日本の教員採用試験は,都道府県(政令市)ごとに行われます。
ですから,全国で,47+α個の教員採用試験があるわけです。
神奈川県の高校英語の教採,大阪府の小学校の教採,岡山県の養護教諭の教採といった感じで,都道府県(政令市)ごとに,さらに,学校種,教科によって別れていきます。
例えば,教職教養で言えば,教職教養の筆記試験を実施している都道府県(政令市)の数だけ,ある年の教職教養の試験問題の種類はあります。
さて,ここからが重要です。
確かに,XX県の教職教養の過去問を数年分くらい,よく分析して,出題の傾向や難易度,出題される分野などを確認することは,極めて重要です。
しかし,自分はXX県を受けるから,他の都道府県の教職教養の問題は,自分には関係ないという考え方は危険です。
教職教養は,教育原理(教育課程,学習指導要領,特別支援教育,キャリア教育,生涯学習,情報教育などなど),教育法規,教育心理,教育史,教育時事等から構成されています。
その都道府県(政令市)特有の施策が1~2題出題されることはあり得ますが,その他のほとんどの問題は,全国共通です。
千葉県に特化した学習指導要領とか,兵庫県に特化した教育心理とか,広島県に特化したキャリア教育というものはありません。
学習指導要領は,当然ながら全国共通です。
教育心理の知見も教育史で学ぶ過去の教育の知識も,全国共通です。
一般的な意味で,学問とは,相当程度,普遍的なものです。
どの県で,どの分野が出題されやすい,どの分野は出題されないという違いはありますが,その県だけの学問・知識・教養というものは存在しません。
ですから,その県の出題の傾向やパターン,難易度を踏まえながら,一般的な学習をしていく必要があります。
また,面接などは,原則として,全国共通です。
人が人を選ぶ営みですから,特に,埼玉県の面接,滋賀県の面接,山口県の面接といったものがあるわけではありません。
もちろん,それぞれの県によって,面接時間の違いや,質問される面接に若干のパターンはあります。しかし,それは表層的なもので,自分をいかにアピールするか,自分の想いをいかに面接官に伝えるかは,全国共通です。
教採塾は,広島教採塾,東京教採塾,大阪教採塾,岡山教採塾,そして,福岡面接校と全国各地で講座を展開しています。
もちろん,それぞれの地域で,広島に特化したり,関東甲信越に特化したり,関西に特化したり,岡山に特化したりはしています。しかし,特化するといっても,出題傾向や難易度等を考慮するくらいで,特に,広島の面接とか,関東甲信越の面接とかといったものが存在するわけではありません。
教職教養という,一定の教育学の学問を合わせたある程度普遍的な領域があり,
面接という,人が人を採用するというある程度普遍的な対話の場があり,
それぞれ,全国共通の学習法,演習法があります。
XX県用,YY県用というように,地域枠にとらわれた,学問や対話の方法は存在しません。
もっと言えば,過去12年間の,私の教え子の中で優秀な人ほど,全国各地で,合格を勝ち取っています。2つの合格,3つの合格,最大で4県で合格を勝ち取った人もいました。
優秀な人は,県を超えて優秀です。
県にこだわり,学問のことも,普遍的なコミュニケーションの在り方も考えず,ただ,XX県用の過去問だけを勉強するという偏った考え方をする人は,その県でさえ,合格を勝ち取ることはできません。
受験生は,受験に関しては,ものを見る目が狭くなりがちです。
時として,自分の県の過去問しか,見なくなります。
でも,それでは,来年の教採に合格することはできません。
自分の力を伸ばし,余裕をもって,自信をもって,教採に合格するためには,XX県用という枠を超えて,受験のセクショナリズムを超えて,普遍的な本質を学ぶ必要があります。
自分の県以外の県での出題例などを,「自分には関係ない」と切って捨てるような人に,教採合格の可能性はありません。
少なくとも,「なるほど。この県ではこういう出題のされ方ならば,自分が受ける県ではどのように出題されるだろう?」と考える必要があります。
教採に余裕で合格する人は,全国の過去問に目を通します。
教採に余裕で合格する人は,全国のどの都道府県(政令市)でも,合格できます。
セクショナリズムにとらわれ,自分の県以外の情報を無駄な情報だと考える人に,合格のチャンスはありません。
そして,そんな人に教師になる資質はありません。
常に,幅広い目で学問を見つめ,普遍的でどこにでも応用できる知識や教養を獲得していくことが必要です。
各都道府県(政令市)の教育委員会が欲しい人材は,その県の過去問だけを研究した人ではありません。
各都道府県(政令市)の教育委員会が欲しい人材は,普遍的でどこにでも応用できる知識や教養を身に着けた人です。
学問的魅力とは,普遍的に通用するものですよ!!
では,また明日!!
河野正夫