京都数学自主ゼミサークル

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京都で活動する数学自主ゼミサークルです。こちらのブログでは自主ゼミの進捗報告をします。

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2月16日(土)3時から複素解析ゼミ4回目をしました。今回の参加者は私も入れて6人でした。

 

今回は複素解析の最初で最大の山場とも言える積分定理でした。この本、笠原乾吉の複素解析ではグリーンストークスの定理からコーシーの積分定理および積分表現公式を導く方法です(他には三角分割を使ってホモロジー的に証明する方法も有名です)。

グリーンストークスの定理を使えば簡単に証明できますが、問題はグリーンストークスの定理をどう扱うかです。難所の一つでしたが、発表者のなっふぃさんが流れるような太刀筋で要領よくまとめてくださいました。

 

本当はコーシーの積分定理と積分表現公式の意味まで話し合えればよかったのですが、私の至らぬところですっかり忘れていました。続きの節でも触れられるかもしれませんが、ここで簡単に補足しておこうと思います。

コーシーの積分定理は「区分的滑らかなな閉曲線上で正則関数を複素積分すると積分値が0である」という定理です。積分値が0になるというのが少し不思議な感覚になるかもしれませんが、高校や大学初年度でもやっていた「定積分では、原始関数の終点の値から始点の値を引く」という計算を思い出せば、閉曲線というのは始点と終点が一致するわけですから、0になって当然ですね。問題はその原始関数が存在するかどうかですが、コーシーの積分定理は正則関数の原始関数の存在を保証します(次節で証明する)。

面白いのは「正則関数でなければ閉曲線上での複素積分が0とは限らない」ということで、正則関数でない場合は始点と終点が一致するにも関わらず、引き算しても0とは限りません。これは次のコーシーの積分表現公式とも関係してきます。

コーシーの積分表現公式は「一点aを囲む閉曲線でf(z)/(z-a)を複素積分すると積分値がf(a)である」という定理です。この使い道はいろいろあるので次節以降に譲ります。

 

もう一つ補足として記号|dz|について触れておきます。曲線γ:z(t)上の微分型式dzがdz=z´(t)dtで定義されますが、|dz|は|dz|=|z´(t)|dtで定義されます。これは意味としては線素(微小長さ)で、概念としてはリーマン計量に近いですが長さだけで角度の情報がないのでリーマン計量よりは少し弱い概念です。この記号を使っている本はあんまり多くないと思うの、計算も間違え易いような気がします。たとえば複素積分の絶対値評価|∫fdz|≦∫|f||dz|では右辺のdzに絶対値のを忘れがちです(複素数に大小が定義できますか?)。

 

次回は3月2日(土)3時からで、発表は複素解析の専門家まっちゃん(!)です。

よろしくお願いします。