「ねぇちょっとコッチに来て」
「なんで?」
「一回やってみたかったことがあるんだ」
私は言われたとおりに
萩尾響弥のそばに行く。
「後向いてて」
私が後を向いた瞬間
彼は私を抱きしめた。
《《どきっ》》
頭に血が上らない・・・

「ねっ、、ちょっと・・・」
「君、いい匂いがする」

彼はそう言って抱きしめる腕に力をこめる。
でも・・・嫌じゃなかった。
彼が私を抱きしめる理由がよくわかる。

寂しい、つらい、嬉しい、悲しい、、

幼いときから
誰にも甘えず、自分ひとりで生きてきた彼は、
誰からも抱きしめられたことがないんじゃないかな。
私と同じように・・・。


気がつくと私も彼を抱きしめていた。

目の奥が熱くなっていく
誰かのぬくもりを感じている。
誰かと一緒にいたい
家族はいない、友達はすぐ裏切る
誰を信用すればいいの?
そう思っていた私が
今こうして誰かのそばにいる。
それだけで嬉しかった・・・。