メダロットL・I・N・K 1-1
夢を、見た。
目の前で女の子が泣いている。
どうしたんだと聞いても、首を横に振るだけで何も答えない。
いつまでたっても泣き止まないので、どこかへ行ってしまおうかと考えたが、女の子を一人置き去りにするのはかわいそうだと思った。それに泣いてるままには出来ないと思った。
「おれといっしょにいこう」
ただ、泣いているのをどうにかしたい。その一心から出た言葉だった。
女の子は驚いたような表情をこちらに向けてきたが、そんなことは構わずその子の腕をとり、走り出した。
どこに行けばいいのかなんて分からない。ただ、前へ進んでいた。進んでいればこの子を泣き止ませるものが有ると思った。
二人で一緒に色んな所を走り回った。どこまでも、どこまでも───
「ってぇ・・・・・・」
命の後頭部に鈍い痛みが走る。見慣れた天井が目に映る事から、ここは自分の部屋だと分かる。頭を横にずらすとパイプで出来た足が見え、ベッドから落ちたのだと理解した。
「クソッ、ベッドから落ちるなんて何年ぶりだ・・・・・・?」
そういえば、赤ん坊の頃はよく落っこちてたとか姉貴が言ってたな、などとぼやき、男子にしては長い髪───背中の真ん中まである───をかき分けながら頭をさする。
時計を見ると7時15分。そろそろ家を出る準備をしないとまずい時間である。
「今日は制服で行くか・・・・・・早くメシ食わないと・・・・・・」
身支度を調え、二階の私室からリビングへ降りる。リビングでは姉の紋乃が朝食を取っていた。
この南部家では家族全員で食事をすることが多いので、珍しい風景ではあった。
「おはよ、命。早くゴハン食べないと遅刻するよ-」
「おはよう姉さん。まだ時間あるから平気。父さん達は?」
「もう仕事行ったよ。今日は新しいシステムのパーツの開発があるとかなんとか」
「ふーん、そう。いだきまーす」
「はい、いただきます。ところでアンタ、メダロッチは? 入学祝いで買って貰ったじゃない。高校にもなってメダロット一体も持ってないんじゃイジメられない?」
「いらないよ、別に。イジメもないし」
「だからって、折角買ってもらったのに」
「そろそろ時間だし、俺行くよ」
「あっ、こら。まだ話は終わってないぞ」
逃げるようにして命は行ってしまう。
「半分も残して・・・・・・。もう引きずってないと思ったんだけど、やっぱりまだダメかな・・・・・・」