僕は、動物が好きだ。 生き物が好きだ。 植物だって大好きだ。
僕は人間だ。
人間は、嫌いだ。
僕は人間だ。 どう願ったって、人間だ。 別の物に、なれるわけがない。
少なくとも、今の僕の意志がある内は。
僕の前世は悪い事をしたに違いない。
誰かが言ったんだ。 人間は人間にしか生まれ変わることが出来ないって。
嘘だって思う。 悪い事さえしなければ、人間以外のものに生まれ変われるはずだ。
僕は今すっごく頑張っている。悪い事なんかしないよって。
道を歩いていると、一匹の小さな鼠に出会った。
「かわいー・・・・」
僕は動物が大好きだ。
僕のお母さんは、罪悪感はあるけれど、殺すのはしかたがないって、鼠を殺すんだ。
まだ子供でも、関係なく。
僕は言った。窒息死なんて、保健所と一緒じゃないか。棒で殴って一発の方が痛みも苦しみもなくて、いいよって。
でも、そんな事出来ないわと言って、結局は残酷な殺し方をするんだ。
僕の家には犬が居る。 キャバリアだから、すごくおとなしくて、フレンドリーだ。
「?・・・・何見てるの?」
尻尾をふりながら、何かをじっと見ていた。覗いてみると、小さな鼠がいた。
眠そうにして、まるまってて、すごくすごく可愛かった。
「犬と鼠のツーショットってすごく可愛い」
結局は、その子だって死んだんだ。
外に逃がしたらいいじゃないか。 駄目。 なんで? 生まれた所を覚えてるから、また戻ってくるわ。
そんなの、結局は言い訳じゃないか。
お母さんに言った。すごくね、可愛かったんだって。
自分で言ってて、涙が出てきた。 一人で、泣いたんだ。
その子供と同じ大きさの鼠。
「話そうか」
「人間ていうのは、人の間と書くだろう」
「そうだね」
「何故か分かるか」
「分からない」
「人間ていうのは、ヒト科の動物だ」
「うん」
「だから、ヒトではない。結局は、ヒトではないんだよ。ヒトに属する事も、我等の様な動物にも属されない。属してもらえない。 惨めだな、人間というのは」
「僕もそう思うよ」
「お前は人間だ」
「僕は人間だよ。何をしたって、別の生命になる事は出来ない。人間が、大嫌いな、人間だよ」
「そうか」
「うん」
「何故お前は人間なのだ」
「僕の前世が悪い事をしたからだよ。そのとばっちりが僕に回ってくるなんて、迷惑な話だよね」
「・・・・・・・・・。何も分かっていないのは、人間だけだ」
「・・・・・・・・」
「人間以外の生命体には、全てがわかっている。分かっていないから、人間というものは自分達を王だと思い込む。全てを支配する事ができると思い込む。 全てがわかっているから、強調もせず、ただ静かに我等は生きている。 人間というものは、生きるにも騒がしい、愚かな、生命の成り損ないだ」
「やっぱりそうだったんだ」
「・・・・・」
「うすうす解ってはいたんだ。今確信に変わったよ」
「人間というものは残酷だ・・・・っ・・生きているだけで・・・汚らわしい・・・・っ・・・・・我等は・・・何もしていないのにっ・・・・」
小さな、小さな鼠は、泣きながら語った。
「っ・・っ・・・・・」
僕も泣いた。
悔しいからだよ。
僕は悪い事をしてしまった。
鼠さんが泣いているというのに、僕は励ましの言葉も掛けられなかった。
「僕はね、空気になりたい」
僕の、人生初の悪い事は、とっても悔しい事でした。
ほら、僕は話題を変えるしか出来ない。
「空気なら、この世が無くなっても、怖いことがあっても、痛みも何もかんじない。見られる事も無い。気づかれる事もない。何をするわけでもなく、居るだけで許される」
「お前は何になりたい」
「空気になりたいよ」
「お別れだ」
「あのね。人間が嫌でも、生命体じゃないとしても。 空気として、この世にいる事を望んでるなんて、僕も矛盾の塊だね。 笑えるね。 皮肉だね」
「これだから、人間っていうのは半端で困る」
FIN,,,,,..,.