その日は僕の人生で最悪の日だったと言える。
毎日学校に行ってはいじめを耐える日々。
幸い、一番クラスで大きいグループな奴らが遊んでいるだけで少人数は味方に付いているのが幸いか。
そのせいでクラスが「現状が通常」という安定をしてしまって、僕の逃げ場がなくなりつつある気がするけれど。
まあそんな帰り道。
いつも通り鬱屈した帰り道。
まだ昼だ。
学校は終わってはいない。
これもまた最悪。家庭の事情である。親からの緊急の連絡を受け早退することになったのである。
緊急事態。
母から電話が来ている、と言われた時は何故用件を先生から聞けないんだろうと思った。
しかし職員室の電話を取って分かった。
母は電話の向こうで泣き、話は滅裂で、何を言っているのかさえよく解らなかった。
絶えず父の事を話題に出しているので、父に何かあったと解った僕は落ち着くのを待って聞いた。電話を切る直前だった。
じゃあ帰るから。と言った後だった。
「父さんね、人を殺しちゃったんだって。」
泣きながら言った言葉はクリアに僕の頭に入った。
てっきり僕は父が事故にあっただとか、急な病で倒れただとか、そんな事だと思っていた。
父は夜遅くに帰ってきては煙草と酒を嗜む人だったので…健康には悪そうだなと思っていたのだ。
それに酔うと暴力を使い出すので僕は父に労働の感謝はあれど、好きか聞かれると返答が出来ない。
そういう意味では起こるべくして起こった気もする。暴力的な人が暴力事件を起こしたって事なんだから。
「いつかやると思ってたんです」
と誰かが言うだろう。
流石に部外者にこんな事を説明しちゃいけないなと思って、「父に何かあったらしく、母は混乱してしまっていた。ともかくただ事ではなさそうなので、一度帰ることにします」と嘘をついた。
教師もあの母の様子を聞いていたから、了承をくれ早退することとあいなったわけだ。
そんな事があって帰り道に居るのだが。
今更ながら僕が帰る意味はあるのだろうか。
帰って何をするのだ。
父が人を殺したから…何だろう。
たかが中学生に何が出来るのか。書類だって書けない。警察の話でも聞けばいいのか?
警察だってこんな子供には聞かせないだろう。
自分の親が人を殺したなんて。
でも母さんは今もっと話が出来ないはずた。
とにかく母さんを落ち着けるのが僕の役目と言った所か。
と、そうやって「自分を落ち着けていた」所で視界内に見たことのないものが入った。
居酒屋の裏口で男が倒れていた。
外で横になっている男と言うのはここまで違和感を発するのか。酔いつぶれているが、目は醒めているらしく煙草を吸おうとしている。
しかしライターが上手くつかないようだ。
何度もトライしている。
じゃらじゃらとした男だった。
ネックレスをたくさんぶら下げて、腕時計の他にもアクセサリーを腕にたくさん巻いて、ピアスもしていた。
男を避けて通ろうとした時、声をかけられた。
「おいチビ。金貸してくんね?」
チンピラの定型句みたいな言葉だった。
僕は早歩きで通り抜けようとした。
何度か「おい!」だとかの声は聞こえたが、男も「まあ無理か」と大きな声で独り言を呟いて
べき、
と痛そうな音がした。
そのべき、にはゴン!だとかざっみたいな音も混じっていた。
振り返った。
そして立ち止まってしまった。
ただ制服を着て、狙って着崩しても居ない、どこにでもいる生徒。
あの制服は確か高校生だ。
そいつの前でさっきの男が倒れていた。
いやその男はさっきも倒れていたけれど。
前はだらぁと倒れていたのに今回はぐったりと倒れていた。
まるで誰かに殴られたか蹴られでもしたように。
その男の前に立っていた男が僕が語る話の主役と言っていい。
笹川優治。
これがファーストコンタクト。
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夏と言えば、世界の危機。
