今回鑑賞したのは、1958年の新東宝映画「亡霊怪猫屋敷」。

中川信夫監督が演出した恐怖映画だ。
結核の妻の療養のため、医師・久住は故郷の古民家に移り住む。
医院を開業したが、夜な夜な妻・頼子の枕元に老婆が現れ、
頼子の生命を狙おうとする。
化け猫屋敷と称されていたその古民家の謎を解くため、
寺の和尚に相談したところ、老婆の正体は、はるか昔この屋敷に住み着いた
化け猫の化身ではないか?というものであった。
 
本作は、現代劇→時代劇→現代劇の形で描かれ、
現代劇はモノクロ、時代劇はカラーで撮影されている。
どちらも恐怖感を煽るのに最適な演出で作られており、
現代劇でのほぼ暗闇の中で繰り広げられる現象、
一方、時代劇でのくすんだカラーの中で異彩を放つ鮮血が目を引く。
 
中川信夫監督の、「ここに映ってるの、もしかして…」と訝るような
後を引く恐怖、そのシーンを煽る音楽がなんと渡辺宙明先生!
新東宝の頃は、70年台の作風であるジャズロックはまだ萌芽もないんだけど、
「下世話な冬木透」といったおどろおどろしい恐怖描写が見事だ。
 
69分という短編ではあるけれど、短編なだけにダレ場のない、
じわじわと来る恐怖感をストレートに味わうことができる、
「日本の蒸し暑い夏」にピッタリの恐怖映画です。