なぜWebメディアの発注は失敗に終わるのか?(観光メディアを考える) | 京都から世界へ -藤田功博の京都日記-

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「京都の魅力を日本へ、世界へ」をキーワードに活動する観光企画会社のぞみ代表・藤田 功博のblogです。アイデアとフットワークを武器にして、観光業界を盛り上げていきたいと思っています。

 

先日ある都道府県の観光振興を担当される方と会食でご一緒して、楽しい時間を過ごしました。

現場の担当者が前向きな地域は今後伸びる可能性が高く、僕も色々と今までの取り組みをお話しました。

 

その際に、Webメディアの活用法というテーマになったので、今あらためてWebメディアの3つの特徴を考えつつ、現場で起きている「Webメディアの業務委託」がなぜうまくいかないのかを分析してみたいと思います。

 

まず、Webメディアの特徴は大きく3つあります。

 

【Webメディアの特徴】

1.保管期限がない

2.表現規制がない

3.連続性が求められない

 

1.保管期限がない

新聞や雑誌の場合は次の号が発売されたら倉庫で廃棄となり、実質的に読むことはできなくなります。最近ではオンラインでバックナンバーを見られたりするケースもありますが、有料であったり一部のみであったりと制限があります。

 

ネット媒体は逆に、サーバが動く限りいつまでもそのコンテンツを見ることが可能です。

これは他メディアに比べて保管コストが劇的に安いからです。

 

つまり、マスメディアのように「瞬間最大風速」を狙わなくて良いということになります。

毎日10名しか見ないコンテンツでも、10年20年見られるような内容を狙うことも可能だということです。

 

(現場で起きていること)

毎週あるいは毎月の「アクセスデータ会議」で、数ばかりが指標になってしまいます。

Webコンテンツはよほど気をつけないと、PVしか評価指標がなくなってしまい、

アクセスが多いことが善、そうでないことが悪、となりがちです。

 

しかし上記のように、ある1ヶ月に膨大なアクセスがあっても、ピークが過ぎたら何の価値も持たない情報は、結局は焼き畑農業となります。息の長い良いコンテンツを作るという方向性もあるということは、発注側が意識せねばなりません。

 

現場ではなぜか「1年経ったらデータは破棄」だったり、「2年ごとにリニューアルして過去のコンテンツはリンク切れになる」といったパターンがほとんどです。

良い記事をきちんと蓄積していけば、積み重なって大きなアクセスになる可能性もあるのですが、業者が変わると同時に終わりというものが多いですね。

 

観光コンテンツなどは特に、きちっと作り込んでおけば来年も再来年も手直し程度で使えるものも多いものです。行事とか名所の見どころとか。それなのに毎回、ゼロから作っているパターンがほとんどです。

 

これは、1-2年おきに担当企業が変わるので、前の企業が作ったものをさわりたくない、ということもありますし、わざと過去の記事の責任が及ばずに済むように、芸能人などを登用して肖像権の契約を自社担当期限だけにし、わざと時限的なコンテンツにしたりします。

 

 

 

2.表現規制がない

これは他のメディアと比較して最も異なる点です。表現の自由は担保されているものの、現代のマスメディアではかなり表現に規制があります。また、「マス」を相手にする以上、テーマ性の深い企画や、マニアックな企画はできません。「この100名は絶対見る」というように「当たるのがわかっているコンテンツ」でも、マスメディアであることを理由に発信することができない、という制約があります。

 

Webでは原則としてこのような規制がありません。何を書いても誰に検閲されることもありません。だからこそ玉石混交の状況となるのですが、マスメディアにできることはマスメディアにまかせて、できるだけディープだったり、コアな企画で勝負に行くというのがネットメディア戦略の基本となります。

 

(現場で起きていること)

マスメディア以上の検査と管理が行われ、制作サイドが萎縮します。

特に「会議」や「事前提案」による、自主規制の多さは日本独特の「忖度」が働くため、

良いコンテンツとは相反します。

 

コンテンツはその性質上、形になって初めて面白さが伝わる場合も多いのです。

「まずは企画書を」となった瞬間に、その面白さが表現しきれないものもたくさんあります。

なのに実際には、面白さを判定するスキルを持たない者がその面白さを審査し、

OKが出てからやっと作り出せるというような例がとても多くあります。

 

本当に面白いものを発注で作ろうと思ったら、最悪炎上までする「覚悟」を持って取り組まねばなりません。百歩譲って、好き放題発注先に暴れてもらって、「事後的に」コメントするくらいの体制が必要と思われます。

 

かつ、進捗を管理する会議は「できるだけ少数」で実施すべきです。

意思決定者が多くなればなるほど、つまらないコンテンツになり、

マスメディアとの差別化ができなくなります。

 

 

3.連続性=形式が求められない

テレビや雑誌をイメージするとわかるのですが、基本的な「枠」というものが存在します。

テレビで言えば、15分とか60分のひとつの単位であり、最初に導入があって、コーナーがあって、エンドロールが流れてというような。

雑誌であれば、冒頭に特集があって中面にコラムがあって、目次があってというような。

 

Webサイトには本来このような「形式」は必要ありません。

制作側にマスメディア出身者が多いためにどういう「枠組み」をしようとするかと考え、

「連載」の企画を立てがちです。

 

毎回の記事を同じような長さにしたり、写真は何枚以上、といった形式を構築しようとしますが、

本来Webはそのような発想にとらわれる必要はありません。

 

ある時は動画で生中継し、ある時は長いコラムを掲載し、ある時は文章すらなく写真だけアップするということでもかまわないのです。

 

(現場で起きていること)

業務として受注する場合は、それでは定量化できないため、「◯◯というボリュームの記事を◯◯本アップする」というような形にせねばなりません。このような制約が特徴を弱めてしまっている部分があります。

 

本来面白いテーマの発掘には波があったりするものです。

今週はすごくネタがある、そのかわり先週はなかった。などなど。

 

なのでその波に合わせた発注の在り方を検討する必要があると思われます。

 

本来は、特ダネがあるならトップページ全面でそれにしても良いのです。

ここでも、弾力的な体制、意思決定のフローがないと機能しません。

 

 

以上をふまえつつ、僕だったらどういう風に観光メディアを考えるか?

断片のようなものを列挙してみます。

 

 

・そもそもどういう記事を見たらその場所へ行きたくなるのか?

・マイナーなものをメジャーにするよりメジャーなものをよりメジャーに伸ばした方が良い

・季節の大ネタをまず見つけてそれをどう料理するのか徹底的に考える

・エンターテインメントだけが旅行ではなく、出張も旅行であり、視察も旅行である。目的を持って移動すること全て旅行である。

・エンターテインメントの要素にしばられるとネタ切れしやすく他メディアと類似しやすい。

・エンターテインメントの旅行は土日に集中する。平日に行われる「旅行」とは?またそれを促進するための情報とは?

・地元サイドからのマーケットアウトの情報ではなく、鉄道・アウトドア・ペット・アニメ・スポーツなどのキーワードレベルから着想すると何が浮かぶか?

・編集部制とし、市民の人の協力を得るにはどうしたらいいか?

・すぐれた書き手を発掘するための仕組みは作れるか?

・サッカー/畜産/日本酒 など、観光とは一見交わらなそうなキーワードから料理できないか?

 

 

どれだけ自由に、「観光」という枠組みを外して考えられるかが、「楽しいメディア」につながり、そのメディアが「結果的に」観光客を増やすというサイクルにつながるという構想が面白いのではないかと思いますね。

 

 

 

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