を通りぬける必要があるという点が指摘できる。
語彙
◎ 歴史に興味がある
interessarsi di storia
◎S(3単)はそれについて聞いたことがある
S ne ha sentito parlare
◎だいたいのところ、大筋については
a grandi linee
◎それが何のことか
di che cosa si tratti
*接続法使用の原因不明
◎S(3複)はこれほど高い知名度を誇る(の恩恵に浴する)
S godono di una tale notorietà
*godere di qc. = jouir de qc.
◎ポンペイ現象に対する関心
l’interesse nei confronti del fenomeno Pompei
*nei miei confronti = en ce qui me concerne
◎S(3複)は~の様々な側面を分析しようと試みてきた
S hanno cercato di analizzare i vari aspetti di qc.
◎本書ではいくつかの要素(要素のいくつか)を扱う
questo libro affronta (...) alcuni dei fattori
◎網羅的とはいえないが、全体を網羅するには程遠いながら
senza la pretesa dell’esaustività
◎S(3複)はこの名声を高めることに貢献した
S hanno contribuito ad alimentare questa fama
◎本書は一連の論文から構成されている
Il volume se compone di una serie di saggi
*se comporre di qc. = se composer de qc.
◎大部分において
la maggior parte (副詞的に挿入)
◎S(3複)はポンペイを軸としてテーマ展開される
S hanno come filo conduttore Pompei
◎発掘初期の段階から
fin dai primi anni di scavo
◎王侯貴族
Personaggi regali
◎文化人
uomini di cultura
◎(…)何百万という観光客にそこ(ポンペイ)を訪問させる
spingere milioni di turisti (...) a visitarla
*spingere qn. a inf. = pousser qn. à inf.
◎S(3複)は同様の破壊と発見を経験したという意味でそれ(ポンペイ)と共通している。
S con lei (=Pompei) hanno condiviso la stessa sorta di distruzione e di riscoperta
◎いくつかの個別要因が手伝ってこうした特殊性につながった
Alcuni fattori hanno concorso a questa specificità
*concorrere a qc. = concourir à qc.
◎まず第一に
in primo luogo
*in secondo luogo
◎紀元79年に
nel 79 d.C.
◎そのおかげで市街地の大部分が発掘されたのである
il che ha permesso la messa in luce di buona parte della città
*la messa alla luce 発掘
◎市街地の約三分の一が未発掘のままである
Circa 1/3 dell’intera area urbana è ancora da scavare
◎エルコラーノはこれに対して火砕流の届く範囲にあった(火砕流に到達された)
Ercolano, invece, fu raggiunta da una colata piroclastica
◎火砕流、これはその後高密度の凝灰岩になり、約20mの厚さの層をつくった
una colata piroclastica, solidificatasi poi in tufo compatto per un’altra di circa 20 metri
◎S(3単)は古代都市としての利用可能性を著しく損なった
S ha ridotto notevolmente la fruizione della città antica
◎~の想像力をかきたてる
stimolare la fantasia di qn.
◎S(3単)が発掘され始めた
S cominciarono a ritornare alla luce
◎噴火の犠牲となった住民の骨
gli scheletri degli abitanti uccisi dell’eruzione
◎散発的なケースを除いて
tranne qualche caso sporadico
◎人間の遺体が完全な形で発見されたのはようやく1980年になってからである
il grosso dei ritrovamenti di corpi umani risale solo al 1980
*risalire a qc. = remonter à qc.
◎エルコラーノの居住区的性格に対するポンペイの商業的性格
il carattere commerciale della città di Pompei, a fronte di quello residenziale di Ercolano
◎同じくらい壮大な古代都市エルコラーノに対するポンペイの観光資源としての優位性
la maggiore fortuna turistica di Pompei rispetto all’altrettanto straordinaria città antica di Ercolano
*rispetto a qc. (inv) = par rapport à qc.
◎景色の良さは見えないものによっても左右される
il piacere della vista dipenda anche da ciò che non si vede
◎観光客は高速を降りたかと思えばすぐに遺跡にアクセスできる
il turista accede subito agli scavi, appena uscito dall’autostrada
◎~に立ち止まる必要なく
senza doversi soffermare su qc.
*soffermarsi = s’arrêter だがdovereに先行されることで再帰代名詞siがdovereに引き寄せられた形。dovere soffermarsiの形が可能かは不明。
◎実際の街を通り抜ける必要がある
bisogna attraversare il paese attuale
◎常に渋滞が発生している
l’ingorgo è perenne
◎道は狭く窮屈である
le strade sono strette ed anguste
◎建築は見るべきところがない、醜悪だ
l’architettura (è) sgradevole
◎周囲の景色が散策の魅力を台無しにしてしまう
il paesaggio circonstante tolga magia all’escursione
*togliere qc. a qc. = enlever qc. à qc.
◎感嘆のあまり目を見開いて
con gli occhi spalancati di ammirazione