中には


ノートパソコンと


履歴書が20枚近く入ってい

た。




それだけじゃない。




マッサージの講習の資料や




キャバクラのイベントのチ

ラシやら


居酒屋の新メニューなど




夫は一体何をしていたんだ

ろうか。




履歴書を見ると


それこそ異様だった。




金髪につけまつげびっしり

の若い女の子もいれば、


白髪まじりの中高年の男性、


まだまだあどけない高校生

の履歴書もあった。




ここ数ヶ月、夫は本当に忙

しいそうだった。


夫婦生活もぱったりとなかった。


明け方帰ってきて、昼過ぎ

に出勤していく夫。




忙しいの一言で片付けられ

ていた普段と違う夫の行動

が、


転職していた事実を知るこ

とで、


久美子は妙にすっきり納得

していた。



そして翌日、


警察に捜索願いを出しに行

った。
子供がたくさん欲しいと建

てた家は大き過ぎて


今の久美子には寂しい空間

でしかなかった。




白い壁には久美子が作った

ドライフラワーのリースが

いくつも並び




天井には夫と2人で選んだ


シャンデリア。




ヨーロピアン調の家具。




セレブとはいかなくても


十分すぎる生活だった。




幸せな家族だったのに…




結局




娘の幼稚園のお迎えまでは

何も手につかなかった。




夜になり、真理亜が寝たの

を見計らって


純一の書斎のドアを開けた。




純一は書斎の掃除をするこ

とを嫌がったので


鍵こそかかっていないもの

の、久美子が書斎に


入ることは滅多になかった。




出張に行くと見送った


あの日


夫がどんな顔をしていたの




久美子には思い出せなかっ

た。




机の引き出しを開けると


几帳面な純一らしく


綺麗に整理整頓してあった。



金庫を開けると


通帳、印鑑などそっくりそ

のまま入っていたので、久

美子は胸を撫で下ろした。



良かった…




もし女と駆け落ちしてたら

どうしようと


不安だったのだ。




あの人が自分はともかく


真理亜を捨てるなんて


やっぱりありえないわ!




通帳を開けるとかなり残高

が減ってはいたが


ここ数ヶ月『ITコーポレー

ション』から振込みがあっ

た。




毎月10日に金額は40万ほど

だった。




ふと夫のビジネスバッグが

目に入った。




そうだわ、あの日はボスト

ンバッグで出掛けたんだわ!




やっぱりおかしい!


どうして気付かなったのか

しら。




久美子はごくりと唾を飲み

込んで


バッグに手をかけた。
そう言った後、


田口はしまったっと後悔した。




実際、純一はクビになった

のだが、




奥さんの手前、クビになっ

たとは言えなかったし、


純一が退社していた事を隠

していたなら、


自分が言うべきではなかっ

たと思った。




元々、田口は嘘がつけない

男なのだ。




久美子も田口とは面識があ

り、


田口が安易に嘘をつくとは

思えなかった。




「やだ~、田口くん!また

冗談言って~!」


と、言えたらどんなに楽だ

ろう。




あぁ、これが現実なのだ。



「もしもし~!」


「もしもし~!奥さん!」



田口の呼びかけも虚しく




久美子は受話器を置いた。



まだ娘、真理亜は5才。


夫に何かあったらと思うと

足が震えた。




警察に相談するべきか




どうしたらよいのだろう。



一体どうなっているの?




あなた……




久美子の頭は思考能力をす

っかり無くしていた。