-数十分後-

「いやぁ、安心した。ご丁寧にカーテンしめてたよ」

銀行を警察が包囲した頃、少し離れた所を少女が歩いていた。

「流石、百合だな。1分かからず戻ってきた」

百合と呼ばれた少女は照れくさそうに頭をかく。

「圭子。銀行にテレポートしてくれ」

「わかった」


-銀行-

火を操るスキンヘッドと、衝撃波を発した青年が並んでいる。2人の前には、20人程の人が座っていた。もう1人は、他に人がいないか見にいった

「なぁ、スキンヘッドのお兄さん」

座っていた人の中で、1人だけ普通に話しかける男性がいた。

「あんた達、何者なんだ?」

スキンヘッドは笑って、男性の前であぐらをかく。

「お前度胸あるな。名前は?」

「…平次」

「平次…気に入った。俺らが何者か、教えてやるよ」

スキンヘッドは立ち上がると、平次を見下すように言う。

「俺らは人間さ。ただ、2年前の『あの事件』で、ちょいと人間離れしちまったけどな」

「『あの事件』って…」
ゴウン…

平次の後ろで杏奈が呟いた直後、音が響く。銀行内の誰もが、音源を探そうと辺りを見回す。

ゴウン…

2回目は音が大きかった。まるで、何かが近づいているように。

ゴウン…

3回目になると、ほぼ全員が音源を注視する。素人目からでもわかるほど、頑丈な扉。それが次の音で、こちら側に倒れるのだった。

ゴウン…
----------
「…すか!?大丈夫ですか!?」

目覚めと共に、騒がしさが耳をつく。視界に写ったのは、防護服を纏った人。
ふと、隣に居たはずの大好きな彼氏を探すために上半身を起こす。そこで初めて、自分が寝ていた事を自覚した。
辺りを見回すと、そこには地獄絵図という言葉がよく似合う状況が広がっていた。

----------

「何寝とんねん」

平次が軽く頭を叩く。杏奈の持っていた番号の書かれた紙を取って目の前でユラユラする

「呼ばれてんぞ?」

「え?あ、はい」

立ち上がり、窓口に駆け出した瞬間、目の前を紫色の炎が通り過ぎた。

「はい皆さーん。丸焼きにされて食われたくなければ、大人しくしててねー」

入り口から来たサングラスをかけたスキンヘッドの男性は、手のひらから紫色の炎を発火させる。
すると、客の中から2人がスキンヘッドの後ろに立つ

「金よこせ」

悲鳴が湧き、銀行にいた20人程がスキンヘッド達から離れるように走る

「動くな!」

客に紛れたうちの、赤い髪の青年が声を発すると、衝撃波となって客を攻撃した

「杏奈!」

平次が杏奈の手を引く。他の客とは違ってその場を動いていなかったせいなのか、彼に衝撃波は当たらなかったようだ

「平次!何アレ!CG!?」

「バカ!現実世界にCGなんてあるかよ!」
長い髪を束ねて、女性は鏡の前で身なりを整える。
テレビでは、2年前に起きた悲惨な事件の特集を流している。

「もう、2年前なのか…」

鏡は向こうで、開け放たれた扉に寄りかかった男性が呟く。女性は振り返ると、両手を広げて肩をすくめた。

「2年経とうが、事件の詳細は闇の中。私たちが生き延びた理由も、また然り…ね」

男性は同じように肩をすくめた。

「齋藤杏奈、沼田平次、両名の生存は奇跡的である…とでもニュースになったか?」

男性、沼田平次は自分の後ろを親指で指すように、握った手を振る。

「約束通り、車借りてきたんだ。行くぞ?一人暮らしの準備に」

女性、齋藤杏奈は頷いて部屋を出る。この家の前には、ある程度の荷物は積めるであろう大きさの車が止まっていた。

「あ、平次。先に銀行行っていい?お金多めに持っとこうと思って」

「はいはい。姫様の言う通りに致しますよ」

2人が乗り込んだ車は、道路の流れにのって走り出した