枝窪純子 

セリナを演じる
最新舞台。
【私信、ユートピアにて。】
観劇ネタバレ長文レポ②です✨




『もしもし、リュウビくん?モモだよ』
【完熟娘】のデリヘル嬢のモモが、甘えた声で電話をしている。
『えっとねぇ、寂しくてぇ、声が聞きたくなっちゃってぇ、何してるの?…起こしてごめんね。
朝まで飲んでたら眠いよね?ううん、我慢する…そうだよ、モモ、今月誕生日、 
ほんと?デートしてくれるの?やったあ!!
嬉しい嬉しい嬉しい!どこでもいいの?行きたいとこ考えとく!…今夜?お店行けるよ?
うん、じゃあ後で!大好き!』


空き地…
シシド、コウジマが話している。
その間にアズサがいる。

なんだかアズサのことで揉めてるみたいだ‼

コウジマが、【アズサを低価格で勝手にひと月契約で売っちゃった】ことに、シシドが腹を立てているようだった…。

『だからぁ。業務内容を絞ったから割り引きしたの。お喋りするだけ、エッチなプレイはなし!』
とコウジマ。
『だからぁ。約束は破る為にするんだって何度言ったらわかるんだ?部屋に連れ込まれた途端、あんなことやこんなことや…』
『カントウさんはお前と違って、常識的な人だよ!』
シシドの言い分にコウジマが反論する!
『デリヘル嬢を1ヶ月独り占めしたいって言う奴は十分非常識だろうが』
事情を詳しく知らないシシドの言い分はごもっともw
『落ち着いてください二人共!私の為に喧嘩しないで!くぅ~人生で一度は言ってみたかったセリフ~!』
アズサうけるwww
シシドはアズサを無視してwかまわず続けるw
『…何企んでるの?
そんな滅茶苦茶な話、裏があるとしか思えねぇ』
コウジマは、
『カントウさん、タレント事務所の社長なんだ。
そのままアズサを面倒見てもらえないかなあ~?なんて…』
とシシドに返した。
『またかよ!…【風俗嬢救済ドキュメンタリー】なんて、ニッチなCS番組に影響されやがって!
店長が嬢の転職活動してどうすんだよ!』
『もういい歳だし、本気で社会の役に立つ仕事がしたいんだ。培ってきた業界のノウハウを活かし、セックスワーカーを救済する優良店としての使命を掲げ、孤立しがちな風俗嬢と社会を繋ぐバイパスに…』
『うぜぇ』
コウジマの夢のような話をシシドは一喝した。
『アズサはタレント向きだと思わないか?明るいし、面白いし、可愛いし』
このコウジマの一言に、アズサ狂喜乱舞w
『うひょ~♪タレント!いいですね!?私、中学生の時【あず菌】て呼ばれてたんです、アズサに触ると不幸がうつる~。
そんな【あず菌】が電波に乗ったら…日本中を不幸にできますね♪ぐへへ』
へんな笑い声を挙げるアズサを見やりながら…シシドが、
『コイツがタレント向きか、胸に手を当ててよく考えろよ』
と、コウジマに向かって言い放った。
『行くぞ』
コウジマは、アズサの手を引いて行こうとする…。
『自分のしていることが、いかに残酷かわからないのか?暗い所に光が差し込めば、否応なしに気づいてしまう。
あぁ、ここは一番底なんだって。こんな所なんだって』
シシドはコウジマに向かって叫んだ。
『真っ当な人間なら、光差す所を目指さなきゃ』
コウジマもシシドに叫び返す。
シシドは、そう言うコウジマにこう返した…。
『もう一緒には組めねぇ。憐れに思ってくれ。
深海魚みたいに、暗い所でしか生きられねぇ奴もいるんだってな』
…と。
『残念だよ』
コウジマは少し苦渋な表情を浮かべながらアズサを連れて去ろうとする…。
『安心してください、プロデューサーさん!
私は必ず戻って来ます!約束しましょう!
アイルビーバック!アイルビーバック!』
アズサは、ターミネーターのシュワちゃんのセリフを叫びながら親指を立て…やがて去っていった。


デリヘル待機部屋…。

モモが手紙を書いている。
ミカンはせっせと勉強中。
そこへ…
『マジ疲れたぁ、マジ汚かったんだけど、
マジ勘弁!
女呼ぶならマジ掃除して!』
と、愚痴をタラタラ吐きながら、ユズが入ってきた。
『朝から御愁傷様、ココ入る度に、ユズと顔あわせてる気がする。どんだけ入ってんの?』
モモが笑いながらユズに聞く。
『毎日』
ユズの答えに『うける』と笑うモモ。
『レターセットなんて、小学生ぶりに見たんですけど』
ユズがモモの手元に目を落としながらそう言うと…
『遺書だからぁ、気合い入れて可愛いの買ったのぉ』
モモが明るくそう答えた。
『は?死ぬの?』
ユズは当然そう聞き返す。
『死ななぁ~い!…リュウビくんが書けって』
リュウビって、確かモモが電話してた相手だ…。
『三国志の?』
え?ユズそっち?www
『知ってるの?!!!』
ちょ…モモちゃんwww
ここからしばらく噛み合わない会話をお楽しみくださいwww
『有名っしょ』
『やっぱ、リュウビくん有名なんだぁ。それでさっき電話出なかったんだぁ』
『まだ生きてんの?!』
『生きてるよ!ラインは既読ついてるもん』
『ラインすんの?!』

『ホスト…』
堪らずミカンが、ぼそっと口を挟むwww

『…なんだ。ホストかよ!不細工に金貢いで、ばっかみたい』
ユズのセリフに…
『不細工じゃないもん』
と、モモ反論!
『ぜってぇ不細工!ぜってぇ不細工!ぜってぇ不細工!なぁ?』
ユズにフラれて、ミカン小さくうなずく。
『ほら、マジ絶対不細工、確定~!』
ユズ、してやったり顔でニヤリ!
『これから会うんだから、やめてよ。
このやりとり思い出しちゃうじゃん』
デリヘル待機部屋はなんだか、わちゃわちゃwしてて楽しそうだ! 
ユズは『練習させて』と、ミカンの爪にネイルをはじめた。手を取られ必然的に勉強の手を止めざるを得なくなってしまったミカン。
『遺書って、誰に宛てて書くの?』
モモが聞く。
『最後の挨拶っしょ?お世話になった人には全員、書いた方が良くね?』
ユズの意見にモモ納得。
『じゃあ、ユズとミカンにも書こうっと!』
意気揚々に言うモモに、
『世話してねーし』
と、ユズは笑いながら返した。
『二人といると楽しくって、待機時間があっという間だよぉ。独りだと寂しくてぇ、ずっとライン待っちゃうからぁ』
『ミカンといて楽しい?こいつ全然喋んないじゃん!』
モモの言葉にユズが笑いながら返す。
『ミカンは喋んないけどぉ、聞き上手でぇ、モモの話を最後までじっと聞いてくれるからぁ、
ほんとにありがとうって感じ』
『ふーん』
ユズが、そうなんだ…みたいに相槌を打つ。

モモがそんな風に思ってくれてたなんて…
ミカンはなんか嬉しそう。
ユズはそんなミカンに…、
『ココに来てもうすぐ1ヶ月じゃん。親には連絡してんの?』
と聞いた。
『・・・・・・・・』
ミカン無言。
『警察沙汰になったらやべぇから、マジで連絡いれろよ!』
とユズは更に忠告する。
『怒らないでぇ。ユズはお金の為にココにいるんだろーけど、ミカンは行く所がなくてココにいるんだよ。帰れなんて言わないで。帰る所があればとっくに帰ってる』
と、モモが援護した。
『は?帰れって言ってねえし、連絡しろって言ってんの。コイツのせいで、店潰れたらやべぇだろうが!』
ユズがそう反論していると…
『おつー!』
と、コウジマが入ってきた…。


スロットが大当たりする音が響く…。
サトシが小さくガッツポーズしながら登場!

サトシの部屋。
サトシ帰宅。

ギターを手に曲を作ろうとする…が、すぐにやめてしまった。
そして、部屋の隅からエロ本を取り出し、ベルトを外しズボンを降ろしはじめた…。
そして、その雑誌を広げて見ながら電話をかけはじめた。
(デリヘル待機部屋にいるコウジマの携帯がけたたましく呼び出し音を挙げる)
サトシは、携帯は持っていないので固定電話の子機だったが…。
子機の向こうから…
『お電話ありがとうございます!デリバリーヘルス【完熟娘】です!』
と、コウジマの声。
『指名したいんだけど。ーアズサ…ちゃん?』
サトシは雑誌の写真を見ながらアズサを指名した。
『申し訳ございません。アズサは予約がいっぱいで』
『そっかぁ…いつなら空いてるの?』
サトシは残念そうに店長にwそう問う。
『1ヶ月は難しいかと』
『1ヶ月?!』
コウジマの返答に驚きの声を挙げるサトシ。
『当店一番人気でございますので』
コウジマはそう言うが…1ヶ月←カントウに買われているだけなのでは?www
『もしかして、このキャッチフレーズ、マジ?
【恋を知らないデリヘル嬢、処女】って?』
『マジでございます。お医者様のサインが入った、処女証明書も持ち歩いております』
サトシの質問に、そんなものあるわけねえだろって顔をしながら答えるコウジマw。
え?www
『へー。そんなのあるんだ。デリヘルってどんなこと出来るの?こういうの初めてで…』
おいらも全くわからないw
コウジマは丁寧にサトシに教授する。
『当店、恋人プレイがコンセプトになります。○○○キスから始まって、全身○○、○舐め、○○○、○○などがございまして、時間内は無制限○○可能でございます。
アズサに限りませんが、本番行為は一切お断りしております。ご理解ください』
(あえて伏せ字にしてみたのだが、なんかこっちの方が…(笑)←ご想像くださいw)
『はーい!』
コウジマの説明に明るくw返すサトシ。
『他の子でしたらすぐにご案内できますがいかがでしょう?』
コウジマの提案に、サトシ『お願いします』とノリノリ(笑)
『女の子のタイプは?』
コウジマが聞き返すと、サトシ怒涛の…(笑)
『ロングヘア、ショートカットは絶対ダメ!あとデブもダメ、痩せすぎも良くないなぁ、45キロから48キロで!歳は若い方がいいな、23くらいまでは許容範囲、あと言葉づかいが綺麗な子!言葉づかい綺麗な子!…大事だから二回言った!!』
…細かさが引く(笑)
『お客様は運がいい!ピッタリの女の子がすぐにご用意できます!お名前を教えていただけますか?』
『鈴原…鈴原智』
と、いきなり電話が切れた…。
驚くサトシ。
(コウジマも怪訝そうな顔で携帯を見ている)
犯人は…カヤノだった。
カヤノが固定電話の親機を切ったのだ…。
『いいご身分ね?』
カヤノがサトシを見下ろしながら圧のある声で言う。
『スロット…勝ったから…』
『スロットは誰の金でやったの?』
『すいません』
サトシ、ショボーンとなるw
『女を呼ぶなんて100年早えよ!このゴミ!エロ本読んでろ!』
カヤノの一喝に…
『本は飽きた!動かないから刺激が足りない!』
と、事もあろうか反論するサトシ!
『知らねぇよ!AV見ろ!動いてんだろ?!』
カヤノのボルテージもそりゃ上がるわwww
『スマホかパソコン買ってよ!』
サトシ…w
『プレステ!』
カヤノが面倒くさそうに吐き捨てたのも無理はないw
『あっ!そっか!プレステ…、
…会員証貸して!』
サトシ…ダメだこりゃwww
カヤノはごそごそと会員証を取りだし、サトシに投げつけた!
『ありがとうございます』
と、頭を下げるサトシを見ながら…
『なんでこんなことになっちゃったんだろう…限界。しばらく帰らないから。その間に荷物まとめて出てって』
カヤノは呆れて怒鳴りつけた。
『帰らないって、どこに行くんだよ!』
『どこでもいいでしょ?ーどこだって、ここよりはマシ』
『カヤノが帰って来ないと、本当に餓死するかも?』
『期待してる』
カヤノはそう言い残すと…出ていってしまった。
(こりゃ修復は難しいでしょうね?💦)
『何度も同じ事言わせんじゃねーよ!俺は充電中なんだよ!ミュージシャンには必要な時間だろうが!見てろよ!別れた事、絶対後悔させてやるからなっ!!』
サトシは、出て行ったカヤノにそう叫んで、部屋に置いてあったギターを手に取った…。
しばらくそれを見つめていたが…、
『クソっ!』
と、舌打ちを残してギターを置いて部屋を出ていってしまった。


デリヘル待機部屋…。

『店長、何したのぉ?プロデューサー、機嫌悪かったよぉ』
コウジマに向かってモモが聞く。
『マジ二人が喧嘩するなんて珍し~。いつもイチャイチャしてんのに』
ユズのセリフに…
『誤解を招く言い方をするな』
と返すコウジマ。
『誤解~?恋人通り越して、長年連れ添った老夫婦って感じ!』
と、含み笑いをするユズ。
それに被せるようにモモが…
『喧嘩の原因は?』
と聞いた。
『アズサに昼職を紹介した』
それに答えるコウジマ。
『今度はアズサ?懲りないねぇ』
とは、ユズ。
ん?前科があるのか?
『ユズは金がたまったら、ネイルサロン開くんだよな?モモは?これからどうするつもりだ?ミカンはいつ家に帰る?ちゃんと人生設計しろよ。
困ったら何でも相談しろ。
この仕事は年を重ねるごとに需要がなくなるし、履歴書にも書けない。いつまでも、こんな所に居たらダメだぞ』
『風俗店の店長が、風俗ディスるとか何事?』
ユズはコウジマに、そう言いつつ笑った。
『アズサじゃなくて店長が転職すれば?』
モモ言うねwww


『…人生設計ならしてる。一人暮らしするんだ。その為にココで働かせてくれ』
普段は無口なミカンが、ふいに口を開いた。

少しの間ののち、コウジマは吹き出した。
『ダメダメ、17歳を働かせると、僕、捕まっちゃうんでちゅ~』
言い方が露骨w
『見た目は誤魔化せる、黙ってればバレない!』
ミカンが反論する。
『世間は欺けても、お天道様はお見通しです。お小遣いならあげるから』
コウジマは、そう言いながらミカンに適当に札を渡そうとする。
『いいなぁ、ウチも身体使わないで金欲しいっす』
ユズは割りとガチでそう言った。
『ミカンは身体使ってますぅ。僕のJKセラピストだから』
コウジマは、ミカンを後ろから抱き寄せながら続ける…。
『日々いろんなストレスと戦うオジサンが【現役JKと密着する】という高いポテンシャルにより、体の芯から癒されるという俺が編み出した夢のようなJKセラピー』
恍惚な表情なコウジマに向かって…
『ロリコン』
と笑い飛ばすユズ。
『お前らもJK時代に会ってたら優遇されたのになぁ、残念でした』
『バカにすんな!こんなはした金いらねぇよ!』ミカンは叫びながらコウジマの腕を振りほどき、突き飛ばして出ていこうとする。
『日が暮れるまでに戻ってくるんでちゅよ~。
…やっぱもう戻って来んな!さっさと家に帰れ』
ミカンは、コウジマの言葉に足を止めた。
『こんな所にいちゃダメだって、そんなことわかってるけどぉ。じゃぁどこに行けばいいの?って感じ』
と、モモが言う。
『…仕方ねぇなあ!モモにピッタリな昼職探してやるかぁ!
俺がお前を、ここから連れ出してやるから、待ってろよ』
『約束だよぉ?』
コウジマとモモのやり取りを背に、ミカンは部屋を出て行ってしまった。


『ライタ!ライタ!さっさと歩けよ!』
セリナがライタを引きづって(花道から)現れた!
『離せ!離せっ!』
ライタはそう叫びながら、セリナを振りほどいた!
『お前どうかしてる!自分から近づくなんて!
シホは俺たちを殺す為に生き返ったのに!』
何かに取り憑かれているかのように、そうまくしたてるライタ。
『どうかしてるのはそっち!
高校中退して、家に引きこもって!10年ぶりに外に出たと思ったら、今度はシホが生き返った?!
いい加減過去と決別して、自分の人生を生き直せよ!』
セリナが悲痛な叫び声を挙げる!
『俺のことはほっといてくれ!』
ライタも負けじと叫び返す!
『一生このまま、暗い所で生きていくつもりかよ!』
ライタはセリナの怒声に、逃げるように立ち去ってしまった。



セリナは、ライタが逃げ去ってしまったあと…
1人でビデオ屋に入り、手紙をそっと落とした。
そして、何事もなかったかのようにビデオ屋を出ていく。
カウンターにいたナミキが、その落ちた手紙に気付きそれを拾った。


それと入れ替わり逆方向、ビデオ屋の奥からDVDを手にサトシがやって来た。
ナミキは手紙を慌ててポケットにしまいレジに戻る。
『…ジャンドラ(ジャンピングドラゴンの略か✴レポ①冒頭シーン参照)の鈴原さん…、ですよね?』
ナミキの顔がパッと明るくなった!
『え?』
サトシ困惑w
『やっぱり!わたし大ファンで。
三年前の下北ワンマン行きました~!』
『ほんと?!うわっ!ありがと~☆』
サトシ嬉しそうwww
『最近、お見かけしないですね?』
『方向性の違いで、解散したから』
『解散?!』
『あ。ううん、活動休止。もうすぐ復活する』
『そうなんですね?!絶対ライブ行きます!楽しみにしてます!』
『ありがと』
サトシひたすら照れるw
『あの…少しお時間ありませんか?もうバイト終わるんで、私物にサインしてもらえたらなぁ…なんて…ダメ…ですかね?』
断る理由などないwww
『いいっすよ』
『やったあ!すみませんが、外で待っててください!
すぐお会計しちゃいます!』
ナミキはそう言って、サトシからDVDを受け取ろうと手を伸ばす。
『あ、』
サトシは、ナミキに渡してしまったDVDを慌てて奪い返したw
『間違えたんで、替えてきます』
AV…(笑)
『そうですか。こちらでお戻ししますよ』
『いやいや?』
サトシは、ナミキの申し出をやんわり断りながら、レジの近くの棚にそれwを突っ込み、タイトルを見ずに違うDVDを持ってきた。
『こっちでした』


ユーリの部屋。

『入るよ』
そう言って入ってきたのはカヤノ。

カヤノは実はユーリのマネージャー。

『カヤノ?どうしたの?』
『離婚することになって。家出したの。
しばらく泊めてくれない?…曲作りは順調?』
『ぼちぼち』
ユーリは、カヤノの言葉に別段驚いた素振りも見せずにそう答えた。
『どんな曲書いてるの?』
『…失恋ソング』
自分らしくないのとタイムリーな答えすぎて、ユーリはなんだか笑ってしまった。
『そんな曲聞きたくない』
カヤノの返答に…
『言うと思った』
と言うユーリ。
『あの頃みたいにぞくぞくする曲書いてよ。20人しか入らない小さなライブハウスで、人生切り売りして歌ってた、あの頃。
ユーリ、めちゃくちゃ輝いてたよ。眩しかった!』
昔を熱く語るカヤノ。
『冗談やめて。ライブハウスはいつも薄暗くて…
眩しくなんてなかった』
遠い目で記憶を辿るユーリ。
『眩しかったよ!命削って声枯らして、ムカつく共演者に殴りかかって、酒飲んでゲラゲラ笑って、目があった男と夜の街に消えていく…まるで動物。
生きるってこんなにエネルギーが要るんだ、弱気になったらダメだって。励まされた。眩しかった』
カヤノもまた遠い目で昔を懐かしみながら笑顔を浮かべていた。
『ユーリは人間になったの』
『それで失恋ソングなんて、つまんない曲書いてるんだ』
カヤノがつまらなさそうに言う。
『どうして、そうつっかかるの?』
カヤノはユーリの問いには答えず…
『あ~、あの頃は楽しかったなぁ』
と、感慨深げに呟いた。
『悪いけど。もう、暗い所には戻りたくない』
ユーリはカヤノに拒否を示した。
『私だって戻ってほしいなんて思ってない。せっかくここまで来たんだから。でも…』
『でも?』
『…曲、書けないんでしょ?満足いく曲、書けなくて焦ってるでしょ?』
カヤノがわかった風な口を聞くものだから…、
『適当なこと言わないで』
と、ユーリは憤慨した。
『鳥かごにいるから、歌を忘れるのよ。
歌を忘れたカナリアも、自分の居場所を見つければ、再び美しい声で歌い出す。
…探しに行こう。ここではない、どこかへ…』
カヤノはそう言ってユーリを誘おうとした。
でも…
『もう、どこにも行きたくない。ようやく羽を休める場所を見つけたの。ここは光が差して、あったかい』
と、ユーリはそれを拒む。
『例え歌を忘れても?』
『例え歌を忘れても…』
ユーリの決意は固いようだ。
『変なの。ユーリは光だった。なのに、私を照らしてくれない。私は暗い所にいる』
『届かないのよ。ようやく気づいた。こっちの世界は、あの頃もきっとこんな風に、いつだって眩しかった。けれど、暗い所に光は届かない。ライブハウスで歌ってたユーリの歌は、宛先のない手紙みたいに。どこにも届かずに戻ってくるの。意味ないのよ。』
と、言いながら肩を落とすユーリ。
そんなユーリに…
『それでも、私は暗い所にいる。だから歌って。まだ信じてる。信じてるの』
と、ありったけの想いを込めて懇願した。
『泊めるのは難しい。…ここ、カントウさんの部屋だから』
ユーリは、それを振り払うように、カヤノに急に現実を突きつけた。


サトシ、道でナミキを待っている。
と、そこへナミキが走ってきた。

『お待たせしました~お願いします』
ナミキはサトシに駆け寄りペンを渡す。
そして、セーターをまくって、Tシャツを見せた。
『…Tシャツに書くの?』
『はい!』
ナミキは満面の笑みで答えた。
サトシはドキドキしながらお腹のあたりにサインをする。
『こ、こんな感じでどう?』
サトシがそう聞くも…ナミキはそれには答えず、遠くを見て固まっている。
『?』
訝しげに自分を見つめるサトシの後方を指差すナミキ。
『あの車…あの黒い水戸ナンバーの車、朝家の近くで見て、今そこに…
昨日も…家の近くに停まってて…私のこと監視してる…』
少し怯えたように言うナミキに…
『考えすぎじゃない?』
と言うサトシ。
ナミキは、鞄から手紙を出してサトシに見せた。
『店の中に落ちてて…』
サトシは、その手紙を開いて読んだ。


『【ナミキ、この街から出ていけ、さもなくば殺す】…ナミキ?』
サトシは新聞の切り抜き文字で書かれた、まるで脅迫文を読みながら問う。
『私の名前です…【並木亜衣】って言います』
ナミキは明らかに怯えを見せた。
『心当たりは?』
サトシの問いに、ナミキは首を振った。
『…とりあえず、家まで送るよ』
『怖い。帰りたくない!』
と、すがるナミキを見て…、
『…ウチ来る?』
とサトシが結婚指輪をはずしながら聞いた。
サトシ、クズ過ぎるwww


つづく…。



これでだいたいの登場人物が出揃いました。
まだお二人…と一人(意味深な言い方(笑))出てきてませんが…、
デリヘル3人娘、モモ、ユズ、ミカンが出てきたことで、このあと大きく物語が動きます。
モモはふわふわしたキャラクターで皆のムードメーカー。
ユズは、持ち前の明るさとポジティブさで待機部屋を明るく照らす存在。
ミカンは、無口ながらも内に熱いものを秘めている要注意人物?
と言ったところでしょうか?
三者三様のキャラクターがいい距離感で、見ていてとても微笑ましかったです😄

さてさて…
このあと、張り巡らされた伏線はどう展開し、どう収束するのか?
続きをお楽しみ😆👍

ではではまた後日。