平成31年(2019)1月の中教審答申(※1)から5年が経過し、未だに、公立学校の長時間労働が解消せず、令和5年5月22日に新たな諮問(※2)が、中教審で審議されている。しかしその中身が明らかになるにつれ、現場の落胆は大きい。

 

 目玉として、教職調整額を「4%」→「10%」の2.5倍に引き上げる案が、ほぼほぼ決まりのようだ。

 

 通常、お金に関しては「財務省」の壁があり、今まで中教審では、お金には手を付けてこなかったことを考えると、この辺りは、財務省との間で、すでに了解が得られているものと考えられる。

 

問題は、それ以外は、無意味な施策の提案のみである。ほとんど、働き方改革に寄与しない。(詳細省略)

 

教員免許更新制が平成21年(2009)の4月1日から始まり。令和4年(2022)7月1日廃止された。13年間以上にわたって、いろいろな問題を生じさせた制度は終了した。

公教育の関連で、やめる決断は、めったにない。では、なぜ、免許更新制が廃止されたのか。建前上は、現場の教員の負担が非常に大きく(費用4万円弱自腹、土日や夏休みに講習を受けに行く(30時間程度))批判が多かったと当時の文科大臣、萩生田 光一はインタビューで答えていた。しかし、これは、始まった時からずっと言われていたことで、現場の負担なんて無視して13年続けたのである。では、なぜ、やめたのか。

 それは、教員採用試験の倍率がどんどん下がり、それに伴って、臨採(教職浪人)組が枯渇し、産休育休、病休対応の人材が枯渇したためである。各教育委員会で年度途中の人材が確保できず、たとえ候補人材に連絡が取れても、教員免許が失効しているので現場には立たせることができない状況が多く発生したためである。

 そこで、教員の意見は無視する文科省も、教育委員会からの要請が強く、政府を動かし、法改正に至ったのである。

 

では、本題であるが、学校の働き方改革が進まないのは、何が、原因なのか。

原因1、定額働かせ放題の給特法は絶対に改正したくない、文科省と教育委員会。

 給特法のおかげで、文科省、教育委員会は、勝手、自由に提案する教育施策を定額働かせ放題で現場の教員にやらせることができる。文科省天下り先の大学教員&中教審メンバー(大学教員)は同じ仲間なのである。大学の偉い先生が提案して審議し、導入した制度を止めるというと、業界で干されてしまう。そんな人は一人もいません。つまり、中教審から有効な案は絶対に出ません。やらせたいことは山ほどあるのに、止めるとは何事か!!!とね。

 

 現状、裁判の判例では残業代請求は、「教員が好きでやった仕事」とされ、支払われない。

 しかし、最近の判例は、過労死、過労自殺、過労(適応障害)で、裁判した際、管理職、教育委員会が教員の労働時間管理ができていなかっことを認め、損害賠償が認められている。

 日本は、本当に生き死に関わり、理不尽極まりない状況でないと裁判を起こさない民族性があるので、まだまだ、賠償判例は一部にとどまっている。

 ※現状、裁判は、できなくても、医師の診断書を取ってしまえば、業務の軽減、病休は取れる。自殺や突然死するくらいなら、最終手段で、診断書出せば、何とかなる。もし渋られたら、上位機関に訴えればよい。都なら教育庁の公平課に電話1本+1回の面談でOKだ。

 

その他、管理職や、教員自身が、出世欲で、○○研究を率先してしてしまうなど、現場サイドの問題もないことはないが、さほど大きな理由ではない。

 

では、対策はどうしたらよいか。自衛策は先ほど書いたが、業務の軽減を、管理職に伝えておく(証拠も)、次に、診断書。中教審レベルの対策で、費用が掛からず、できることは、何であろうか。1つは、

対策1:教育委員会に、教員の時間管理を徹底させ(持ち帰り労働、部活、大会引率の時間も)、45時間超には、罰則規定を設けることである。罰則ができないなら、昇進や異動の際の評価項目に入れるだけでも良い。

 

教育委員会、管理職は、とにかく、罰を嫌がり、人事の話題が大好きである。

 

たった1項目、人事考課の項目に教員の労働時間管理の項目を入れるだけで、180°変わるだろう。

 

今まで、教育課程の標準時数(中学は1015時間)を大きく上回る教育課程をだすことが高評価につながっていた。教員を苦しめるような、○○研究をたくさんすれば、出世したり、良い異動先になった。

 

これがなくなれば、歯車は、一気に業務改善に回り始める。

 

しかし、この1つを変える人材が、中教審にも教育委員会にもいないの現状である。

 

これから、教採を受けようとする人は、できれば、民間で5〜10年働いた後、教員の働き方改革が進んだか、地獄のままか確認してからでも遅くないと思う。

 

なんせ、彼らが一番嫌がるのは、なり手がいず、多くの学校で欠員が生じる状態である。そうなると、おそらく、世の保護者は教育委員会、文科省はどうなってるんだ!。本気でやれとの世論ができるでしょう。

 

つまり、教育現場が、いったん破綻し、原因が、文科省(中教審)、教育委員会であることが明確に示されて始めて改革は進むと考えることができる。

 

宮台真司の加速主義ではないが、破綻を加速することが、結果的には、早い改革につながると思われる。

 

※1「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」

※2「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(諮問)