放射線の健康被害について、現在の科学的知見をメモ書きしておく。
順次追記予定。
【間違いやすい用語】
被爆:爆撃や核兵器で被害を受けること。
被曝:放射線や化学物質にさらされること。
※よく間違えているのを見かけるので注意。
放射能:放射線を出す能力。放射能力と考えると分かりやすいか。
放射線:放射性元素(物質)崩壊時に放出される粒子線・電磁波
主にα線・β線・γ線を指すが、
同程度のエネルギーの中性子線等を含める場合もある。
放射性物質:放射線を出す物質
※上記3つの区別ができていない報道もあるので注意。
ICRP(国際放射線防護委員会)
:専門家による放射線防護に関する勧告を行う民間の団体
ECRR(欧州放射線リスク委員会)
:放射性物質の健康問題に関連した活動を行う市民団体
※ICRPは各国政府や放射線の専門家等が参考とする最重要機関である事に対し、
ECRRは各国政府と繋がりを持たない私的団体であることに注意。
重要度 ICRP>>ECRR
【放射線の健康被害】
放射線の健康被害については下記の2種類がある。
1)急性放射線障害
短時間に大量の被曝した場合に現れる障害
2)晩発性障害
被曝後、時間が経過してあらわれる障害
主にがんや白血病等を指す。
1)については明確な閾値(これ以下では影響が現れない値)が存在する。
250mSv以下では急性放射線障害は現れない。
この値を超えると、血液中の白血球の減少などの影響が現れる。
※今回の福島原発事故ではこの被曝量を超えた人は(原発作業員を含めて)いない為、
急性放射線障害になる人はいないはず。
2)については短時間に1Svの被曝量を受けると生涯がんで死ぬ確率が約5%ふえる事が知られている。
この確率は被曝量に比例し、100mSvで約0.5%となる。
(日本人のがんによる死亡率は約3割なので仮に30%とすると、100mSv被曝した日本人の生涯がん死亡率は30.5%となる)
現在の知見では100mSv以下の被曝についての害についてはよくわかっていない。
ここで「わからない」とは、「全く検討がつかない」という事ではなく、「リスクが小さすぎて検出できないのか
それとも害は無いのかわからない」という事。
すなわち閾値があるかどうかは今のところわからないという事。
そこでICRPではLNT(閾値無し直線モデル)を採用しており、このモデルに従い防護基準が定められている。
ほんの少しでも放射線を受ければその分わずかにリスクが上がるとみなして、技術的・経済的に妥当な範囲でなるべく被曝量を減らすことが求められている。