アーニー・ガンダーセン氏が最近、集英社から『福島第一原発-真相と展望-』を出版しました。氏は、YOUTUBEをつうじて、事故の早い段階から、メルトダウンの可能性を指摘していた人です。
 この本は、衝撃的なことを書いています。
 原子炉を冷やすには、燃料の崩壊熱を運ぶ冷却水の循環系統と、そこから熱を除去する海水の系統2つが必要です。これまで日本では、電源喪失により、前者の冷却系統が動かなくなったためメルトダウンがおこったと説明されてきました。ここから逆に、緊急用のディーゼル発電機が水没しなければ、あるいは、電源の復旧が早くできればメルトダウンは防げたと言われています。また、現在は、緊急用の電源を水没しないようにしたから、同じような事故は起きないだろうと考えられています。
 しかし、ガンダーセン氏は、福島1~4号機の冷却用海水ポンプは、津波によって流されたり、取水口が砂で埋まったりして使えなくなっており、「もしディーゼル発電機が無事だったとしても(メルトダウンは)防げなかったのです」と述べている。
 政府、東電、メディアは、これを否定するなら、きちんとした検証をして、それを誰でもわかるような形で公表しなければいけないのではないでしょうか。そうしないと、もう誰も信用しないと思う。
 あまりの驚きに、久しぶりに書きこみました。
 今回はかなり深刻なテーマ、被ばくの影響についてです。

 放射性物質による被ばくの影響を、人体実験で確かめることはできません。このため私たちが利用できるデータは、広島・長崎とチェルノブイリだけです。以下は、Union of Concerned Sientistsの主張の要約です。

 チェルノブイリの結果、全世界で5万3千人がガンになり、そのうち2万7千人が死亡すると考えるのが合理的です。このほかに、6千人がチェルノブイリが原因で甲状せんがんになり、15人が死亡すると考えられます

 チェルノブイリの影響を小さく報告する調査があって、人々を混乱させていますが、そうした調査は、被ばく量が非常に多かった人だけを対象にしていて、中・低位の被ばく者を合わせて考えると、最初に述べた数字が出てきます。

 たとえば、2005年の国連報告(Chernobyl's Legacy)は、1平方メートルあたり555キロベクテル以上のセシウム137が認められた地域を「とくに汚染がひどい地域」としています。そして、そこにいた人と原発復旧作業にあたった60万人のうち、通常であれば10万人がガンで死亡すると予測されますが、チェルノブイリによる被ばくのため、ガンによる死亡が4千人増加すると述べています。

 メディアでは、よくこの4千人という数字が取り上げられますが、これは「とくに汚染がひどい地域」だけの数字で、実際には、それよりも被ばく量が低い地域が相当範囲あり、そこでの健康被害が含まれていないので注意が必要です。

 現在、(安全な放射線量というのはなく)、放射線量が増加するにつれて、直線的にガンが増加するという理解が広がっています。とくに白血病では、このモデルが一般的に使われています。したがって、「とくに汚染がひどい」地域以外の健康被害も考えなければなりません。

 そこで国連の調査報告などをもとに計算すると、最初に述べたように、全世界でチェルノブイリのため、5万7千人がガンになり、うち2万7千人が死亡すると推計できるのです。

 以上が、要約です。

 チェルノブイリの被ばくによって、住民の何割もの人が数年でばたばたとガンになって死んでいくということはありません。ここで出ているのは、通常、死亡原因の20%はガンであるが(日本はもっと高い)、被ばくがあった地域では、それが0~4%程度増えるということです。

 これをどう考えたらいいでしょう。少ないとみるべきでしょうか、多いとみるべきでしょうか。

 私は、3万人近い人が原発事故による被ばくで死ぬとされているのですから、多いと考えるべきだと思います。今回の東北大地震で亡くなられた、行方不明になられた方の数に近い、とてつもない大きな数字であると思います。パーセントのうそにだまされてはいけません(パーセントの数字だけみると小さく見えてしまいます)。

参考:4月上旬 福島県の舘山曲田地区では、セシウム137が平方メートルあたり2200キロベクテルを記録しており、上記の「とくに汚染された地域」に相当すると考えられます。
出典:東洋経済
 いまだに資源のない日本では原発が必要だという声を聞きます。とくに電力会社から巨額の広告費を得てきたメディアで顕著です。先進国で石油が出る国は、イギリスとアメリカ以外にあるのですか、そうした国も脱原発に動いているのは、私の見間違いでしょうか、と突っ込みたくなります。
 
 原発が必要なら、やはり利益を得るものがリスクを負うべきでしょう。まず地産地消にのっとって、東京湾や大阪湾に原発をつくろう。石原もそういってることだし。ただ津波が心配なので、内陸の千葉や埼玉あたりでもよいかも。京都や奈良にも土地はいっぱいある。日本以外では、内陸で空冷式の原発の方が多いから大丈夫。
 
 都会に原発を作ろう by 初音ミク

原発賛成音頭 by タイマーズ

 ちなみに、もうすぐ刑務所に収監される堀江(大阪府知事の橋下は、ツイッターでその堀江を「天才ですね」と持ち上げている)は、朝生で、東京に原発をという意見に「それは暴論でしょう」と吠えていたが、「じゃあ田舎ならいいのかよ」とひとりぐらい突っ込めよ。堀江は、やっぱ原発は必要だという立場なので、そこから話が盛り上がったと思うが、みんな堀江と同じ意見だったんだろう。

 
 今日(4月25日)の日経は、警視庁が、震災、原発にかかわるインターネット上のデマの削除要請をしていることについて論じている。
 被災地でありもしない犯罪が多発しているとか、外国人が重大犯罪に組織的にかかわっているといった事実無根のデマについては、削除要請に賛成したい。これは、事実でないことが、警視庁によって確認されているからだ。関東大震災で、井戸に毒が投げられたという事実無根のデマにより、多くの外国人が虐殺されたことを思えば、これは当然必要な措置だ。(ルポライターの佐野愼一氏や鎌田慧氏などによれば、関東大震災では、警察がデマの発生源であった可能性が指摘されている)

 問題は、意見が分かれる事柄についてさえ削除要請が出ていることだ。日経では、「原発事故でヨウ素接種が必要」であるとの書き込みが「デマ」と断定されているが、はたしてそうか。
 たとえば福島県の場合、ヨウ素剤の配布基準は、24時間の被ばく量が50ミリシーベルトを超える場合だ。それ以下の場合、ヨウ素接種は必要ないということになるが、日本政府は一般人の1年の被ばく限度を20ミリシーベルトとしているし、原発作業者の年許容量(通常時)は50ミリシーベルトだ。とくに影響が心配される子供や妊婦は、はたして1日50ミリシーベルトまで、ヨウ素を飲まなくても安全なのか? いろいろな意見があって当然で、ヨウ素が必要だという意見をデマとは言えない。
 
 前日のブログで書いたように、被ばく量が100ミリシーベルトを超えても安全だと科学的に決着がついているという政府、メディア、御用学者の意見こそ明らかな「デマ」だ。
 「デマ」の削除要請は、正しいか誤っているか、一点の曇りなく断言できることだけに厳しく制限されなければならない。
 警察や政府に、何が「デマ」であるか決める権限を与えてはいけない。

 日経新聞によれば、国立がん研究センターは、100ミリシーベルトの放射線を浴びても、がん発生のリスクは野菜不足並だと主張している。日本の政府、メディア、御用学者はすべて、一定の基準(100ミリシーベルト以上の高いレベル)までは放射線をあびても安全なことが、科学的に証明されていると主張している。
 しかし、実はそれは、強い批判を受けている、ひとつの考え方に過ぎない。
 もうひとつの有力な考えは、そこまでは安全だという基準などはなく、浴びる放射線量が増えるに従って、ほぼ直線的にがんの発生率が高まっていくというものである。海外メディアでは、しばしば、こうした考えが紹介されているが、日本のメディアでは決して出てこない。
 前者の説が絶対正しいなどという決定的なものはなく、ふたつの説が争っている。しかし日本の政府、メディア、御用学者は、前者の説を絶対正しいと主張している。
 水俣病が発生した時、日本の政府、メディア、御用学者(東京大学医学部)は、有機水銀、チッソ(会社)が決して原因ではないと主張し、被害の拡大をまねいた。それと同じことが、いままた、おころうとしている。せめて、科学的にはっきりわからないので、しっかり経過を見る必要がある、というぐらい言えないのか。