しかし、私と口をきくことはなかった。

そして、明日は卒業式という帰りの学活の時間・・・

エミコが突然立ち上がり話し始めた。クラス全員、一瞬なにがおきたのか分からず静かになった。

エミコは、下を向いたままだが、はっきりとした口調だった。

「私は、先生と出会って、いやでたまりませんでした。大嫌いでした。

 担任が変わってくれないかと、毎日祈っていました。

 でも、先生と出会ってから、どんどん自分が変わって行くのがわかるんです。

 いつのまにか、今までずっと避けていたことに全て挑戦している自分がいるんです。

 

 今頃になって先生の私に対する思いが理解できるようになりました。

 今では、先生と出会って本当によかったなぁと思っています。

 先生・・・今までごめんなさい。・・・本当にごめんなさい。ごめんなさい・・・

 先生には、心から感謝しています。本当に、ありがとうございました。」

突然のことで、予想外のことで、状況を把握できず私はパニック状態になった。

しかし、徐々にエミコの思いが心に沁みわたり言葉の変わりに涙が出て来た。

エミコの顔も涙でぐちゃぐちゃだった。

エミコの「ごめんなさい。ありがとうございます。」・・

この言葉で2年間の辛さが、あっという間に消えてしまった。

辛く長い2年間だった。例えようの無いほどの辛い日々だった・・・・

しかし、嫌いな担任と2年間一緒に過ごさなければならなかったエミコの方がもっと辛かったのだと思うと、更に涙が流れ落ちた。

「ごめんね・・エミコ」心の中で謝った。・・・声にすればよかったとちょっぴり後悔した。

この2年間、エミコに嫌われても、拒否されても、エミコの幸せだけは、本気で願っていた。

初めて会った時、体育見学の理由を尋ねたのも、エミコの幸せを思ってこそだ。

そんな、エミコへの思いが伝わるまで・・・・2年かかった。

生徒がどんな態度であっても、「思いが本気なら必ずいつか伝わる」ことをエミコに学んだ。