お疲れ様です。


夜明け前の公園にて。

18時台の公園にて。
今日も純は元気です。

📖📖

松永多佳倫『確執と信念 スジを通した男たち』を読了。
一言でいうと、めちゃくちゃ面白い野球ルポルタージュでした。紛れもない名作です。
本書は、五人のレジェンドにそれぞれ一章が割かれており、計五章で成り立っています。
各章について、簡単に感想を述べます。

門田博光がかっこよすぎます。かっこよすぎる、と同時に切なくもありました。
門田を描いた、この第一章で本書が持つ魔性の面白さに気付き、早くも痺れました。

第二章は田尾安志。
イチロー師匠が渡米する時、
「イチローならアメリカでも首位打者を獲れる」
と言っていた唯一の野球解説者が田尾です。デーブ大久保などは「イチローは通用しない」って言ってましたからね……(はっきり覚えてます)。
田尾の(人としての)大きさ、柔らかさが鮮やかに描かれています。また、楽天のオーナーの小ささや浅ましさもしっかりと描かれています。
人はどう在るべきか。いや、自分はどう在りたいか? それを考えさせられました。

広岡達朗の章。
この章が最も面白かったです。
まともに感想を書きだしたら、1200字くらい欲しいので、
「面白かった」
とだけ言っておきます。

谷沢健一もかっこいいです。かっこいい、だけでなく、谷沢には品があります。
(谷沢の章に脇役として出てくる)杉下茂は「かっこいい」をも超越した存在。読んでいて、
「こんな神様みたいな人が実在するのか……」
と訝しんでしまうくらいでした。想像を絶します。
星野仙一と桑田真澄。彼らについてのイメージは本書を読んで(残念なことに)やや陰りました。

江夏豊は哲学者、あるいは(真っ当な)宗教家の領域に到達しているように感じました。
ただ、江夏の章だけは、著者のエモーションが前に出すぎているきらいがあります。もちろん、この著者なら、そんなことは織り込み済みなのだろうし、それくらいに強く取材者を酔わせてしまう「何か」を江夏という男が持っているのでしょう。

かっこいい人間をかっこよく書くルポライターは(いくらでも)います。
が、対象となるかっこいい人物が併せ持つ「かっこよさ以外の何か」を、これほど叙情的、かつ(史実をベースにして)面白く描けるルポライターは稀有だと思います。
この著者の他の作品を読み漁りたいです。