すると、最初は完全無視。
まあ、見た目、全く面白くなさそうな題名だし、表紙も地味だしね。この本は短編の話が沢山詰まっています。
母「この本、受験によく出るらしいよー。小学五年生の子の色んな話が入ってるんだって〜」
息子「へー。」
息子、パラパラと目を通す
後ろの方に「おち◯ち◯」という言葉をめざとく見つけ、「なにこれ!」といきなりその一話分だけ食いついて、黙々と読み始める。
息子「陰毛って何?」
母「え?受験に出る本だよね?そんな事、書いてあるの?」
読み終え、「なにこの本、めっちゃ面白い。他に面白そうなのないかなー」と目次だけパラパラと目を通す息子。
次に息子の目に止まったのは「もこちん」
息子は「なんかこの題名怪しそう」と、ピーンときたらしい。どうやら男子独特の興奮するとモコっとしちゃう時の話らしい。
なんなの??本当にそんなの受験に出るのか?
息子から本に書いてある放送禁止用語の意味を次から次へと聞かれ、質問責めにされる私。
セッ◯スってなに?膣ってなに?
知らなくていい単語が連続で山ほど書いてあり。。。
えー、ちょっと待て。
ちょっと読むのストップ。
あれ?私、渡す本、間違えた?
これ、入試報告会で先生が言っていた本だよね?
本当にこんなの受験に出るの?
せめて私が全部読んでから、息子に渡せば良かったと軽くパニック。
まさか、受験頻出本にそんな事が書いてあるとは普通、思わないし。どうなってるのよー。
息子「この主人公、プールの時間に見学の女子は生理かな?とか、女子の水着姿を見ては妄想ばかりしてる超変態でヤバイやつなんだけど〜(笑)って言うか、さっきからこの本、エロイんだけど、本当にこれ受験に出るの?」
そんなの私が聞きたいわ。
こんなの受験に出たら、保護者から苦情来るわ。
息子はまだ思春期になってないから、女子より男子と遊んでいる方が楽しいらしく、女子の事ばかり異様に気にしたり、妄想する主人公が単なる変態にしか思えなかったよう。
また、もこちんという、恥ずかしいあだ名を友達からつけられた主人公を女子3人組が「そのあだ名どういう意味」とわかっててクスクス笑いながら聞くシーンの空気感もよくわからなかったよう。なんでわかってるのにわざわざ聞くのか。はっきり聞かずにコソコソ女子同士で質問する順番を押し付けあって、一体何がしたいのか。主人公は男なんだから、変な事を聞いてくる友達でもない女子なんて、無視すればいいのにと。
しかし、新たに知る単語が沢山あったのか、息子は他の話を一切読まずに、もこちんの話ばかり何度もリピートし、放送禁止用語を凄い勢いで覚えてるし。ヤーメーテー。
「その話ばかり読むなら、もう読まないでいいから、返して」母、ろうばい。
「この本読んだら?」とみずから勧めてきたくせに、いきなりもう読むなと本を取り上げようとする身勝手な私。
親なのに子供に間違えてエロ本を勧めてしまったような複雑な気持ち。ああ、どこで間違ったんだろうか。
本はきちんと中身を確認してから渡さないとダメね。改めてどんな本なのか、息子が寝たあと、一人で全部読んでみました。
親の再婚で突然苗字が変わるクラスメイトの話
弟の障害と手術
転入してクラスに馴染めない話
死んだ子供のいる家庭の話
婚約破棄の話と急変する親族の態度
母と祖母の喧嘩の話
友と喧嘩の話、恋、
転校と転入の理想と現実
思春期と異性への目覚め(これがもこちん)
父の死による貧困
周りと違い受験したくても経済的にできない葛藤
忙しく働く母と家で孤独な子供
下級生へ遊ぶ事の強制と下級生の恐怖心
中学受験組と公立組の心理的距離
夫の浮気で離婚する両親と、離婚後一人で子育てする母親の気持ちや覚悟(これが最初に読んだ陰毛の出てくる温泉の話)
学校でのいじめの話、いじめ主犯格ではなく友人に巻き込まれ、本当はやりたくないのに同調してしまうパターンなど。
一言で言うと、これでもか!と大人の事情や学校、家庭でのトラブル事例を詰め込んだ本。
何かしらネガティブな感情を伴ったり、思い通りに行かずに葛藤していたり、気まずい空気が漂っていたりする話が多い。
知らなくて良いエロ単語が並ぶのは、なんと息子が読んだ2つの話だけ。他は世界の狭い子供に世の中にはそんな家庭の事情やトラブル事があるんだよ。と見聞をググッと広げてくれる、まともな話ばかりだし。
重松清さん、もこちんの話はいらないよー。
せっかく良い本なのに、この話のせいで子供に渡すのを躊躇する親もいるんじゃないかな。
うちは小3から小4になるタイミングで読ませてしまったけど、ちょっと早すぎた。もうエロ単語を知ってしまったので、時すでに遅し。息子は下品ネタ大好きな典型的小学男子なので、その辺で単語を連呼して友達と面白がったり、何も知らない友達に変な単語を教えたり、大騒ぎしてクラスの女子から白い目で見られないか心配だわ。
受験頻出本なので、世間の受験生は当たり前にこの本を読んでいると思うけど、むしろ小5になると、みんなそんな単語、当たり前に知ってるし、親も動じないのかな?謎だわ。
と言うか、なんで息子はそんな話だけ、ピンポイントでさぐり当てちゃうかなー。
そして、受験ってこんな問題が出るのね。最近の小学生はこんな本を読むのかと驚くとともに、これは精神的に大人になるわけだと納得。
中学受験はお金がかかるし、親には塾弁や宿題フォローが求められる、つまり一般的に受験する子供は金銭的にも環境的にも恵まれた家庭の子が多い。
そのため、特に何の苦労もせず受験勉強だけしてる子も多いし、人の気持ちに鈍感だったり、想像力が働かない子もいるかもしれないので、この本のような世間ではよくある重めの話から出題されるのだろう。
確かに受験に出そうだ。
息子が読んだ話以外は。
人生は色々あるし、いつも順風満帆ではないので、みんな大きな声では言わないけど、あなたの周りにも色んな事情を抱えた人が実は沢山いるんですよ。そんな人達の気持ちや心の葛藤、つらさなど想像することができますか?
同性の友達の気持ちだけでなく、大人である親や親戚の気持ち、異性の気持ち、上級生に逆らえない下級生の気持ち、受験しない公立組や貧困家庭の気持ちがわかりますか?と色んな角度から問われるんだろうな。
変な話ばかり読んでないで、他のまともな話を是非とも息子に読んでほしいと思ったのでした。