いつものダイニングキッチンのいつもの席に座ると・・・、
薫の小さな遺影が、笑顔であたしの方を見ていた。

『あれからもうー、3年だね~?』
逃げてたのかな?
ここに来ると、あんたの思い出がいっぱいだから・・・。
あたしは、立て肘をついてため息まじりに呟いた。
『そうね~
あっという間だわね~』 あたしはおばさんの声に現実に引き戻された。
薫に対して放ったはずのあたしの呟きに、おばさんが静かにそう応える。

『そだね・・・』

しばらく無音の世界が広がった・・・。

(おばさんはこの3年間どうしてたんだろう?)

奥でコーヒーを入れているおばさんの背中がやけに小さく感じた。

『どう?少しは落ち着いた?』
その小さな背中にあたしは言葉を投げ掛けた。
『そうね~、マスコミはね・・・。
ハイ、ど~ぞ』
あたしの問いに、奥からコーヒーを運んできたおばさんがため息まじりでそう答える。
『ありがと・・・、そっか~。薫のCDムチャクチャ売れたもんね~!』
おじさんと、おばさん、あたしが居ない間大変だったんだ・・・。

『お父さん、いっぱい買い占めてたし』
おばさんはそう言って静かに笑った・・・

薫がいつも夜起きて駅前にストリートに出かける時、日除け止めクリームを塗っていた場所に
薫の遺作であるCD

『good-bye days』

が大量に積まれ、その1枚がこちらを向いていた。
おじさんが、CDショップで大量に買い占めたものだった。

ギターを立て掛けて、少し笑みを浮かべている薫。

あたしが部屋で薫をこっそり撮影した写真が
メジャー発売されたCDのジャケットに使われた。

雨音 薫

あんたの歌声は今も皆に愛されてるよ・・・

天国まで届いてるかな?
《続く》