今日の先生 鍵本聡先生
今回の鍵本聡先生にインタビューさせていただきました!
数々の数学に関する本を書き,数学のプロ教師として非常に
有名な鍵本先生。
今回のインタビューでは,数学を切り口としながら,先生自身について深くインタビューしました。
前編では,進路についてのお話と数学から見える仕事力について
お話いただきました!
鍵本先生プロフィール
1966年、兵庫県生まれ。京都大学理学部卒、奈良先端科学技術大学院大学
(情報科学研究科)博士前期課程修了、工学修士。
ローランド株式会社(電子楽器開発)、聖隷学園高等学校教諭(数学)、
大手予備校講師、大学進学塾「がくえん理数進学教室」代表を経て、
現在株式会社KSプロジェクト代表取締役、
関西学院大学、滋賀県立大学、コリア国際学園非常勤講師。
著書に『計算力を強くする』『高校数学とっておき勉強法』(以上、講談社ブルーバックス)、
『数学入試問題がすらすら読める東京大学編』(数研出版)、
『それでも数学を捨てられますか? 数学は真実を見抜く力を養う最強ツール』(サンガ)、
『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、なにを学ぶのか』(共著、講談社)など多数。
インタビュアー(以下:イ):今、先生が代表をされている株式会社KSプロジェクトとはどういった会社なのでしょうか?
鍵本先生:一言で言うと、執筆を請け負う会社です。いろんな人と「コラボしたいよね、つながっていこうね」ってことで、こういう形をとっています。また、今は細々とではありますが将来はグッズを作って販売もしたいな、と考えています。算数Tシャツとかね(笑) また、大きなビジョンではもう一度学習塾の経営も再開したいと考えています。
イ:数学の先生になろうと思ったきっかけは何なのでしょうか?
先生:中学のときから、先生もいいかなとは思っていました。僕は中学受験をしたんですが、その受験勉強のときに面白そうって思ってたんです。でも結局、大学卒業時には楽器関係の仕事に就きたくてローランドという楽器会社に就職しました。
ただ4年間仕事をしてわかったことは、僕はその仕事に対して、ほかの人よりもこだわりが持てなかったということ。楽器の一音一音に対して、そこまでこだわりがなかったんですね。一生この仕事を続けられないな、と。
実はミュージシャンになりたかったんです。であるとき、僕が一人で録音した曲のデモテープを大手のレコード会社の方に聞いてもらったことがあるんです。
「正直、これくらいのやつはいっぱいいる。ミュージシャンじゃなくてディレクターしないか?」と言われました。でも、人の音楽作りを手伝うというディレクターの仕事がしっくりこなかったので、悩んだ末にお断りしました。
そのあと、友達のツテでオランダに旅行に行ったんです。そこで「外国で暮らすのもいいな」と思って。
で、可能性がある仕事をいろいろ探しているうちに、日本人学校の先生がよさげだな、と。でも、調べてみると「2年以上の日本国内での教師経験」が必要だったんです。
そこで、オランダから1994年の1月に戻り、その年の3月でローランドを退職して、少し勉強をしたのちに静岡県の私立中学校・高等学校の適正試験を受験することにしました。で、その年の冬に家の近くにあった聖隷学園高校(現聖隷クリストファー高校)に連絡して就職することができました。これが、僕の高校教師としての始まりですね。
僕が今も「数学の先生」を続けられているのは、この仕事が僕に向いているからだと思います。正直に言えば、数学もそこまで好きではないんですよ。だから、数学が嫌いな学生の気持ちもなんとなくわかります。
当時僕はそうだったんですが、「~したい」という気持ちで仕事を決めることが多いと思います。でも「自分がしたい」ことと「自分に向いてる」ことは大体違うことが多いんですよね。だから、結果的に向いていない仕事についてしまうことになるわけです。
仕事を選ぶときには「~に向いてる」という視点や、社会や周りが自分にしてほしいことに応えるという視点で選んでもいいと思います。僕自身、向いている仕事を追及したらこうなりました。「自分は何がしたいのだろう」と悩んでいる人が多いようですが、人は自分にどんな仕事をしてほしいのだろう、という考え方もあるのではないでしょうか。
イ:先生がこの仕事が自分に向いていると思ったのはどんなときですか?
先生:たとえば僕はね、数学の答案の表現にうるさいんですよ。解き方が合っていても、表現がおかしかったらチェックしていくんです。それは、その学生のためにもなりますしね。あいまいな表現の答案に点数をあげても、「人生の試験」では細かくチェックされるんですから。こういう、人が気付かないところに気付くところが向いてると思う理由ですね。
数学というのは、作法の科目だと思っています。答案を書く際の作法を学ぶ科目というか。その作法を大切にしないといけないし、逆に作法を守っていけば答えが出る。
数学って仕事力なんですよ。数学で「xを~、yを~とする」というような宣言をキチンとすることは、書類をキチンと作ることや仕事をキチンとこなすことにつながります。数学力のある人のほうが、より仕事が出来ると経験から感じますね。
イ:子どもは「数学って意味あるの?」って聞いてくることもあると思いますが、それに対してはどうお考えでしょうか?
先生:そうですね・・・たとえば高校数学でlogってありますが、あれって日常生活で使いますか? 多くの学生が使わないと思っています。じゃあlogは使わないと仮定して、他に使わないものって何がありますか?
ルートの計算なんて日常生活で使わない、方程式なんて使わない、でも足し算や引き算は使う…そんな風に考えて、一番簡単だけど使わないものってなんでしょう?
数学なんて使わないって考えてる子どもはこれを考えるんですね。必死に楽をしようとしてる。「これは要る、要らない」を考える子どもは意外と大人なんですよ。だから数学が苦手な学生の大半は大人びた学生で、数学が好きな学生はたいてい子供っぽい学生です。
ちなみに、一番簡単だけど使わないものって僕は「分数」だと思っています。実生活ではなかなか使わないですよね。「25%引き」って値札をみたときでも、小数の計算で済んじゃいますし。一時期、大学生が分数出来ないということが話題になりましたが、そういうことだとおもいます。
でも「分数」の出来る、出来ないで数学力には確実に差が出ます。今は使わなくても、来月使うことになるかもしれない。そんな積み重ねが2ヵ月後、3ヵ月後に大きな差になってきます。確かに、たまにしか使わないかもしれない。ですが、その「たまに」や「まれ」というのが大事なんです。