1月2日(木)


 さすがに昨年のベスト経済書。デフレに関する考え方が政府の報告書や

日銀の政策決定会合の決定、さらに新聞記事を駆使してクリアで整理され

ている。そのうえでの著者の主張も非常にわかりやすい。また、優れた平

成経済史としても読むことができる。


 デフレ(とりあえず、物価の継続的な下落と考える)が政府の課題になった

のは、1999年から2000年にかけてのことらしい。新聞などで盛んに取り

上げられたのは、2002年と2003年。確かにこの頃議論になっていた記憶

がある。そのあとに格差議論がやってきたという記憶である。


 さて、デフレについては二つの考え方がある。


 デフレは、「物価下落を景気悪化の原因とみる」立場と、「物価下落は景気

悪化の結果であり、・・・物価下落が原因となって景気悪化が生じているとは

考えない」立場がある。(22頁)


 日本銀行の立場は後者であり、実体経済の実情を重視する。一方、政府

の立場は前者に近い。そしてデフレの原因を貨幣供給の不足と考える。こ

の立場の違いが緩和政策やゼロ金利政策の違いになって現れ、また政府

からすると日銀が責任から「逃げている」と考えられたようだ。


 ちなみに、安倍首相の経済問題の指南役である浜田氏は、確信的な前者

の考え方の主張者である。


 一般物価水準は財、サービスと貨幣の交換比率であるので、デフレ(一般

的な物価下落)は貨幣現象である。金融政策なきデフレ対策は「デンマーク

王子なきハムレットである。(27頁)


 それでは著者はどう考えているのか。               (この項続く)