「なぁ彩ちゃん」


「ん?」


「犬か猫飼いたい」


「……へ?」


あ、どうも。山本彩です。
元々はアイドルやってました。
今はですね。
アイドル時代に出会ったあの子と
同棲してます。
相手は誰かって?
あの子ですよ。
ほら。


私達、"さやゆーり"って呼ばれてましたよね?
そうです、太田夢莉です。

6/27に付き合って、すぐ一緒に住んだから
そろそろ2年になるんちゃうやろか。


いや、そんなことより。
私もペットは欲しかったで??
わりと家も広いし、犬も猫も好きやし。
なんなら付き合って初めての物欲的なわがまま?
を言われた気がして嬉しいねんけどさ。







ほんまに急すぎんか???


確かにな、昨日の犬猫特集の番組は面白かったし
めっちゃ可愛かったし
夢莉がキラキラした目で見てたんも知ってる。


けどほら、お世話もあるし
衝動買いって良くないやんか。
んー、でも初めてのお願いやしなぁ……


自分自身の中で葛藤していると、何を思ったか
夢莉は私の好きな犬種のわんちゃんが
めっちゃ可愛く映ってる動画を見せてこようとする。


「ほらみて、可愛いじゃないですか」


「うん、可愛い……」


「お世話は私がしますよ?」


「うん…」


「彩ちゃんはいつも通りでいいから」


おいこら。夢莉。
いつもなんもしてへんみたいな言い方するやん。
いつもは、帰ってきたらベッドで仮眠とったあと
夢莉に起こされてご飯食べて、その後夢莉が沸かしてくれたお風呂に入って、その後の寝るまでの時間は一緒にテレビに見て……って、ホンマに何もしてへんかったわ。


夢莉、ヒモになりたい言うてたのに
まるで私がヒモやん。
それでも私に世話をやいてくれてるのは、夢莉なりの優しさなんやろな。


まぁ、いつもしてもらってるし
そのお礼も兼ねてってことならええかなぁ。
少しでも夢莉の癒しになるなら。


「ペットショップ行きません?」


「んー、まあええよ」


「やった!」


るんるんの夢莉に可愛いな〜と思いつつ
私たちは準備をして、近くのペットショップへ向かった。
















「彩さんみてください!プードル!」


「可愛いなぁ」


「あ!こっちはラブラドール・レトリーバー!」


「ほんまやなぁ」


「ええ!猫もおるやん…可愛い…………」


まぁ、はい。
見ての通り、さっきからこの調子ですよ。
私、ほぼ相槌しかうってません。


ペットショップに入った瞬間から、
見たこともないほどハイテンションの夢莉。


確かに可愛いで?けどな
さすがに寂しいやん?私やってさ、さっきも言ったけど動物は好きやで?
けど、動物に負けとるんちゃうかと思えてきたわ。


「彩さん?」


「ん?どないしたん?」


「元気ないなと思って…」


なんでそんなに察しがいいん?この子は。
エスパーかなんか?


「つまらないですか?」


「いや、そんなことは無いで」


「んー、ちょっと外行きます?」


「せやな、ここ暑いし」


「私も思ってました 笑」


「ほな、いこか」


当たり前のように手を繋ぎ、話しながら外に出る。

もし犬を飼ったとしたら、リードを持たなあかんから
手も離されるかもしれへん。寂しいなぁ。
そう思うとやっぱりしょぼくれてしまう訳で。


「やっぱ飼うの反対ですか?」


「いや、そんなことはないで…ないけどな…?」


「?なんでも言ってよ。言うてくれな分からへんし……何でも受け止めますよ」


「…」


なんでこういう時イケメンなんやろかこの子は。
動物に対して嫉妬してた自分にあほらしくなる。


「なんやろなぁ。いつもしてた当たり前のことが、出来んくなる気がして」


「例えば?」


「手、繋ぐとか。リードを両手で持つ瞬間とかあるかもしれへんやん…急なことやったとしても離されたら悲しいで…それに……」


「それに?」


「私との時間が減るやん……」


「…」



あーあ。言ってもうた。
かっこわる。年上のくせに。
大人の余裕?そんなの無いに決まってやん。
それくらい夢莉が好きやねん。
例え可愛い動物だろうと、取られたくない。
夢莉は私の彼女やし、私との時間を大切にして欲しい。
そう思うんはわがままやろか。


「彩さん……」


幻滅されたやろか。大人のくせにって。
仕方ないやんな。実際6歳も離れてるし。
せやけど、好きなもんは好きやし
誰にも取られたくないねん。
私の独占欲が強いんも、相手が夢莉やから。


「ごめんな、夢莉」


「…」


「幻滅した?」


「いや、あの」


「ん?」


「彩さんってめっちゃ可愛いですね」


「…え?」


「…無意識なん怖いな…………」


何を言うてるんこの子は。
私が可愛い?んなわけないやろ。
可愛いんは夢莉だけやで。


「……ペット飼うの辞めますね」


「欲しいんちゃうん?」


「確かに欲しいですけど……彩ちゃんとの時間を大切にしたいなって思いました」


そう言って私を抱きしめてきた。
え、なに。可愛い。好き。


「彩ちゃん…好き」


いや、私の方が好きやから。
今もそうやって耳まで真っ赤にしながら私の肩に顔押し付けてくるやろ?そういうとこやでほんま。
可愛いなぁ。


「私も好きやで、夢莉」


「……帰りましょうか」


「ん、帰ろ」


「あ、今日彩さんのこと寝かせませんから」


「いや寝かして?」


「無理です。めっちゃ可愛いです。可愛がらせてください」


「いやいや、夢莉は下で……「今日は無理」え?」


「早く帰りましょうか (ニコッ」


そう言って笑う夢莉は小悪魔っぽくて。
この後何されんねやろな〜と思いながらも
Mの血が騒ぐ私も、たまにはいいか。
と思うのでした。


























あの後どうなったかって?
まあみんな分かるやろ。ご想像通りやで。
夢莉ってスイッチ入ると凄いねん。

思い付きって怖いわぁ。