そこ。きもいとか言わない。

















アイツと私の日常。第十九話。







「じゃあ、いってきます」


「ん。いってらっしゃい」





12時。

桜沢が買い物に出かけた。



あいつは笑顔で「いってきます」と。


私は笑顔で「いってらっしゃい」と。





バタン.............








もうすぐ、私の胸が締め付けられることになるとも知らずに。














「あぁ・・・・・・・あと一時間どうしようか・・・・・」





お昼は樹と食べる約束だし・・・・・・




「もっかい本屋いこっか」



私は、暇つぶしに、一時間本屋で本を物色する事にした。

なかなか広い本屋だから、いいもの見つかるかもしれないし、時間もかけられるから、暇をつぶすにはもってこいだね。





「おし。着替えよ」



今日の服装は、ジーパンに、うさ耳はやした髑髏マークが真ん中にプリントされた薄グレーのTシャツ。


え? デートだろ?もっと可愛い服でいけ、なんだようさ耳の髑髏って?



・・・・・・・・・・・・・・。





ほっとけ。



「帽子はー・・・・・・・いらないかな」



最後に、忘れものはないかの確認。

忘れ物激しいから、確認しても忘れるってことあるんだよね・・・・・・念入りに確認確認・・・。




「えーと・・・・・まあ、服はOKでしょ・・・? 鞄もありで、中身は・・・財布、携帯、エコバッグ、紙とペン、傷薬に絆創膏、あとMDプレイヤー・・・・・・・大丈夫かな? よし、じゃぁいこ」




チャリ...



私は、家の鍵を持って、自室から出た。そのまま一階まで降りて、靴を履いて家から出た。


「鍵閉めを忘れずに・・・っと」


ガチャ、ガチャッ


ちなみに、私の家には鍵が二つついている。 どっちも穴の形状が違うから、鍵も二つある。

忘れっぽいうえに無くしやすい私は、チェーンに鍵を二つともつけて、肌身離さず持ってるんだ。



「閉まってるね。行こ」


ドアを一度引いて、閉まっているかどうかの確認をしたら、やっとこさ出発。

この行程だけで10分ぐらいのロスかな。




















「うん・・・・・・・・・今日はどのコーナーへ足を運ぶか・・・・・・・」



行く途中、知人にも会わず、何事も無く本屋についた私。


今は、本屋の前にある看板というか案内板?の前に立っている。



「・・・・・・・・・・漫画は朝いったばかりだしなぁ・・・・・・・純文学に行くか」












目当てのコーナーに行くと、【直木賞受賞】と書かれた紙の下に、≪少女七竈と七人の可愛そうな大人≫という本と、≪砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない≫という本が三冊ずつに積まれてあった。

どちらも同じ人が書いたやつみたい。



「・・・・・これおもしろそう」



私が手に取ったのは、≪少女七竈と七人の可愛そうな大人≫。

題名からも引かれたけど、その見た目?がなんか私の好みに合ってたから、読むことにした。





「えっと・・・・・・何番だったかな・・? 6番か・・・」



鞄の中からMDプレイヤーを出して、ヘッドホンを耳にかけ、操作する。


「・・・・よし、かかった。さてー・・・・読むか」



♪~~♪♪~




今聞いてるのは、最近はまりだした、ミスチルの【フェイク】。

・・知ってるかな? えっと、どろろの主題歌だとかなんとか書いてあったけど。



















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」











「・・・・・・・・・・あっ。 今何時だ?」



携帯を見ると、12:50 と出ていた。


「やばっ。はやくいかないと!!」



私は、本を閉じて、レジへ向かった。 正直いって、ものっっっっっっそいおもしろいよ。この話。


ネタバレ注意だから話の内容には触れないけど、とにかく!! 皆も一度読んでみる価値あるよっ。

だから購入購入ー♪





「ありがとうございましたー」



店員さんのスマイルにお返しのスマイルをしながら、一目散に店を飛び出した。




















「樹!!!」



「梅。お疲れー」


「お・・・おつ・・お・・っ・・・・おつ・・・かれっ!」


「ははははははっ!!クク・・っ梅・・・おもしろ」


「はぁぁ・・・・・何それっ?」


「なんもないよ。 よーしっ。いこっか」


「ゴホッ・・・うん!」





そして、二人横に並んで歩き出す。





「何処行く?」


「んー・・・・・梅は?」


「そうだなあ・・・・・・・・あ!! 一昨日できた、あの雑貨屋さん!!そこ行こっ」


「あぁ、あそこか。じゃぁ行こうぜ」






デートかぁ・・・・・・・・・・・むふふ・・・・・・・




そこ。きもいとか言わない。







念願のデートだよ。デート。





よぉーーーし!!!

今日はおもいっきりはしゃぐぞ!!!!













≪もうすぐ、自分の胸が締め付けられることになるとも知らずに≫









続く..........





私も一応乙女だった、てことなのかな?










アイツと私の日常。第十八話。







ぴぴぴぴぴ......ぴぴ





「っ・・・・・・・・ん・・・・・・・・・はぁ・・・」






今時には結構珍しいかもしれない、普通の電子音の普通の目覚まし時計で、私は今日も目が覚める。








昨日、桜沢に何か言おうとした。


だけど、空手から帰っても、家の電気は点いてなくて、まだ奴は帰って来てなかった。

すぐに帰ってくるだろうと思って、ドスッとソファーに座り、ギュッとクッションを抱きしめ、コメディーを見てた。


7時。


・・・・・・・・・桜沢なら、もうそろそろ帰ってて、一緒に夕飯食べてる時間。




その日は、はじめて、一人きりで夕飯を食べた。






シャワー浴びて、着替えて、布団に入って、友達から貸してもらった「BACCANO!-バッカーノ-」を読みながら、奴が帰ってくるまで待っていた。




















そして今に至る。










白い天井をボーっと見上げ、ポリポリと頭を掻いて、朝か・・・・とか呑気に思う。


頭の左側には、しおりもはさまれていないバッカーノが、ポツン、と置いてあった。






静かだな・・・・・。



時計を見ると、まだ朝の7時。

学校があるわけでもないのに、時間にきっちりな普通の目覚まし時計は、いつもの時間に私を起こしたのだ。


いつもなら、目覚ましが鳴ってもすぐに起きないのにな・・・・・・・・・・・(笑)



もう一度寝ようか、とか考えたけど、どうも昨日は本読みのせいで早く寝てしまったみたいだから、もう眠気がなくなってた。



今日は、なんだかポカポカ陽気みたいだな。


雀がいっぱい鳴いていて、半分だけカーテンのかかっていない窓からは、朝日が流れ込んでいた。

静か。


だからかな。

今、この状況で、自分のベットに寝転がってボーっと上を見て、隣には本を置いているのが、とてつもなく心地良い。



樹との約束は1時からだし。

それまで何してよう・・・・・・?






「ん。そういえば、奴は帰ってるのかな」



むっくりと起き上がり、裸足のまま、家の廊下を忍び足で歩いた。

いざ、桜沢ルームへ。(笑)




カチャン.......


出来るだけ音を立てないように、桜沢ルームの扉を開けた。


「邪魔するぞー・・・・・」


引き続き、忍び足で部屋の中へ侵入した。



スー....




どうやら、帰っていたらしい。



静かな寝息が聞こえていた。



「・・・・寝てんのかぁ・・・」

当たり前だ。




そっと、桜沢のベットに近づいてみた。





「・・・・・寝てる時も整った顔してんだなー・・・・」

なんだか悔しい。




桜沢の寝姿は、なんだか弟の様な感じがした。

カッコイイけど、可愛い・・・・みたいな?



「・・・・・自分の家じゃないってーのに、図太いのか、こいつは」



最後に、言えるだけの皮肉を置いて、私は桜沢の部屋から出ていった。









「ふぅ・・・・・・・さーて。 バッカーノでも読もうかな」



















「梅さん、おはよう」


「ん。おはよー」




9時ぐらい。桜沢は起きてきた。


桜沢がおきて来るまでの間、私はバッカーノを読み終えて、暇になったので、本屋にいって暇を潰した。



で、今。私はM-1の再放送を見ていた。





「昨日はごめんね」


「何が?」


「帰りおそくなったから、当番だったのに夕飯つくらなくて」

「いいよいいよそれくらい。今時の学生は、帰りが遅くなるのが当たり前なんだから」


「でも、梅さん寂しかったでしょ?」

「うん」

「え、ほんとに?」


「え?・・・・・・・ばぁす!!! んなわけないっでしょ!! 今のはたまたまよ。たまたまっ」


「・・・・・・そっか」


「うんっ。空手の帰りは樹が送ってくれたし、帰ってからも電話したし!!!」

  


「・・・・・・・・・・・そーなんだー」


「? なに「朝食べて無いでしょ? 今からつくるから、ちょっと待ってて」




人の言葉さえぎるなんて良い度胸してんなこのやろー。



・・・・てか、私強がっちゃったなぁ・・・。 電話なんかしてないっつーに・・・。

まぁ、いいか。 過ぎた事だし。















「ごそうさま」


私よりも早く、桜沢がご飯を食べ終えた。


それで、流し台に食器を持って行く時、こう言った。



「今日、俺出かけるから」

「へえ・・・・どこ?」

「ちょっと買い物。 買いたいものあるから」

「ふーん」



私はこの言葉を、信じて疑わなかった。


疑う理由自体、無いしね。






「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」


「後私がやっとくよ。桜沢は身支度でもしてきたら?」

「あぁ、ありがと。 じゃぁお願い」

「はいはーい」




不思議だ。




桜沢への片思いをやめたら、なんだか全然普通に会話出来てる。

恋する相手には気まずさを感じる・・・・・・・・・・なんだかんだいって、私も一応乙女だった、てことなのかな?










朝。



前と同じ


いつもどおりの朝が、私たちに戻ってきたようです。






続く........









「もう、捨てました」












アイツと私の日常。第十七話。







「・・・・・・・・・」




-いいぞー!-

-あっついねぇ-

-お似合いだよ-

-いいなぁっ-





「・・・・・・・・・」









なんかもう・・・・・









疲れた。











周りの声聞いてるだけで、なんか物凄く疲れるんだけど・・・・・。


なんでだろ・・・・




あー・・・・


目が霞(かす)んできた・・・・・やっぱ疲れてんだわ・・・・。





ガチャッ


「梅っ」



放心状態になっていた私は、扉の開く音と、奈那子の声で、現実に戻された。









ギュッ・・・






「・・・・奈那子?」


「やっぱり・・・・・」

「え?」





「やっぱりあんた、泣いてたね」










ずっと放心状態のままだったら良かったかも。




そっかぁ・・・・私・・・・今泣いてるんだ・・・・・。



現実に戻され、はじめて自分の状況に理解出来た私は、奈那子の温もりに甘えて、少しだけ声を出して、泣いた。






何が悲しくて・・・泣いてるのかな。




別にさ、目が合った秒数なんてどうでもいいでしょ。

秒数気にするとかマニアかって。



いいじゃんか。

桜沢と条乃山さんはカップルだよ。カップル。ナイスカポーだよ。


失明するまで見詰め合ってればいいさ。


あたしはこの若さで失明するのは御免だからね。


逸らされて万々歳だよ。けっ。




「梅」

「ん?」

「声に出てる」

「・・・・・・・・」














「はーいおつかれーっ今日の練習はここまで! 各自、自分の荷物をもって、集合!!」




いつ終わったのか。

気がついたら、先生が号令をかけていた。


結局、練習が終わるまで、奈那子は私についててくれた。


嬉しいな・・・・このやろう・・。






「よしっ全員集まったなー。 皆ちゃんと台詞も覚えてたし、はじめてにしちゃあ上出来だったぞ。明日は休みだが、イメトレが大事だから、しっかりやっておくように。そいじゃあ、解散っ」



先生が解散宣言をしたと同時に、皆喋りだして、一気に騒がしくなった。




今日は、先生の殆どが出張に出てるから、全ての部活動は無し。


部活がない時は、いつも一緒に帰ってるけど・・・・・・きまずい・・・・かな・・。

でも、あいつになんか言ってやらないと私の気が納まらない!!!


よしっ



覚悟を決めて、桜沢を呼ぼうとした。


でも、



やめた。







条乃山さんと桜沢が、手繋いで一緒に体育館を出て行く後ろ姿が視界に侵入してきたから。




何やってんだよ私っ!!!


ナイスカポーだっていったばかりじゃん!!!!

そりゃ手繋いで帰るでしょっ、話は家でいいじゃん!!





でも・・・・・・・私の目の前で・・・・・・・恋人繋ぎしなくても・・・・・いいじゃん・・・・・・。



すこーしショッキングだったから、思わず足が崩れそうになった。


だけど、





「うーめっ」





体育館の入り口から、私の名前を呼ぶ、低くていい感じの声が響き渡ってきたお陰で、なんとか立っていられた。






その声の主は、



私の彼氏である、樹だった。





もう(仮)彼氏とかはいない。


私には「彼氏」がいる。




樹が私を呼んでくれた事が嬉しくて、思わず笑顔で駆けていった。



まわりの生徒は、樹君だ、かっこいー。とか、え、あの二人付き合ってるの!?とか、ヒソヒソ騒ぎ出した。


嬉しかったのは、「まあ、あの二人ならお似合いだよね」という声が聞こえたこと。


空耳じゃないからね。





樹の登場で、さっきまでブリぶり笑顔をしていた条乃山さんが、すこしむっとした顔になっていたが、爽やかにスルー。


なんだか、桜沢に睨まれた様な気がしたけど・・・・・・・喧嘩なら家で買ってやるから。




たぶん、今一番輝いてるのは私たちだよ。



桜沢なんかにこの輝きを渡してたまるものか。




「樹っ」


バッ


私は、半ば飛びつく感じで、樹におもいっきり抱きついた。


「帰るか」

「うんっ」


樹は、私の頭を撫でながら言った。

この優しさがたまんない。



「奈那子、ばいばい!」

「うんっ、また月曜日!!」


奈那子も、にこにこしながら見送ってくれた。









姫羅木 梅。

私には今彼氏がいます。

正確には仮ですが、文化祭の日になったら、正真正銘の「恋人」になります。


え?


桜沢の事が好きなんじゃないのかって?



あははっ





私、姫羅木 梅は。


本日をもって、桜沢 健斗への想いを完全に捨てました!!!


















「今日空手、迎えに行くから」

「あ、うん。ありがとー」

「そんでさ、明日って空いてる?」

「空いてるけど?」

「んじゃさ、遊びにいこうぜ」

「やった!! いくいくっ」




一般市民の方々には、私たちが微笑ましい恋人同士にしか見えないね。





続く...........